地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

Kindleでつい「合本」を選んでしまう

趣味の読書では紙の本ではなく、Kindle版を購入するようにしています。紙の本はあっという間に増えていってしまい、ただでさえ狭い部屋のスペースが無くなってしまうからです。

今読んでいるのは池波正太郎の藤枝梅安シリーズ

今読んでいるのは池波正太郎の藤枝梅安シリーズ。たぶん20年くらい前に一度だけ読んでいて、ひさしぶりに読み返しています。改めて購入したのはもちろんKindle版で、「合本」と呼ばれているもの。文庫本では全7巻だったのが、電子書籍では1つのファイルにまとめられています。

AmazonではたまにKindleがお買い得になることがあり、そのたびについ新たな本を購入してしまいます。藤枝梅安もそんなタイミングで買いだめしておいたもので、他にも剣客商売と鬼平犯科帳も同じように合本版を手に入れていました。紙の本だとぞっとするほどスペースを占有してしまうわけですが、電子書籍はその点、(それほど)罪悪感なく購入することができます。そのため、値引きされていたりポイントが加算されていたりすると、ついまとめ買いしてしまうのです。

初めてKindleで合本を購入したのは吉川英治の新・平家物語だったはず。当時は単身赴任中だったので、毎日夕食後にむさぼるように読み続けてしまいました。おかげで一時期は視力が落ちてしまったように感じたくらいです。この時の読書体験で合本の便利さにすっかり目覚めてしまいました。

顧客の不便を解消

商品としての「合本」を考えてみると、コンテンツの中身はこれまでと変わらないのに、顧客の「いちいち購入するのがめんどうくさい」「何巻まで読んだか忘れてしまった」といった不便を解消するサービスであることに気づきます。可視化されていなかった不便を発掘し、先回りして顧客に解を提示してくれている感覚です。

この可視化されていない不便を解消するというのは、商売を成功させる大きなポイントだと思っています。反対に、すでに顧客が認知している不便を解消しようしたり、あるいは、すでに多くの事業者が手掛けている商品を販売したりするのは誰でも思いつくこと。そうしたサービスを手掛けたとしても不毛な競争に身を置くことになるだけで、満足な利益を得ることは困難でしょう。最近だと高級食パンやタピオカミルクティーなどが思い浮かびます。

私が素晴らしいなと考えているサービスの一つがゴミ拾い促進プラットフォームのピリカ。街に落ちているゴミを拾う時にスマホで撮影し、アプリ上で共有するだけ。ただのゴミ拾いが共感を得るための手段になり、さらには位置情報などがごみ散乱状況を示す貴重なデータにもなると言われています。誰もが目にしているゴミに新たな価値を与えていることになるわけで、独自の立ち位置を築いているサービスだと感心しています。

何か商売を始めようとするのであれば「掛け算」が必要だと思っていて、ピリカの場合は「ゴミ拾い」と「データ」という要素を掛けあわせているわけです。掛け算ができなければ参入障壁は低く、誰でも簡単に模倣することができてしまいます。私のかつての家業は京都x茶わん屋という掛け算で独自の立ち位置を築くことができていました。ただし、その掛け算による効果も未来永劫続くものではありません。イノベーションは常に考えなければいけなくて、その努力を怠るとたちまち陳腐化してしまうので注意が必要です。

書店の文庫本コーナー

最近は電子書籍ばかりを購入しています

すっかり書店に足を運ぶ機会がなくなった

こうして電子書籍ばかりに頼るようになると、すっかり書店に足を運ぶ機会がなくなってしまいました。先日、比較的大きめの書店に行きましたが、目的は本ではなく絵葉書を購入するためでした。「あの本屋であれば絵葉書を売っているだろう」と予想したら大当たりで、お見舞いのために使う絵葉書を手に入れることができました。

全国の書店数は10年で3割減ってしまったそう。最近では経済産業省が街の書店のために支援策を検討しているくらいで、放っておけば消滅しかねない業態になってしまいました。こうしたときに「本屋で買い物しよう」などと安直なキャンペーンを打っても無駄。書店に足が向かなくなった理由を直視せずに旗を振っても、踊らされる消費者などいません。書店にわざわざ足を運んで紙の本を購入するための、デメリットをはっきりと上回るメリットを新たに提示しないことには起死回生の一策とはならないでしょう。

今読んでいる本の次もKindleで購入している本を読むことになるでしょう。司馬遼太郎の「峠」の合本版にするつもりです。


メルマガ詳細


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

amazon musicのバナー

Listen on Apple Podcasts

関連記事

TOP