他人から資金を調達するときに考えること
知人から続けてクラウドファンディングへの協力を求められました。よく考えてみましたが、どちらも支援は見合わせることに。他人の資金を預かるということについて書いてみたいと思います。
クラウドファンディングを始めますという連絡を複数受けた
たまたまなのでしょうが、続けて複数の人から「クラウドファンディングを始めました」と声をかけてもらいました。どれも初動は鈍そうで、何より「なぜ支援しなくてはいけないのか」がまったく伝わってきません。人件費が随分と多めの割合で予定されているのにも違和感を感じます。「アプリを開発したいから」「ブランドを立ち上げたから」といったことをダラダラと説明されても本人以外には関係ないこと。「資金が足りないのなら働いて貯めてから始めれば?」と考えさせない伝え方の工夫が必要です。
ついでに検索してみるとこれまで関わった事業者も何者かが最近プロジェクトを立ち上げていた模様。ただ残念なことにいずれも苦戦していたようで、成功か失敗かというと後者だったのでしょう。
クラウドファンディングというと打ち出の小槌のように勘違いしている人が多いのは、資金集めの手法として話題になり始めた頃から今でも変わりません。きつい言い方になりますが、「そんな見せ方や説明で他人からお金を出してもらえると思ってるの?」と感じてしまうのです。
応援してもらいたいのであればドブ板営業は必須。汗をかいた人だけが助けてもらえるのはクラウドファンディングといえども変わらないことです。安直にクラウドファンディングに頼って物足りない結果に終わったら、事業の看板を傷つけることになりかねません。他人に応援してもらおうと決めたのならば、ドブ板営業する覚悟も持ちましょう。
銀行に支援を求めるときの大前提
銀行から融資を受けようとする経営者に真っ先に伝えることの一つが「隠し事や小細工をせずに状況を伝えてください」ということ。
まったく理解できないのですが、銀行に対して虚勢を張ろうとする経営者が多いのにはいつも驚かされます。「窮境に陥っていることを知られたくない」「少しでも良い姿を見せたい」と考えてしまうようですが、支援を受けるためにはどちらも逆効果でしかありません。
銀行担当者の立場を想像してみましょう。融資を受けたいと言っているのにうまくいっていることばかり話そうとする経営者に共感することができるでしょうか?困っているなら率直に状況を伝える、全てはここから始まります。
ある経営者は「融資を断られたことがあるから、二度と銀行に頼らない」と言っていました。それはそれで経営判断なのですが、銀行もボランティアで活動しているわけではありません。銀行は「お金を売っている」わけで、商売である以上、銀行も顧客を選ぶ権利があります。銀行に媚びる必要はないですが、商売の相手に接するのと同じように、まずは誠実に情報を提供することが融資を受けるための第一歩になると考えています。
株主との関わり方
株式会社の場合、出資者である株主は強力な利害関係者の一人です。この力関係をわかっていないと、肩書だけの社長や専務などはあっという間に力を失うことになります。
家業を投資ファンドに事業譲渡したあと、ファンドが百貨店出身者を取締役会メンバーとして招聘しました。それぞれ社長や専務として業務執行を任されることになるわけです。一方で新会社の株主はファンド。ここで喜劇を目撃してしまったのですが、サラリーマン出身の社長たちは自分たちが全権を握ったと勘違いしてファンドとの関係が悪化したのです。
資金の出し手で100%株主でもあるファンドが、私のいる前で百貨店出身者に株主と業務執行取締役間の力関係を説いている様子は滑稽でもあり、この先の経営を心配させるのに十分なものでした。
他人からの資金を元に何かを成そうとするのであれば、コミュニケーションに手間暇をかける必要が生まれます。そこを面倒だと思うのであれば自分で資金を調達すればよいのです。他人のお金を預かることができるのは、それなりの関係性が構築されていて初めて実現すること。クラウドファンディングを使ったからといって汗をかかずに大金を得られることはありませんし、融資を申し込んだからといってそれだけで銀行がお金を入金してくれることもないのです。
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