地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

「押し付ける」と「任せる」と「信じる」の違い

ある地方中小企業の経営者は随分と細かいことまで自分で指示をしてしまうタイプ。従業員が育たないのでいつまで経っても忙しそうにしています。地方中小企業の経営者に必要なのは「信じる勇気」です。

押し付ける

何かを「押し付ける」というのは、後がどうなろうと気にせずに案件を放り投げる行為。スキルを持たない人に仕事を押し付けても混乱してしまうだけで、最悪の場合は退職やトラブルに結びつくことも考えられます。

ある広告代理店の下請け業者と同じ現場にいたときのこと。管理者らしき人がアルバイトの学生を動かそうとしているのですが、今でいうハラスメントを連発していて学生は戸惑うばかり。明らかに無理筋の業務を押し付けようとしていて、関係のない私まで気持ちが落ち込みました。おそらくその管理者自身がキャパオーバーに陥っていたのでしょう。

何かを押し付けたところで本質的な課題は解決しません。見たくない現実に目をこらし、逃げることなく対処することが求められます。

任せる

相手の成長に繋がることを期待しているのであれば、「任せる」ことが選択肢になります。多少の遠回りをするようであっても見守ることが必要で、もちろん最後の責任は任せた側に生じます。

地方中小企業では無限にチャンスを提供できるわけではありませんが、従業員を育てようと考えているのであれば任せる勇気を持たなくてはいけません。「だったら自分で作業したほうが早い」「何か間違いがあったら困る」と考えてしまう自他の声を封じて、成長に投資するのが「任せる」という行為です。

私は基本的に何度かチャンスを与えて仕事を任せるタイプですが、途中で取り上げてしまうこともあります。いくつか要因があって、例えばそもそもの能力不足であると判明してしまった時。本人は問題ないと考えている時であっても、仕事である以上は冷静に見極めなければいけません。特にクリエイティブを伴うような案件の場合、一度は任せたとしても能力不足が判明したらさっさと巻き取ってしまうようにしています。また不義理な行動をしたとわかった場合も同様。感性の合わない人に何かを任せることはできません。厳しいですが、チャンスは無限に存在しないのです。

私が家業で営業担当を務めていた時のこと。当時の上司は細かいことは言わずに案件をどんどん任せてくれるタイプでした。クレームを出してしまってもサポートはしてくれつつ、最後まで任せてくれることが続きました。当時は大変だったのですが、今にして思うのが社会人の基礎を作ることができたのはその時の経験があったから。任される有りがたさを今でも忘れることはありません。

運動会のリレー競技

信頼のバトンを繫ぎましょう

信じる

私が代表取締役を務めていた時に心がけていたのが、「任せる」を超越して「信じる」こと。地方中小企業の経営をしようとするのであれば、これと決めたことに目配りをしつつも、すべてを完璧に把握しておくことなどできません。仲間を信じて託すことで、ようやく前進することが可能になります。

個人事業主であればせいぜい従業員は数人程度なのでしょうが、数百人の従業員を抱えているのであれば彼ら彼女たちを信じるしかありません。大きな方向だけを示して旗を掲げたのであれば、あとは最後の責任を取るだけ。細々としたことに口をはさみたくなる気持ちをぐっと抑えないと、足を引っ張ることになってしまいます。

株式会社であれば代表取締役を支える取締役は信じられる人だけを選任すべき。基本的に取締役会に隠し事はできないので、通帳と実印を託せるレベルの人でなければ取締役には不適任でしょう。ある経営者は取締役会メンバーにも全幅の信頼を置けていないようで、すべてを自分が管理しなければ気が済まないよう。そんな様子は取締役にも伝わってしまうわけで、取締役会が一丸になれていないのに全社が同じ方向に迷わず進むことなど夢物語です。

私を支えてくれた取締役会メンバーは20歳以上離れた年上ばかりでした。いずれも生え抜きのベテランばかり。事業承継をした時にはすでに銀行管理下に陥りかけていましたが、最後になんとか投資ファンドに事業譲渡することができたのも、彼らを信じて実務を託すことができたから。信じることができる仲間がいたからこそ、緊急登板した家業の代表取締役を務め終えることができました。


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