クレームへの立ち向かい方
顧客からクレームが入った時にどのように対処すれば迅速に収束させることが可能になるでしょうか。
逃げずに立ち向かう
クレームを収めるために最も有効なのは逃げずに立ち向かうこと。面倒くさそうな雰囲気を出してしまったり、お叱りを受けることから逃げるような態度を見せてしまったりするのは逆効果。勇気を出してクレームに立ち向かうことが、何より有効な対処法です。
さっさと非を認めて率直に謝罪してしまいましょう。「原因を究明しないと何とも言えない」だとか、「謝ったらあとで不利益なことになりかねない」といった言い訳はトラブルを長引かせるだけです。認めるべきは認めて頭をしっかり下げる。これをどれだけ迅速に実行できるかがクレーム処理の負担感を大きく左右します。
この考えを身に付けることができたのは、家業に就職して初めて配属された百貨店の現場でのこと。百貨店独特の文化だと思うのですが、クレームを発生させることを何より嫌います。そして、クレーム発生後には顧客に徹底的に謝り倒します。まだ社会を知らなかった私にとっては強烈な現場で、クレーム対応の初歩を現場で学ぶことができました。
その百貨店に配属されていた、ある年の年末のこと。自社商品の付属品が不足しているとクレームが入りました。そんなことはないと思いつつ、百貨店の社員に指示を仰ぐとさっさと交換して謝ってこいとのこと。高速バスに飛び乗って新しい商品を持参しました。
結果は顧客の勘違いで付属品を見落としていただけと判明。年末の忙しい時期に申し訳なかったとお土産までいただいて店に戻ることになりました。「お客様は神様」というのが当時の百貨店の文化だったのでしょう。顧客からのクレームは疑うことなくさっさと鎮火させて、次の商売に繋げるという方針を実体験した出来事でした。
クレームをきっかけにさらに炎上させてしまう人
クレームへの対処を誤るとさらに大きなトラブルを招くことになります。
よくあるのが報告などを怠ってしまい、顧客の不信感を増幅させる事例。クレーム相手だからと何となく連絡を入れるのを後回しにしてしまい、放置されていると感じた顧客からさらにお叱りを受けることになるパターンです。解決に向けて対応中であっても、「ご迷惑をお掛けしております」「また改めてご連絡しますが、現在はこういう状況です」と一報を入れるだけでガス抜きはできるもの。ちょっとした手間を惜しまないようにしたいものです。
また、クレーム発生後に顧客との距離感を詰めすぎるのも問題。これも百貨店での勤務当時に見聞きした事例ですが、すぐに解決しようと相手宅に出向いたところ、「なぜ自宅に来るんだ、呼んでいない」と気持ち悪がられてしまい、さらに大きなクレームとなってしまいました。担当者はその後、異動することに。相手との距離感を間違えて取り返しのつかない案件になっていました。
カスハラは断固拒否
家業で営業担当をしていたときのことです。先輩従業員の顧客がクレームをつけてきて、行きがかり上、私が対応することになりました。1回だけの対応で終わることはなく、ネチネチと何回も携帯に電話をかけてきます。そのうちに正当な訴えではないようなことも言い出すようになり、持て余すようになった私はその人物からの電話には一切出ないようにしてしまいました。最後には着信拒否に。お客様は神様ですなどと考えていたら着信拒否などありえないのでしょうが、まともな会話が成立しない相手はもはや顧客ではありません。こちらが消耗するだけなので、思い切って関わりを断つに限ります。
またあるプロジェクトに関わっていた時は日時の約束を守れない人物を出入り禁止にしたことがあります。「何度もお約束を守っていただけていないので、今後はご利用をご遠慮ください」とお伝えしたのです。無料のサービスを受けられるというと、このように質の悪い人物が寄ってきてしまうことも。多少の波風が立つことを恐れずに、毅然と対応する覚悟が必要です。
正当なクレームが発生してしまったら、誠意を持って迅速に対応するのがもっとも手っ取り早く解決できる道です。無駄に恐れたり、腰が引けたと思われたりするような対応をしてはいけません。一方、不当な要求や一線を越えたクレームには毅然と対応すること。もはや顧客ではなくなってしまった相手に対し、必要以上に手間を掛ける必要はありません。
クレームや事件は自分が試される貴重な機会です。どうせ対処するなら前向きに取り組んで次の機会に繋げましょう。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事