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コラム

情報発信の他に日記を書いてみる

日々の情報発信の他に、日記を書いておくと役に立つことがあります。情報発信は知ってもらうためのもので、日記は後日、自分の役に立てるために書いています。

普通の日記である必要はない

日記と言っても、毎日の行動や考えたことを記録するだけが日記ではありません。特定のテーマや期間だけ記す日記があっても良いはず。

私は家業に外部の資本を入れると決断したときからの約1年間、業務日誌と題して日々の出来事を綴っていました。2014年から2015年にかけてのことで、家業の代表取締役を務めていながらも独力での経営再建が困難とわかり、外部の資本を入れて会社を立て直そうと奔走していた時期の行動記録です。そのため書いていた内容は、銀行などとのやり取りばかりで個人的な出来事などは記録していません。誰かに見せるために書いていたわけではないので、時には口汚い言葉も使っています。当時はそれだけ余裕がなかったということでしょう。

例えば2014年7月4日には

「電話会議。先日決めた16件の確認と当社提示2社への行き方の確認。初期資料に載せる計数計画を見栄えよくするかどうか。契約書の文言の調整。電話会議ってビジネスホンで普通にできるのか。夕方、りそなの新旧本部長が挨拶にきた。がんばりましょう、と一言」

と書いています。

出資者候補を銀行と自社とでリストアップし、それらにどうアプローチしていくか検討している時期でした。銀行が提示してきた候補先にこれは!という会社がなく、一方で自社で想定している候補先にどのように出資を要請しようかと頭を悩ませていました。主導権はメイン銀行がしっかりと握ってはいましたが、可能な範囲で自社の自主性を打ち出していこうと必死だった頃です。

社長に就任してからすべての日々の日記をつけておけばよかったのでしょうが、当時はそんなことを思いつく余裕もなくあっという間に時が過ぎていきました。いよいよ業績が切羽詰まってきたので外部からの資本を入れようと決断せざる得なくなり、同時にふと思いついて記録を残し始めることにしたのがこの業務日誌です。

この時の経験はお金で買えるものではなくて、もちろん、教科書などに書いてあることでもありません。経営の現場から離れてもう9年が過ぎましたが、今でもふとした時に思い出すことがあります。

業務日誌が役に立った

こんな日記とも言えないメモ程度の記録ですが、家業を離れてから当初思ってもいなかった場面で役に立つことになりました。雑誌や新聞の取材を受けた際に、江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡した経緯を伝えるための貴重な資料になったのです。最初は日経ビジネス誌の取材、その後は日経トップリーダー誌の特集に取り上げられる際などにも当時を振り返るための貴重な資料になりました。

数字の資料だけであれば何回か策定した事業計画が手元にあったので、それを記者さんにお渡しすれば事足りました。しかし、当時の私の考えなどを時系列に沿って伝えようとすると、業務日誌の存在は貴重なものでした。人が何かを忘れていくスピードというのは本人の自覚以上のもので、何かを忘れることができるから新しいことを頭に入れられるのでしょう。ほんの数年前の出来事で、さらには大事な家業に関わることであっても、この業務日誌がなければ正確に誰かにお伝えすることは困難でした。

業務日誌がなければ記事化は困難だったことでしょう。私の頭の中にある情報だけでは、とてもではないけれど奥行きのある記事は書けなかったはず。記者さんからインタビューを受けるに当たって、当時の様子を思い出すために業務日誌を一読しておいたからまともにお答えすることが可能になり、結果、客観的な素晴らしい記事にまとめてもらえたのだと信じています。

さらに言えば、こうした記事が存在するので、事業譲渡した相手先の投資ファンドも変な相手に事業の売却を試みることができないはず。他の資料と合わせて業務日誌を残しておいたことが、何年たっても役に立っていると実感しています。

テーブルに置かれているノート

情報発信の他に日記も書いてみたらどうでしょう

茶道のお稽古日記

茶道のお稽古のたびに記録をつけています。どんなお稽古をして、どんなミスをして、どう教えていただいたかを簡単に書いているだけ。しかし、記録したその日にはなんて事のないように思われるメモであっても、しばらく経って振り返ると貴重な復習の資料になります。

お稽古日記は部活の後につけていたミーティングノートのような感覚。お稽古をやりっぱなしにするのではなく、次に生かすためにも可視化しておく必要があります。こうして文字にしておくことで、数行のメモであったとしても意味のある日記になるのです。

毎日、日記を書くのが困難だとしても、これといったテーマや期間だけでも書いてみることをお勧めします。私のように思わぬところで役に立つことがあるかもしれませんし、何より我が身を振り返る貴重な資料になるからです。


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