地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

同じ本を読み返してもその度に考えることは異なる

普段は小説ばかりを読んでいる私ですが、たまには中小企業支援に役立つであろう本を手に取ることもあります。

読書スタイル

私は読書が大好き。映画やドキュメンタリーも好きですが、没入できるのは間違いなく読書です。時間があるなら小説ばかり読んでいたいくらいで、常に何かを読んでいないと落ち着かないです。最近読み始めたのはアイザック・アシモフのファウンデーション。20年近く前に文庫本を購入してあり、祖母の家の本棚に保管してあります。ところが数ヶ月前に急に思い立って、Kindle版を購入してしまいました。本棚が遠隔地にあるといろいろ困ります。

仕事柄、ビジネス書を読むこともあります。ただし、自らの体験談をベースにした本がほとんどでこれという本にはなかなか出会うことがありません。1冊を選べと言われるならば、間違いなく「世界標準の経営理論」です。経営者が思考の軸とすることができる経営理論の選りすぐりをわかりやすい言葉で説明してくれています。ページ数で言うと800ページ超。見た目は辞書のようで見た目だけで気が引けてしまうかもしれませんが、中身は非常に平易な言葉で書かれていて、仕事に追われている地方中小企業の経営者にもお勧めしています。

世の中に多く出回っているビジネス書とされているものや、自己啓発関連の本が悪いとは言いませんが、そうした本を読んでも自らの思考の軸にできることはほとんどないのではないでしょうか。であるならば、世界の学者たちがある程度共通認識を持っている経営理論を、広く浅く、身に付けた方が経営の日々の現場に役立てることができると考えます。

読書メモを書いてみた

この世界標準の経営理論を読むとき、私はiPhoneでメモを取りながら読み進めています。ふと気になって前回読んだときのメモを見てみたところ、驚くべきことに今回のメモとは全く異なっていました。同じ本を読んでいても、その時々によって得られるものは違うということでしょう。

例えば、初めて読んだときのメモには、完全競争・完全独占に関する気づきがいくつも書かれていました。本の冒頭部分から引き込まれていたことがわかります。ところが今回のメモでは、日本を代表するような大企業の経営者が失敗体験を重視しているという部分のメモが多くなっています。

江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡した経験を人前でお話しする機会があり、経営理論で当時の経営判断を説明できないかと考えると、経営者が失敗体験から得られるものについて書かれている箇所が印象に残るのです。

普段は読書の際にメモを取ることなどありません。メモを取る時間があるくらいなら、一文字でも前に読み進めたいのです。ところが、世界標準の経営理論を読む時は書かれていることを頭にインプットしながら読み進めている感じ。そのため、メモをするのも苦になりません。

メモ帳とペン

メモを取りながら本を読むこともあります

中小企業支援の現場で経営理論を振りかざすことはない

世界標準の経営理論を何度も読み返しているといっても、中小企業支援の現場で経営理論を振りかざす事はありません。地方中小企業の経営者に対して、「理論がこうだからこうすべき」などと話すのは誰でもできることです。私の仕事は経営者の話をとことん聞いて、必要であれば、知恵とアイディアを授けること。できていないことをあげつらったり、経営理論やフレームワークを振りかざすことが仕事では無いのです

家業の代表取締役を務めていた際、銀行から紹介された経営コンサルタントにあるフレームワークについて説明されたことがあります。それはそれで貴重な機会だったのですが、経営者である私が知りたかったのはそのフレームワークを使ってどう売り上げを伸ばすか。残念ながら彼ら彼女たちからフレームワークの説明以上のことを聞くことはできませんでした。この苦い経験が、私の中小企業支援の姿勢に大いに影響を与えています。

中小企業支援の第一歩は、経営者の話にとことん耳を傾けることです。人は誰しも自分の話を聞いてもらいたいもの。それは経営者も同じ。話を聞く前からわかったような顔をしたり、あるべき論を振りかざすのではなく、まずはすべての話を受け止めるところから支援が始まります。


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