地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

家業と事業に振り回されない生き方

私のかつての家業と同じように、親戚が経営していた会社も経営破綻しています。世の中、派手に成功している人や会社ばかりが目立ちますが、その裏には同じ数以上の破綻企業が存在しているはず。家業が消滅した後も経営者や家族の社会人人生は続いていくわけで、いつまでも家業に振り回されない生き方を身に付けておくというのが必要だと実感しています。

家業に振り回された親戚からの連絡

ある親戚から連絡がありました。地方で働いていたけれども、やむなく東京に帰ることにしたそう。彼も実家の家業に振り回された人生を送っているので、次の仕事でも自分のやりたいことを見つけて楽しんで欲しいなと願っています。

もし私のかつての家業がそのまま存続していたら、選択肢など与えられることもなく、家業を発展させるために邁進することしかできなかったことでしょう。それが天命だと理解できていれば何も問題はないのでしょうが、人生の主導権を自分で握り切ることができないというのはなんとも窮屈なものです。幸か不幸か家業を投資ファンドに渡すことができ無事に軟着陸を果たせた時には、家業を手放さざるを得なかった悲しい感情と重責からの解放感が合わさって複雑な気分になったことを覚えています。

経営破綻後にも経営者とその家族の社会人人生は続きます。その時に必要なのは歩み続ける勇気。後ろを振り返っても何も生産的なことにはならないので、ピンチをチャンスに変えるべく行動しなくてはなりません。

ある知人の家族は地方中小企業を経営していて経営破綻させてしまったそう。その後、精神の疾患に悩まされて家から出ることもままならない状態に。こうなってしまうと第2の社会人人生もなにもなくて、まずは体調を回復させることに注力せざるを得ません。最も悔しい思いをしているのはご本人なのでしょうが、再起を応援しようとしている人々もやりきれないことでしょう。

誤解を恐れずに言えば、家業が無くなったのであれば、その後は好き勝手に生きることが可能になります。様々なしがらみから解放されて自分の人生を自分で切り拓くことができるようになるのです。誰もが成功できるわけではないからこそ、失敗を次に生かせばよいのです。

家業も本人も次のチャンスを得る機会になる

家業を倒産させたり、私のように第三者に事業承継したりしたという事実は決してマイナスのことばかりではなくて、会社も本人も次のチャンスを得る機会にもなっています。会社は投資ファンドの手に渡り、不採算事業を閉鎖して海外販路を拡充するという道を選ぶことになりました(思惑通りに成長できているわけではまったくなさそうですが)。

私個人は求人広告を見たのをきっかけに中小企業支援家に転身。家業で代表取締役を務めていた5年間は、金融機関への説明が何かと求められて経営の自由度が大きく損なわれていました。事業の成長のエンジンを繋ぐような新規事業に着手するなどほぼ夢物語。ところが現在は、社長在任中にはさまざまな制約で実現できなかった創造的な仕事をさせてもらっています。顧問先に変化の必要性を伝える立場に変わり、経営者と共に売上アップを目指す日々を送っています。

家業を離れた時には途方に暮れることもありましたが、それまでまったく縁のなかった地で穏やかに暮らすことができています。こうして第二の社会人人生を歩むことができているのも家業からすっぱり離れることができたから。離れる瞬間は不安に思うものですが、勇気を持って一歩を踏み出せばそれなりに道は切り拓かれるものです。

ボールで遊ぶ犬

何事も振り回されないようにしましょう

創業を志す人と話していて感じる違和感

創業を志す人と話していると、ほぼ全員が成功することしか想像できていません。例えば、資金繰りに窮して事業を畳まざるを得なくなるようなことが起こり得るなんて、おそらく考えてもいないのです。当たり前のことです。ただ、すべての人が必ずしも成功するわけではないという現実は知っておいて欲しいなと思います。

失敗する要因を一つずつ潰していって、経営をギャンブルにしないのが経営者の務めでもあります。どこに地雷が埋まっているのかを把握しておけば、少なくとも地雷を踏むことを避けられます。夢のような成功を頭に思い描いておくのも必要ですが、失敗しない経営を志向することも重要でしょう。

起業や創業というとキラキラとした部分のみを見てしまいがち。そうした部分だけを見せようとしている人がいるのかもしれません。家業を軟着陸させた経験のある私からすると、事業を営むというのは泥臭い行動を求められる連続です。せっかく創業しようとするのであれば、成功と失敗は表裏一体であることを理解した上で、事業に振り回されるのではなく、事業を振り回すように経営してほしいなと願います。


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