地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

上に立つ者の責任について考える

地方中小企業において、経営者は最終責任者です。「責任」について書いてみます。

「知らない」と言えないのが経営者

家業の代表取締役を務めていた時に心がけていたことの一つが、過去も含めて会社の責任を負うということ。どういうことかというと、就任前の出来事も含めて自分の責任だと受け止めるようにしていました。「就任前のことなので私の責任ではない」と言わないようにしていたのです。私まで14人の当主がバトンを繋いできた家業だからこそ、すべての責任は現役の経営者が負うべきだと考えていました。

在任中に下請法に関連して公正取引委員会から勧告を受けたことがありました。取引先である産地商社との取引形態が、下請法の趣旨に反するということでお叱りを受けた案件です。取引先との商習慣は何十年も続いていたもので、お互いがメリットを享受できるように築き上げてきたもの。当時、私が社長になっている時になぜ問題になったのかなどと考えもしましたが、それは言わないことに。過去の経営者の決断は私の決断でもあります。経営者として、また当主として処分を受け入れたことはもちろん、謝罪すべき先には頭を下げて事を収めることに努めました。

「知らない」と言えないのが経営者です。知らないのは自分のせいで、会社の中の誰のせいでもありません。会社の前の信号が赤に変わるのも経営者の責任で、それくらい腹をくくらないと地方中小企業の経営者など務まりません。私はたった5年間しか在任していませんでしたが、それでも退任したときには重責から離れることができてほっとしたのを思い出すことがあります。

テレビと政治に興味が無い

基本的にテレビのニュースは朝のNHKのみを耳だけで聞いています。テレビは映画とドキュメンタリーを録画しておいて観るくらいで、バラエティやワイドショーなどは観ません。時間がもったいないし、大したことのない情報を垂れ流しているだけだから。たまに家族がつけているテレビをちらっと見ると、何年も前に見かけたアナウンサーやタレントなどがだいぶ年を重ねていてドキッとすることがあるくらいです。

そのテレビでは某政党の脱税?案件が大きく取り上げられているよう。基本的に興味が無いのですが、気になったのが「会計責任者がしたことなので知らない」という言い訳が通用しているらしいことです。私からしたらまったく理解できず、じゃあトップは何のために存在しているのかと考えてしまいます。トラブルや不祥事が発生したときに責任を受け止められないのであれば、それはもはやトップとは言えないのではないかと考えます。

議員という立場は、自分たちを取り巻くルールを自分で決めることができます。その環境に甘えることなく自らを厳しく律さないと、あっという間に信頼を失うことになると思うのです。私にとっては政治家の考える責任というものがまったく理解できません。以前に選挙や特別職のポストに声をかけてもらったことがあるのですが、丁重にお断りしています。どうやら私とは感性がまったく合いそうに業界だからで、こんな私が政治の世界に足を踏み入れたとしても、何の成果も生み出すことができなかったでしょう。

ブラウン管のテレビ

テレビってうるさいですよね

経営者に依存されたらあえて距離を置くことにしている

中小企業支援に携わっていると、経営者から大きく依存されてしまうことがあります。何でもかんでも私の意見を求めてきて、参考にしている程度ならば良いのですが、「解」そのものを簡単に手に入れようとしてくるのです。自ら思考して経営判断を下すのが経営者の仕事なのに、判断材料を集めるだけでなく、答えを聞き出そうとされてしまうのです。

こうした経営者とはあえて距離を取るようにしています。顧問契約のことだけを考えたらお愛想を言いつつなんでも答えれば良いのでしょうが、私はそれを良しとしません。経営者が経営判断を下すためにも、「それは経営判断をしてください」と突き放します。

例えば、「どちらの金融機関に相談を申し込んだらよいですか」とか「A社の経営者と話すことになりましたので同席してください」といった具合。どちらも私が対応してよいのなら勝手に対応するのはなんてことはありませんが、残念ながら私はただの社外取締役や顧問に過ぎません。自分の会社のことでもないのに責任を持って判断を下すことはできないのです。判断するための知恵とアイデアは提供しますが、最後の責任を取るのは経営者の役割です。

経営者として責任を負うことができないというのであれば、さっさと返上すれば良いだけ。代わりに経営のトップに立てというなら喜んで立ちます。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

amazon musicのバナー

Listen on Apple Podcasts

関連記事

TOP