従業員と対話するときのキーワード
経営者と対話させてもらうことを生業にしていますが、時には従業員さんとお話しさせてもらうこともあります。関与先の従業員さんとお話しするときにどんなことを考えているかについて書いてみます。
新聞を読んでいますか
関与先の従業員さんとお話しする機会がありました。経営者から求められることもあれば、私から提案することもあります。ほとんどの場合は経営者には席を外してもらい、私と従業員さんが向き合ってお話しすることになります。社外の第三者と話すことで何かのきっかけにしてもらえればというのが意図するところ。今日も30分ほど時間を取ってもらいました。
何をお話ししたかはもちろんここでは開示できませんが、私のいくつかの質問のうち最初にしたのは「新聞を読んでいますか」というものでした。どんな情報源から社会人として必要な知識を得ているのだろうかと考えて質問させてもらったもの。普段からどのような媒体に接しているかを教えてもらえると、その人の思考の背景を探り取ることができます。
本も新聞も読まないというのはそれはそれで個人の自由です。でも何らか、外からのインプットは必要だと思うので、これと定めた媒体から意識して情報を取るのが望ましいと思います。新聞だけが正しいメディアだとはまったく考えていませんが、社会に価値を提供している組織の一員であるならば、世の中の流れをざっくりと把握するには新聞は効率の良い媒体だと考えています。
ある経営者はいわゆる陰謀論が大好き。例えば、台風の季節になるとどこかが進路を操作しているようなことを口にします。何を信条とするかは人それぞれなので私がとやかく言う筋合いはありませんが、陰謀論に染まっている経営者とは商売で付き合いたくはありません。その経営者がどのような媒体から知識を得ているのかは知りませんが、少なくとも新聞を購読していることはなさそうです。
よく眠れていますか
従業員さんに他に質問するのは健康状態に関すること。「よく眠れていますか」と聞くことが多いです。精神疾患の前兆で不眠状態になる人がいるので、さらっと尋ねるようにしています。もしよく眠れていないなどと返事が返ってきたら、健康診断の受診状況をさらに尋ねることも。まずは健康でなければ職場でバリバリと働いてもらうこともできません。経営者がもし気づいていないのだとしたら問題なので、私が尋ねるように心がけています。
私自身も家業を投資ファンドに事業譲渡するタイミングで、心の不調に陥ったことがあります。資料を読んでいても頭に入ってこなかったり、もちろんよく眠れなかったり。ある朝、ふと「病院に行こう」と思い立って、それからしばらく処方された薬を飲んだ経験があります。数か月後には自然に回復したので大した不調ではなかったのでしょう。それ以来、関わる方の心身の不調に敏感でありたいと心がけるようになりました。
その後、障害年金の実務を学んで、数件の申請を手掛けることがありました。いずれも就労に支障が生じてしまい、皆さん、家計をやり繰りするのに苦労されていたのが印象に残っています。深刻に悪化してから対処しようとしたときには、すでに満足に働ける状況ではなくなっているかもしれません。ちょっとした前兆を察知して、大きな病気に繋がらないように配慮したいものです。
何か困っていることはありませんか
従業員さんからいろいろ話してもらうきっかけにできるのが、「何か困っていることはありませんか」という投げかけ。たいていは「困っていることはありませんが、他にこんなことがあります」といった具合で考えていることなどを打ち明けてもらえます。
私も先日、ヒアリング?を受ける機会がありました。面談ほどかしこまったものではなく、関与先で機会を設けてもらったもの。いろいろとお話しをした後に最後に「何か困っていることはありませんか」と聞いてもらって心が楽になるのを体感できました。
人は誰かに自分のことを理解してもらいたいと願っているもので、この質問はその欲求を満たすものなのでしょう。ちなみに私はまったく困りごとが思い浮かびませんでした。気持ちよく仕事をさせてもらっているのでその旨をお礼と共に申し上げておきました。
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