士業マーケティング 望む仕事を得るには
独立開業後には仕事を得続けていく必要があります。どのように行動すれば良いのでしょうか。
声を上げる
独立開業後は黙っていても誰からも気づかれることはありません。企業に属していたのであれば良くも悪くも見守ってもらえますが、自営業の道を選んだのであれば道は自分で切り拓いて行く必要があります。つまり、積極的に営業しないことには見込客から選んでもらえることはありません。営業というとそれだけで拒否反応を示す人がいますが、士業に営業は必須。避けて通ることはできません。自ら声を上げて、提供できる価値をPRしなくては案件を受注することはできません。
私が完全に自営業に移行したのは2年少し前のことでした。この時、懇意の経営者を回って顧問契約をしてもらえないかと打診して廻りました。自分がどのような貢献ができるのかをシートにまとめ、希望する報酬も明記してプレゼンしたのです。結果、これらの会社は私にとって重要な顧問先になってくれています。継続して使ってもらえているので、報酬以上の価値は提供できているはず。もし最初に私から声を掛けなければ契約していただけなかったのは確実で、営業の重要性を身をもって確認した出来事でした。
先日、ある経営者には未来の組織図案をご提示しました。将来の事業承継を見据えて、僭越ながら私の考えた組織図案をお渡ししたのです。組織図といっても人員配置のことではなく、企業統治をどう徹底させるかに焦点を当てたもの。新社長のビジョンを反映させるために、事業承継直後のタイミングだからこそできる抜本的な案を考えました。この時、経営者から言われたのが「岡田はこの組織図のどこで働いてくれるのか?」というコメントでした。私にとっては何よりうれしい言葉です。社外の顧問として関わってきたのに、それ以上に関わって欲しいと意思表示していただけたのですから。こうした深い関係性を築けたのも最初に私が営業をしたから。まず最初に声を上げなければ、見込客から選ばれることは無いのです。
自己開示する
会社という背景を失った個人が独立開業して仕事を得ようとするのであれば、自分が何者であるかを丁寧に伝える必要があります。会社の看板があればそれだけで安心材料を提供することができましたが、個人事業主はどうしても「お前は何者なのか?」と身構えられてしまいます。
独立開業したのであれば自己開示は必須。個人情報がどうとか、セキュリティがどうとか言うのであれば個人事業主はやめた方が良いです。自分が何者で、何を考えていて、どんなことを提供できるのか。雇われる立場であった頃には想像できなかったような量と質の自己開示をすることが求められます。
ある開業したばかりの士業のウェブサイトを眺める機会がありました。事務所情報と法改正情報だけで、その士業がどんな人物であるかを伝えるコンテンツはほぼゼロでした。これではその他大勢の士業に埋もれてしまうだけで、わざわざ選んでもらうための情報発信にはなっていません。
士業は数万人の同業者と顧客を奪い合う、厳しい商売です。他の誰もが発信できる内容を伝えたところで、見込客から選ばれることはありません。士業が望む仕事を得ようと思うのであれば、一番の商品である自分自身について積極的に自己開示する姿勢が必要なのです。
ナラティブを用意する
ナラティブとは、自分自身が紡いでいく物語のこと。士業が望む仕事を得ようと考えるのであれば、なぜその仕事をしたいのか語れるようにしておかなくてはなりません。つまり、ナラティブを用意する必要があります。
私の社会人人生の始まりは京都の茶わん屋でした。その私が中小企業支援を手掛けようとするのであれば、見込客に腹落ちしてもらえるナラティブが必要です。「経営破綻した元経営者が中小企業支援なんてできるの?」と思わせてはいけないのです。
私がいつもお伝えしているのは、「家業の代表取締役を務めていた時、ある支援機関の窓口で売上アップを実現するための具体的なヒントを得ようとしたが、問題点の指摘ばかりで終わってしまった。この時の徒労感を忘れられず、経営経験を生かして支援する側に転身した」というもの。面接や取材の際にこのナラティブをお伝えすることが多く、私がなぜ中小企業支援を手掛けたいのか理解してもらえていることを実感しています。
望む仕事を得ようと能動的に行動しないと、せっかく独立開業したのに仕事に振り回されるだけです。そのうちに何のために自営業を選んだのかわからなくなってしまい疲弊してしまうことにもなりかねません。自営業だからこそ、望む仕事で稼いでいきましょう。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事