投資ファンドに事業譲渡した会社との関わりを聞かれた話
江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡したのが2015年3月なので、もうすぐ9年。今でもたまに、かつての家業について尋ねられることがあります。
もはやまったくご縁のない会社という感覚
ある経営者と対話していた時のことです。「まだ会社とは関係があるのですか?」と聞かれました。すぐに意味が分からなかったのですが、私が投資ファンドに事業譲渡したかつての家業とまだ何か関わりがあるのかを質問されたのです。
どうしてこんな質問をされることになったかというと、株式について議論していた話の流れです。同族会社の経営者として株主とどのように向き合うかについて、お互いの苦労話などを披露していたところでした。かつての家業の場合は、株は分散していたものの、個人の筆頭株主は私だったので最後まで(それほど)株主対策に煩わされることはありませんでした。そんなことを話していた時に冒頭の質問をされたのです。
私からの答えは「株も持っておらず、まったく関わっていません」というもの。事業譲渡後に1年間だけ顧問契約は結んでいましたが何かを求められることもなく、契約期間満了と同時に終了。その後、新会社の様子は気になるものの、経営に関わることはもちろんありませんし、関係を持つこともありませんでした。どうやらかなりのご苦労はされているようですが、看板だけは家業と同じだけれど、もはやまったくご縁のない会社という感覚。株を持っていないとこんなものなのです。
元従業員さんからの近況報告はうれしい
会社との繋がりはこのように断ってしまいましたが、人のご縁は続きます。今朝は元従業員さんから、資格試験に合格したとうれしい連絡が入りました。何年か前から挑戦を続けていて、今年も厳しいかもしれないと聞いていたところでした。ただ、なぜだか私は合格するだろうなと待ち構えていて、予想通り、朝いちばんで知らせてもらうことができました。私と同様に会社を離れた元従業員も第二、第三の社会人人生を歩んでいるはず。こうして連絡をもらえるのは何よりうれしいことです。
また、正月には別の元従業員さんから年賀状をいただきました。同じ福岡県内にいらっしゃるとのことで、何かのタイミングでお会いすることもあるだろうと楽しみにしています。年賀状を出すことは数年前からやめていますが、近況を知らせてもらえるというのは本来の年賀状の魅力を再確認できますね。
私が年賀状をやめた理由は突き詰めれば、面倒くさくなったから。年賀状のやり取りをしたからといって何かがあるわけでもなし、会うべき人とはLINEやメールで連絡しているし。わざわざ手間暇かけて年賀状を用意するという気力がすっかり失せてしまいました。それ以来、大変失礼ながら、いただいた年賀状に返信するのみというスタイルを続けています。アナログな連絡手段しかなかった昔ならともかく、もはや役割を終えた通信手段なのではないかと思います。郵便料金が値上げされたら、ますます年賀状を出す人は減るのでしょう。
株式がオーナーの証
先日、あるホームパーティーに呼んでもらいました。手作りの料理がたくさん並べられて食べきれないくらい。日本酒を持参したところ、ちょうどホストの方にご縁のある土地のお酒だったので、とても喜んでもらえました。いつもお願いしている酒店さんにお任せして選んだお酒で、あっという間になくなってしまったのはここだけの話。レストランや居酒屋での食事も楽しいですが、ホームパーティーってこんな感じだったなと思い出すことができました。
その時に使われていた食器のいくつかがかつての家業のものでした。どうやら私のことを知ってくれていて、わざわざ選んでくれたようです。元茶わん屋であってもかつての自社商品というのは今でも覚えているもので、「あ、これうちのだな」とすぐに懐かしく手に取ってしまいました。
株式会社であるならば、株式を持っていることがオーナーの証です。窮境に陥っていた家業の代表取締役を5年間も務めることができたのも、代々経営に関わる会社を保有していることに伴う義務感があったからこそ。反対に株式を持たない会社についてはなんの感慨も湧いてこないというのが率直なところです。
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