そもそもの品質が確保されているか
商売の基本の1つは顧客の期待を上回る品質の商品を提供することにあります。そもそもの品質が確保されていないのに、何かで取り繕うことはできません。
SNSは魔法の杖ではない
ある企業の担当者と話した時に教えてもらったことです。提供しているサービスの利用者が、思うように増えずに困っている様子でした。流行のトピックに沿ったサービスを提供しているので、メディアなどにひとしきり取り上げられていますが、残念ながら利用者がまったく増えていないというのです。今後はSNSを駆使して利用者を増やしていくことになっているそうで、担当者は不安がっていました。
こうしたときに「SNSを使ってPRしよう」などという発想が安直に打ち出されがちですが、SNSを使ったからといって全てが約束されるわけではありません。SNSを使ったこともないような人に限って幻想を抱いてしまいがちで、地に足を着けたどぶ板営業などすることなく、簡単に顧客を増やせると思い込んでいるようです。
この企業のサービスをよく見てみると、どうやらそもそものクオリティに問題があるように感じます。当たり障りのないコンテンツを提供しているだけで、どこのどなたの困りごとを解決しようとしているのか伝わってこないのです。キーワードだけは強力なのでメディアには取り上げられましたが、消費者は冷静にクオリティを見極めているのです。
利用者が思うように増えないと感じているのであれば、まず疑うべきはそもそものクオリティです。この現実を直視しないことには、挽回の手立てを打ち出す事は不可能です。自分たちの商品やサービスのそもそものクオリティーが担保されているかどうか、冷静に見定めるのは困難。人間はとても保守的な動物なので、まさか自分たちが取り扱っている商品を否定することなどほとんどできません。しかし、事業を存続させるためにも、心を鬼にして自社の商品やサービスを冷静に評価しなければなりません。この勇気を持てるかどうかが成否の分かれ目になります。
独自の立ち位置を築く源
ある顧問先は特定の販路に依存してきましたが、売上を思うように確保できず困っていました。以前は順調に拡販できていたのに、ふと気付くと縮小傾向に陥ってしまっているのです。しかし、取り扱っている商品は確かなもの。一見、どこにでも売っているようなものですが、品質や価格帯をよくよく見るとそれらしい競合は見当たりません。
この顧問先が着手したのは新しい販路の開拓です。商品のクオリティに問題がなく、それでも売上が下がっているのであれば場所を変えれば良いのです。新しい販路に挑戦し始めたところ、さっそく小さな成功積み重ねることができ、徐々に売り上げを増やすことができています。
この会社の生命線は、競合にないクオリティの商品を低価格で提供できていることです。ここがまさに生命線で、独自の立ち位置を築く源になっています。
無形の商品を取り扱う時の注意点
中小企業支援という仕事は、資格など必要なく、誰でもいつでも始めることができます。それだけに、専門家らしき人が跋扈してしまっているのが実態です。大企業のOBOGであったり、何かの資格を持っていたり、あるいは関連する機関の関係者であったり。そうした人々が、それだけで悪いわけではありませんが、中身がないのに中小企業支援に携わろうとする人があまりにも多いのです。
無形の商品を取り扱うからこそクオリティーを担保していないと、見込客に選ばれることはありません。1度や2度はだませても、継続して経営者と対話するのは不可能なのです。ある専門家らしき人ができるのは補助金等の制度を紹介するだけ。制度を紹介し、採択されたらそれが成果になると勘違いしています。私はこうした刹那的な取り組みをするつもりはなく、地に足をつけた中小企業支援をし、売上アップや事業の存続に少しでも役に立ちたいと考えています。
私の経験上、中身のない専門家らしき人ほどよく話します。経営者の話をろくに聞かずに、教科書に書いてあるようなことばかりをカタカナ語混じりで話し続けるのです。語るべきことを持っていないから、逆に何かを話していないと不安なのでしょう。
私は逆に経営者の話を聞くことに注力しています。今日もあるスタートアップ企業の打ち合わせに同席しましたが、お話ししたのはほんの一言二言のみ。議論がぶれないようにほんの少しだけお手伝いをしました。それで充分なのです。カタカナ語を駆使してそれらしいことを話す必要などないのです。
どんな商売でも、商品やサービスのそもそものクオリティーが担保されていなければ、満足な売上を作ることはできません。SNSやカタカナ語で誤魔化すことはできないのです。
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