地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

不祥事が発覚したときに大事なこと

不祥事が発覚したときに何より大事なのは、さっさとすべてをさらけ出して謝ること。対応が遅れれば遅れるほど事態は悪化します。この当たり前のことを、いざ自分の身にトラブルが降りかかってきた時に忘れてしまいがちなのです。

2か月以上経ってからの公表は問答無用で遅い

小林製薬「紅麹」に意図せぬ成分
健康被害の原因特定できず 2カ月後公表、対応後手

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79557200W4A320C2CM0000/

記事によると「記者会見で問題を公表し国や保健所に報告したのは最初の症例報告から2カ月以上経過した3月22日だった」そうで、見出しにあるように対応が後手に回ったと言われても反論できない遅さです。いろいろ事情はあったのでしょうが、とにかく遅い。

まずは被害が小出しに伝えられる状況をなんとかコントロールして、被害者を含めた関係者に迅速に情報を入れていく必要があります。上場企業なので危機対応コンサルタントなども出入りしているのでしょうが、ここまでの対応は教科書に載ってしまうような失敗事例です。個人的にも見知っている会社なので、なんとかこの危機を乗り切って欲しいところです。

初報が入った時に経営者が出すべき指示

初報が入った時に重要なのは経営者が方針を示すこと。方針といっても「さっさと開示して警告を出せ、全数回収しろ」といったシンプルなものでよかったはず。小林製薬の事例でも、この程度の意思決定ができなかった経営責任はいずれ明らかになることでしょう。

家業の代表取締役を務めていた時に、同じ食品衛生法に触れる不祥事を出してしまったことがあります。人体に影響のないレベルと初報で確認していたものの、「全数回収、全面的な情報開示」を指示しました。もしこの時、「保健所から指摘を受けただけだから世間にバレることはない」だとか「ホームページにちょこっと載せておけばそれでよい」などと判断していたらどうなっていたことやら。どこかから必ず話は漏れ伝わって、本当の「不祥事」になってしまっていたことでしょう。

当時、仮に「全数回収」が文字通りの全数回収になってしまった場合は、資金繰り破綻も考えられる状況でした。それでも全数回収にこだわったのは、不祥事を隠していると誤解を受けたくなかったから。最初に最大限の対応をすることで、短期間で事態を収拾したかったのです。また、回収を始めることについては全国紙に社告を出稿することにしました。堂々と告知することで対応に及び腰だと思われたくなかったのです。結果は、経営上の悪い影響はほぼゼロで収めることができました。不祥事を起こしたことはともかく、事後の対応について関係者から褒められたことは私のささやかな誇りです。

スタンドマイクとメモ

謝罪会見は経験がありません

不祥事が起きたらトップが前面に立つ

ある地方自治体が不祥事を起こした時のことです。不祥事といっても責任があるのは外注先の事業者で、冷静に事態を眺めれば(道義的な責任はともかく)自治体が何か悪いことをしでかしたわけではありませんでした。ところが、発覚直後の記者会見に対応したのは副市長。トップの市長が前面に出ることなく、広報担当ということで副市長がカメラに向き合うことになりました。結果は事態を悪化させることに。トップが報道から逃げたような印象を与えてしまい、地域に混乱をもたらしました。

不祥事が発覚したときのトップに必要なのは、事態から逃げずに立ち向かっていく覚悟。「担当者に説明させる」「トップが出るほどの案件ではない」などと逃げ腰になってしまうと、その姿勢自体がさらに非難を呼び寄せることになってしまいます。

私が家業の代表取締役を務めていた時に、仕入先の経営者さんから「もし仮に不祥事が起きたら、誰が前面に立つのですか?」と尋ねられたことがあります。もちろん即答で「私ですね」と答えたことを覚えています。当時、社長になったばかりの私がまさか不祥事対応の前面に立つことなどないだろうと思わせてしまっていたのでしょう。頼りない経営者とみられている自分が恥ずかしくなってしまいました。その後、しばらくして実際に不祥事対応に当たることになるとは、その時は考えてもいませんでした。

不祥事が起きたらトップが前面に立つ。私からしたら当たり前のことで、そのために従業員より多くの報酬を得て、「社長、社長」とちやほやされているのです。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

amazon musicのバナー

Listen on Apple Podcasts

関連記事

TOP