年が改まり、今後の進路を検討している人もいることでしょう。独立開業した士業に必要な資質の一つが「応援されること」。「なぜだかわからないけれど色々な人が応援してくれる」といった状況を実現している士業は、どのような資質を兼ね備えているでしょうか。

実務で提供できる確かな価値を持っている

まず大前提として、実務を通して価値を提供できることが求められます。例えていうなら、絵も描けないのに画家を名乗ることはできないということ。そもそも何も提供することができないのに、士業事務所の経営が成り立つことはありえません。顧客課題を解決できる価値を提供するからこそ、報酬をいただくことが可能になります。

ビジネス書などマーケティングについて書かれている本を眺めていると、この大前提が明記されていないことがあるので勘違いしてしまう人がいるかもしれません。ごく当たり前のことですが、どんなに広告費を投入したところで、実務で提供できる確かな価値を持っていなければ商売は成り立ちません。

まずは地に足をつけて知識を身につけることです。もし知識が足りないのであれば、それを補う仕掛けを用意しておきましょう。

信頼される人との繋がりを持っている

名刺交換しただけで人脈が得られることはありません。そんな薄っぺらいつながりは何の役にも立たないばかりか、逆に何かを売りつけられたりするだけ。独立開業しようとするのであれば、それ以前からの信頼をコツコツと積み上げておき、資産のように貯めておくことが必須です。

例えば、前職で問題社員であった人は仕事繋がりで応援してくれる人が現れることはないでしょう。隣近所から嫌われている人、学校や部活での繋がりがない人も同様です。資格試験に合格したからといって、ある日急に「信頼」が得られることはなく、少しでも高い位置にある発射台を得ようとするのであれば、信頼される人との繋がりを先に作っておくのは必須のことです。

「裏切らない」「約束を守る」「嘘をつかない」「責任を持ってやり切る」。こうした当たり前のことを当たり前にしてきた社会人人生ですか？資格試験に合格したからといってこれまでの歩みがリセットされることはありません。人間性を高めておけば、いざ独立開業したときに多くの人が喜んで手を差し伸べてくれることでしょう。

経営者と渡り合えるだけの豊かな経験を持っている

士業のカウンターパートナーの多くは地方中小企業の経営者です。その経営者はどんなに零細な事業所であっても一国一城の主。彼ら彼女たちと対等以上に対話することができなければ、商売の相手として認められることはありません。

勘違いしてはいけないのが、派手な服装をしたり、もっともらしい話し方を身につけることは経営者に選ばれる理由にならないということ。最初は目を引くかもしれませんが中身が伴っていないことは、あっという間に見抜かれてしまうことでしょう。

重要なのは、それまでの社会人人生での豊かな経験を持っているかどうか。年齢が若ければ経験値が低くても問題ありませんが（若さがカバーしてくれる）、士業の多くがそうであるように一定の年齢で転職して独立開業しようとするのであれば、経営者に認められるだけの豊かな経験が必要です。

さらにいうと、経験といっても成功体験である必要はなく、失敗体験を開示できれば強いです。世の中には胡散臭い成功体験らしきものを語る人が溢れています。「外資系の保険会社で優秀な営業担当だった」とか、「某有名企業で誰もが知っている媒体の立ち上げに関わった」とか。

本当にそうした経験があれば何も問題ありませんが、とってつけた成功体験らしきものの胡散臭さは敏感に察知されるものです。逆に失敗体験を伝えることができれば「それだけの苦労をしているのであれば、自分の話を理解してもらえるに違いない」「逃げずに最後まで取り組むなんて誰もができることではない」と評価されることに繋がります。

実はここまで書いた3つの条件は私自身に当てはめて導いたものです。家業を投資ファンドに事業譲渡した後に途方に暮れる時期もありましたが、なぜだかわからないけれど多くの人に応援してもらうことができて今があります。仕事を紹介してもらったり、近くに来るたびに寄ってくれたり。そうした方の存在にどれだけ勇気付けられてきたことか。

茶わん屋が中小企業支援家に転身して、これだけささやかな成功を収められているなんて奇跡。私だけで何かを成し遂げられたわけでなく、多くの人に応援してもらえているから事務所経営が成り立っています。独立開業しようとするのであれば、多くの人から応援してもらえることを目指しましょう。

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