クリスマスイブの日曜日に考えていること
今日は日曜日なので最近考えていることを思いつくままに書いてみます。
他人の失敗経験から学ぶ
先日、あるトークセッションでコーディネーターを務めました。流れで私も自己紹介をすることになっていて、家業を投資ファンドに事業譲渡し中小企業支援家に転身した経歴を紹介しました。終了後に主催者の1人から話しかけられたのが、「岡田の話を聞いていて思ったんだけど、成功体験より失敗談の方が勉強になるよね」というもの。
まったく同感で、私自身が家業の代表取締役を務めていた時には、日本を代表するような経営者の成功体験というものには全く共感できなくて、それよりも日々の経営で絶対に踏んではいけない地雷の在処を教えてほしいと思っていたものです。つまり他人の失敗体験から学びを得たいと考えていました。その時に愛読していたのが日経ビジネス誌「敗軍の将、兵を語る」という連載。会社や組織の失敗を当事者が振り返るという企画で、毎号楽しみに読ませてもらっていました。
家業を投資ファンドに渡さざるを得なかったというのは、私にとっては決して愉快な思い出ではありません。ただ、どなたかにこの失敗経験を伝えることができれば、現役経営者の何かの役に立つのではないかと考えて講演などでお話しするようにしています。講演で話している時の聞き手の1人はかつての私でもあるのです。
その後、中小企業支援家に転身し多くの成功事例を生み出せたのは、事業者と二人三脚で走ることができたから。私が提供する知恵とアイデアを踏み台にして、経営者が自らの手で売上アップという成果を掴み取ってくれたものです。
マイストーリーを用意する
他の専門家らしき人と話した時のこと。「これまでどんなご経歴を歩んで支援者に転じたのですか?」と尋ねてみました。残念ながら話してもらえたのは学歴のみ。これではどこかで一緒に仕事をしようとは思えません。教科書に書いてあるようなことだけを述べるのは誰にでもできること。仮に○○士といったような資格を持っていたとしても、その底の浅さは地方中小企業の経営者に簡単に見破られてしまうことでしょう。
士業や中小企業支援家として活動するのであれば、提供できる確かな価値を持っていることは当たり前のこととして(これ大事)、共感されうる「マイストーリー」を用意しておく必要があります。なぜ自分で商売を営もうとせずに支援する側に立つことを選んだのか、なぜ他の支援者や専門家と異なる価値を持つに至ったのかといったことを端的に理解してもらうためにマイストーリーが必要なのです。
ここで言うマイストーリーは学歴や職歴とは異なります。見込客に多くの競合の中から選んでもらうための理由になりうる物語のことです。
私のマイストーリーは
- 江戸時代から続く家業を投資ファンドに事業譲渡した苦い経験がある
- 社長に就任した時にはすでに家業は窮境に陥っていて、
せっかく思いついても実行できないアイデアがたくさんあった - 中小企業支援家として経営者に知恵とアイデアを提供する仕事は
かつての自分がなしえなかったことを実現できる天職だと考えている
といったもの。
我ながらなかなか強力だと思っていて、実際に初めての転職時には159人の中から選んでもらうことができました。
AI時代になると、定型業務は誰でもできる仕事になってしまいます。その際に見込客から選ばれるためには、多くの競合にない個性を明確にし、独自の立ち位置を鮮明にしなくてはなりません。マイストーリーは独自の立ち位置を築くための強力な武器になってくれます。
陳腐化しない価値を持つ
独自の立ち位置を築いたとしても、劣化するのが早くては意味がありません。例えばSDGsやDXというのを売りにしている専門家らしき人がいますが、流行のネタに乗っているだけのようにも思えます。そうした人に限って、かつてはドローンのなんとかに取り組んでいたり。先行事例を安直に真似したい行政を相手にし続けるのであれば、流行のネタだけを追いかけていれば良いのかもしれません。ただ、私のように顧客と長期的な関係性を構築しようとするのであれば、陳腐化しない強みを持っておくというのは最も重要なことの一つです。
冒頭のトークセッションで登壇していただいた経営者がおっしゃっていたことの一つが、「経営だけでなく、基礎教養を身につけておきなさい」ということでした。例えば、今昔物語集や源氏物語について基礎的な教養を身につけておかなければ、海外の経営者からバカにされるというのです。
私は昨年から茶道を学び始めています。ようやく1年経ったところでまだ初心者レベル。でも45歳にして始めた趣味は趣味で終わることなく、仕事にも良い影響を与えてくれそうな気がしています。主客が一つの空間で向き合うというのは、中小企業支援家としても日々行っていること。茶道について理解を深めれば、中小企業支援についても良い効果が生まれるのではないかと感じています。茶道の教養を学ぶことができれば、陳腐化しない価値をまた一つ身につけることができるのかもしれません。流行のネタはもちろんしっかりと押さえつつも、地に足を着けた中小企業支援を行っていきたいと考えています。
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