仮説、行動、検証の繰り返し
中小企業支援家として目指しているのは、関与先に「今より良くなってもらうこと」です。ただし、私のリュックの中には魔法の杖など存在していなくて、私が何らかのお手伝いをするにしても、最後は事業者自身が行動をする必要があります(当たり前のことなのですがわかっていない事業者もたまにいらっしゃる)。仮説、行動、検証の重要性について書いてみます。
事例の表面をなぞるな
知恵とアイデアを提供する仕事をしていますが、身も蓋もない言い方をすれば売上アップを「必ず」実現する魔法の杖など存在しません。私の提案した知恵とアイデアを基に仮説、行動、検証を繰り返した事業者だけが成果を得ることができます。
支援事例をお伝えしていて歯がゆいのが、事例の表面部分だけをなぞって結果を得ようとする事業者の多さ。中学生が方程式を解くように、経営の解を求めようとします。
私が事例から読み取ってもらいたいのは「成功の要因」。その要因を自社の取り組みに反映してほしいのです。「Instagramで情報発信していたからInstagramを使う」「地域貢献活動をしていたからボランティアを行う」などと事例の表面だけをなぞっても効果は生まれません。事例を「行動に至る経営者の思考」「行動に踏み切ったタイミング」「消費者の共感を得たポイント」などに分解して、自社に取り入れるべき点を取り入れれば良いのです。
「事例」という言葉は、行政や一部の経営者には魔法のように聞こえるようです。横展開さえすれば、誰でも同じような成功を手にすることができると勘違いしているのでしょう。しかし、事例の表面をなぞったところで何も生まれません。本質的な部分を理解しようとせずに安直な真似をしたところで、売上アップは実現しないのです。事例を基に思考する経営者だけが次のステップに進むことができるのです。
そもそも行動しないと何も始まらない
知恵とアイデアを提供しても「検討します」とばかり言って、いつまでも行動しようとしない事業者も多いです。検討ばかりに時間を費やすくらいなら、さっさと行動して失敗してしまえば良いのです。失敗からもデータは得られるわけで、検証して次の仮説に生かすのです。
ある関与先は日本に数社しかない事業を手掛けていますが、残念ながら売上に満足できる状況にありません。私からしたら情報発信のネタに溢れていて、ブログやニュースレターなどで発信すればそれなりの反響が期待できそうです。
でも、行動しない(できない)。行動せずに成果を得られることはなくて、どんな知恵やアイデアも生かされることはありません。ビジネス書を読んだだけでは1円のお金も生み出すことができないのと同じで、とりあえず勇気を持って一歩を踏み出して欲しいところです。
ある経営者は常に新しいことにアンテナを張っています。流行りの講師の講演を聞きに行ったり、実際に特定の取り組みをまずは導入したりと、関係ない人が見ていたら支離滅裂なくらい。でも窮境を凌いで新規事業の立ち上げに成功し、今では事業承継も見据えているところです。迷ったら考える前に行動するのがその経営者の信じているところのようです。
中小企業支援家として歯がゆいのは、最後に行動するかどうかまでを経営者に強いることができない点。首根っこを捕まえるわけにもいきませんし、知恵とアイデアを提供した後は黙って見守るしかないのです。しばらく経って何らかの行動をしていれば、また別の打ち手を考える余地が生まれます。行動する経営者のみが見ることのできる景色があるのです。
検証せずに過ちを繰り返す
私のかつての家業は検証をするのがなにより苦手でした。やったらやりっぱなしで、次に生かすという文化に欠けていました。会社の文化は経営者が創るものなので、私も含めた歴代の経営者の責任です。失敗からも学ぶことができるはずで、データを次に生かせば良いのです。しかし、やりっぱなしでは同じ失敗を繰り返す可能性が高まります。特に同質性の高い組織でしたので、良くも悪くもやりたいことだけを実行する会社であったように思います。
私が関与先に知恵とアイデアを提供する時によく申し添えるのが、「やってみなければわからない」「データを取って次に生かすことが大事」という2点です。何事も必ず成功するなどということはなくても(もちろん成果を生み出すに越したことはないですが)、次の挑戦の確度を高めるためのデータを取ることを最低限の成果と考えれば良いのです。
ちょうど、もうすぐある関与先が新規事業をまた一歩進めます。ポップアップストアを出店して、これまでの取り組みが間違っていなかったかを直接、消費者に問うことにしています。もちろんこの試みもデータを取ることが大きな目的。発送したDMにどのような反応があるのか、見せ方や伝え方に工夫の余地があるのか、もちろん売上がどう推移するのか。売上だけに一喜一憂せずに、検証の材料を集める場だと捉えてほしいとお伝えしているところです。
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