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コラム

第三者に出資してもらって本当に良いのですか

出資してもらいたいと考える経営者の中には、困ったことに自分で行動しようとしない人がいます。

「出資してもらいたい」という経営者

中小企業支援に携わっていると、VC等から出資してもらいたいと訴える経営者とお話しすることがよくあります。そうした経営者に多いのが、自ら何の行動も起こしていないことです。第三者に資本を入れてもらいたいと決めたのであれば、普通の経営者はさっさと行動を始めるはず。ところが願望を安易に口にする人に限って、自分でVCを探したり接触したりする手間を省こうとするのです。

日々の実務にいっぱいいっぱいなのかもしれませんが、VCに出資してもらいたいと願っていても自らVCに連絡をすることなどせず、ただ待っているだけの経営者が多いのです。そうした経営者に私がお伝えすることにしているのは、まずは自分でVCを検索してアプローチしてみてくださいということです。どこかの誰かにVCを紹介してもらい、労せずしてお金を得たいと考えるなんてあまりにも都合の良い話です。まずは経営者自らが行動起こさないことには進む話も進みません。

今時スマホさえあればVCの連絡先や問い合わせフォームをいくらでも検索することができます。その最初の1歩すら踏み出そうとしないのに、いつまでも出資してもらいたいと口だけで言っていたところで何も変化は起こりません。

ある同業者とお話ししたときのことです。その人は経営者から求められてもVCなどを紹介する事は一切しないということです。検索すれば知ることができる情報を、自分が代わりに調べてやるような事はしないと言い切っていました。私と全く同じ考えの中小企業支援家がいることをうれしく感じました。もちろん行動を起こした経営者には支援できることがいろいろとあります。ビジョンを明確にしたり、資金計画を外部に見せられるものに整えたり。そうした支援をするためにも、まず第一歩は自分で足を踏み出して欲しいのです。

中小企業支援というと、補助金の制度を紹介したり、さらにはそれらの申請書を経営者になり変わって書いてしまったりと、支援にならない支援らしきものを行っている機関や人物も存在します。本当に事業者のためになる行為なのか、よく考えてもらいたいものです。

中小企業支援家は踏み台のようなもの。実際に行動して成果を掴み取るのは事業者だけができることです。

知ってもらう努力をしていない

また、自ら行動しようとせずに「VCに出資してもらいたい」と唱え続けているような経営者は、知ってもらうための努力を怠っていることがほとんどです。つまり、情報発信を十分にしておらず、ウェブサイトは形ばかりで事業の魅力を伝えるコンテンツが存在しません。これでは何かの拍子に興味を持った人が検索したとしても、せっかくの機会を逃してしまうことになります。

「秘密保持のためにまだ情報開示できない」「ウェブサイトに手を入れる手間をかけられない」などと言う経営者がいますが、業務の優先順位を間違っています。いずれどこかの誰かに出資してもらいたいと考えているのであれば、自己開示のための情報発信は必要です。

まだ何者でもないのに、秘密保持に(過度に)気を遣ったところで本末転倒。まずは自分たちが何者で、どんな強みを持っているのかを自己開示しましょう。

紙の株券

VCに出資してもらうのが本当に正解ですか?

上場直前まで準備をしていた家業

またよく考えてもらいたいのが、そもそも第三者からの出資を受け入れることが適当であるのかということ。株式会社の場合、株式を持ってもらうということは会社の所有権を分け与えることでもあります。創業、スタートアップ、VCからの出資、IPOなどと耳障りのよい言葉に踊らされ、安直なゴールを目指すことが本当に目指していることなのか。行政や支援機関が勝手に思い描いているあらすじに乗せられているだけではないのか。第三者からの出資を受けるということの本質的な意味を理解してから、決断しても遅くはないでしょう。

私が家業の代表取締役を務めていた時、幹部従業員から会社の株式を持ちたいと言われたことが何回かあります。私からしたらまったくあり得ない話で、その場で厳しく拒絶しておきました。株式というものを理解できているのかまったく疑問で、安直によくも口にできたものだなと思います。

そんな家業も業績がピークに差し掛かった頃に、上場の検討を進めたことがあったそうです。証券会社と共に準備を進めて、決算月を変更するなどして内部の体制を整えていたとか。ところが数日前になって上場を取り止めることにしたそうで、当時は関係者に迷惑を掛けてしまったと聞いています。その時に上場していたらどういう未来になっていたのかはわかりませんが、少なくとも会社は投資ファンドに事業譲渡するまで創業家のものであり続けました。

株式は創業者やオーナーにとっては重いものです。安易に出資を受けてしまってよいのか、よく考えてから決断しましょう。


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