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コラム

創業と生業(なりわい)の違い

創業について考えてみました。

創業して自分の生涯を掛ける

先日の日本経済新聞にユニクロを創業した柳井氏のコメントが載っていました。

「ユニクロ40年、体感は3年」柳井会長兼社長に聞く
日本経済新聞 電子版 2024/6/3
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO81115310S4A600C2TB1000/

「ユニクロとは何か」を問われた柳井氏はこう答えた。
「自分の生涯かけたビジネスです。自分の生きる証明みたいなもんです」

このように事業について話していて、まさに人生をかけた取り組みだからこそ、多くの挫折を経験しても成功にたどり着けたのだろうと感じました。

一方で、最近の安易に創業を促す風潮には違和感を持っています。人生を掛けてでも成し遂げたいことがあり、さらにそれが社会にイノベーションをもたらすことができるものなのか。創業を志そうとするのであれば、このことについてよく考えるべきです。

創業と生業(なりわい)を混同してはならないと思っています。創業は社会にイノベーションをもたらす事業を立ち上げ、人生を掛けて取り組んでいくこと。生業作りとは自分が食べていけるだけの食い扶持を探すこと。一時の地方創生ブームなどで生業作りを創業支援と勘違いしているような行政関係者を多く見てきましたが、生業作りをいくら支援したところで地域社会にイノベーションがもたらされることはありません。

くれぐれも誤解して欲しくないのは、生業作りが悪いと言っているのではありません。逆に自分が心の底から手掛けたい仕事があるなら、それは幸せなこと。実際にそうした思いを持つ方の地域での生業作りをいくつもお手伝いさせてもらってきました。ただし、そうした人々を地域に革新をもたらすことを期待して創業者と言ってしまうのは、間違い。創業と生業には大きな違いがあるのです。

冷静に事業性を見定める

ある地方中小企業は、創業から何年も経っても「スタートアップ企業」と記載しています。いつまでスタートアップ企業と呼んでもらいたいのでしょうか。せいぜい最初3年くらいが適切だと思うのですが。そう呼ばせていると、さも成長の余地が大いにありそうに感じさせることができ、いわば下駄を履かせてもらって商談などが進めやすくなるメリットがあるのでしょう。

また、ある企業は特許を取得した技術をもとに、社会にイノベーションをもたらすと主張していますが、その特許の内容を私なりに理解するよう努めても、どのようなイノベーションをもたらすのか具体的に理解することはできません。ただ特許を取ったということだけで騙されてしまう人がいるからこそ、このような経営者が実態のない事業を営もうとするのでしょう。

創業の一歩を踏み出すハードルがぐんと低くなったからこそ、胡散臭い人物が紛れ込む余地も大きくなっていることは事実。社会にどのようなイノベーションをもたらすのか端的に説明できない事業は、冷静に事業性を見定める必要があります。

法人設立届出書と印鑑のイメージ

創業と生業作りは異なります

初めて国民健康保険に加入する

今年の4月まで2年間、前職の任意継続被保険者として協会けんぽに加入させてもらっていました。この4月からは初めて国民健康保険に入ることになります。つい先日、保険料の納入通知書が届いてびっくりしたのは保険料がずいぶんと高額であること。ざっとこれまでの2倍以上の保険料を毎月納付しなければなりません。もちろん以前からわかっていたことなので、粛々とお支払いするのみです。

世の中にはこうした負担増を避けるために、ペーパーカンパニーを設立して低額の役員報酬を設定し、社会保険料の負担を逃れようとする人もいるらしいです。そこまでテクニックを弄して節約したとしても、せいぜい年間数十万円程度が減るかどうかの話。法人を設立すれば様々な経費が発生するわけで、登記可能な事務所を借りなければいけませんし、税理士との顧問契約も必要になります。(それほど)実態のない法人を設立しようとしてもそれなりの出費が発生してしまうわけで、数十万円程度の節税に労力を使うくらいであれば、自分の人生を掛けてでも成し遂げたい何かを見つけることに時間を使った方が良いと思います。

私も家業の代表取締役を退任してから9年が過ぎました。現在は社会保険労務士事務所の看板を掲げつつ、中小企業支援家として経営者と対話する日々です。この仕事は私のライフワークになっていて長く続けられたらいいなと思っていますが、一方でいつかはまた、実業の世界に身を置きたいとも考えています。社会にイノベーションをもたらす事業を構想して創業するのか、あるいは既存の会社で経営に携わるのか。来年3月には家業を離れてから10年を迎えることになるので、そろそろ様々な選択肢を検討するタイミングに来ています。


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