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コラム

株主総会の前に準備していたこと

そろそろ株主総会シーズンがやってきます。私が家業の代表取締役を務めていた時、株主総会前にどんな準備をしていたかを書いてみます。

関与先の臨時株主総会

実は今日はこれから関与先の臨時株主総会に出席します。社外取締役を務めているので、他の取締役と共に株主様と向き合う日です。臨時といっても特に何かが起きたわけではなく、手続き上必要なために開催するもの。おそらく短時間で終了するのではないかなと考えています。

私が家業の代表取締役を務めていた時、懸案事項の1つが3代前の経営者の動向でした。すでに株式はほんのわずかしか所有していませんでしたが、それでも元経営者であり、親戚でもあります。彼(と思われる人)がたまに発する怪文書がありましたので、株主総会前は不測の事態に備える必要があったのです。結果から言うと私の在任中、株主総会が紛糾したり、進行が立ち往生するような事はまったくありませんでした。万一に備えて準備を怠らなかったからこそ、心に余裕を持って挑むことができ、議事を滞りなく進行させることができました。

株主総会の議長を務めるための準備というと、真っ先に思い浮かぶのはシナリオの準備でしょう。もちろんシナリオも大事なのですが、私が重視していたのは会社法をおさらいすることです。シナリオや定款を気にする前に、そもそもの会社法に何が書かれているのかを毎年おさらいするところから、株主総会の準備が始まっていました。参考にしていたのは、会社法を解説している新書。毎年総会前に読み返すようにしていました。会社法の大まかな要点を頭に入れておくことで、その後の対応に余裕が生まれたと思っています。

シナリオを頭に入れるのは前日くらいからで十分でした。総会が毎年ほぼ同じ内容であったということもありますが、新書で学んだ程度であっても会社法の要点を押さえておくことで、シナリオに依存することなく議長を務める自信を持つことができました。

最も心配した株主総会

最も心配した株主総会は、家業を投資ファンドに事業譲渡することが決まった後、会社を解散するための株主総会でした。

私の決断に不満を持っていた株主さんももちろんいたはずで、それまでは声を上げることなく賛同してくれていたとしても、最後のチャンスということで厳しいご意見をいただくことも覚悟していました。この時ばかりは経営者、そして議長としてサンドバッグになる覚悟を持って議長席についたものです。

ところが実際のところはいつものように何も問題なく、議事は進行していきました。親戚筋から意見と言うほどのものでもない質問がありましたが、メモに目を落とすことなく回答することができました。その後はあっさりと終了し、これで会社を無事にたたむことができると考えるとなかなか感慨深い株主総会でした。

株主総会は最高意思決定機関でもあり、株主との(事実上唯一の)対話の場でもあります。無事に進行させることばかり願ってしまいますが、株主にも当然ご意見があるはずで、彼ら彼女たちの声をしっかりと受け止める姿勢が求められます。

配当金計算書など

株主総会は株主との対話の場です

準備が全て

株主総会は準備が全てです。できうるすべての手を打っておけば、当日は心に余裕を持って議長席につけるもの。反対に会社法への理解が浅かったり、定款を頭に入れていなかったり、シナリオの内容が不十分であったりすれば、当日どんなに威勢よく議長を務めようとしても、簡単に取り繕い得るものではありません。

株主総会は、日頃経営を託してくれている株主様と向き合う貴重なチャンス。彼ら彼女たちの時に厳しい意見に臆さずに向き合い、一方で、経営を託されている者としての矜持を持って議事を進行していく覚悟が必要です。うるさい株主から逃げようとしたらその姿勢は敏感に伝わってしまうことでしょう。逆に正面から向き合う覚悟を持っていれば、その姿勢は株主に理解してもらえるはず。年に一度のイベントなので緊張してしまうのは当たり前だと思って、会社法・定款に則って粛々と進行させましょう。

幸い、今日の株主総会では私の出番はないはず。経営者は緊張しきっていることでしょうから、終了後にはしっかりとねぎらいたいと思っています。


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