ハラスメントについて考える
企業の取り組みに、カスタマーハラスメントへの対策が取り入れられつつあります。
契約書にハラスメント条項が入っていた
ある新しい仕事をいただいた際、契約書の最後に「ハラスメント条項」が挿入されていました。要は私がハラスメント行為をした場合、その契約は解除されるという内容。新聞などでカスタマーハラスメントが話題になっているのは知っていましたが、こうして身近なところに現れたのは初めてです。
大きな会社から業務を受託している私がハラスメントをする場面は想像しづらいですが、例えば「謝金をもっと多く払え」だとか「往復のJRはグリーン車を使わせろ」などと言って、大声を出したり、理不尽な要求をすることを想定しているのでしょうか。つまりカスタマーハラスメントというやつです。
何か小さなトラブルが起こった際に、土下座を要求したり、会社名や担当者名をSNSなどにさらす行為がカスタマーハラスメントだと認識しています。学校を卒業した後、三年間、百貨店の中にある自社のお店で働いていた経験がありますが、幸い、お客様から土下座を強要されるようなことなどはありませんでした。お叱りを受けた事は何度かあったものの(もちろん原因は私にあったわけですが)、ハラスメントのような形で我が身に跳ね返ってきた事はありません。
一度だけ百貨店の社員がお客様から理不尽な叱責を受けているのを目撃した事はあります。進物用の手提げ袋をつけるかつけないかの問答がきっかけになったようで、かなりきつい言葉で詰められていました。ずいぶんと変な人に絡まれてしまったのだなぁと、まるで何かの事故を目撃したかのように身構えてしまったのを今でも覚えています。
感性の合う人とだけ付き合う
自営業に完全に移行してから二年が過ぎました。この間、私は顧客からカスタマーハラスメントを受けた事はありません。理不尽な要求をされたこともなければ、小さなミスをあげつらって激しく叱責されたこともありません。零細な個人事業主ではありますが、お客様に恵まれているので気分良く仕事ができています。
中小企業支援という仕事は経営者に自分をさらけ出してもらわなければ成り立たない仕事です。経営者には自社の困り事や、業績が窮境に陥っていることを隠さずに話してもらわねばないからです。だからこそ、私は感性の合う経営者とだけ仕事をさせてもらうようにしています。人として尊敬できない経営者には到底、伴走できるものではありません。経営者も相談相手を選びますが、私も顧客を選んでいるのです。ミスマッチが生じないように心を砕いているからこそ、ハラスメントなどでお互いが嫌な思いをせずに済んでいるのだと思います。
感性が合わない人を招き寄せないためにできる事は「自己開示」です。自分が何者であり、どんなことを考えていて、どんな価値観を持っているのかを事前に発信しておけば、感性の合わない人や仕事が寄ってくる確率をぐんと下げることができます。例えば、私の場合は補助金等の制度を紹介するような仕事は基本的に手がけていません。このことを日ごろから公言しているからこそ、補助金目的の経営者が私のところにやって来ることはありません。
自営業や個人事業主であることのメリットの一つは、自分で顧客を選別できることにあると考えています。理不尽なカスタマーハラスメントを受けないためにも、日ごろから自己開示に努めておけば、感性の合わない顧客からハラスメントを受ける確率を極限まで下げることができます。
ハラスメントを受けたら
あるプロジェクトに関わっていた時、メンバーの一人に同僚や部下をたびたび病院送りにしている人物が紛れ込んでいました。パワハラを繰り返して精神的に追い詰める行為を、過去に何度も行っていたというのです。案の定、その人物はハラスメント行為を始めたので、(他の問題も多々あり)他部署へ異動していきました。本人は異動させられることに釈然としていなかったようですが、関係者が最大限の政治的な立ち回りをして排除に動いたのです。
もしハラスメントを受けてしまったら、加害者からは一時も早く距離を取ることが重要です。相手を排除するのか、さもなくば自分が別の場所に移るのか。無理に我慢してしまうのは最悪の選択で、事態を悪化させるだけです。
年度初めになると、私は顧問先の経営者に社内でハラスメント研修を実施するように勧めています。研修といっても大げさなものではなく、公的機関のウェブサイトにアップロードされている動画を従業員が各自で閲覧するという程度のもの。動画を見るだけでもハラスメントを抑止するのには十分です。また何より、会社がハラスメントを許容しないという姿勢を従業員に示すことにもなります。
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