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コラム

コピペDMに必要な工夫

たまに営業の連絡をもらうことがあります。「新しいサービスを始めました」「季節の新商品を発売します」といった感じ。どのような点に注意すれば効果を得やすいのか考えてみます。

心に刺さらなかったある経営者からのメッセージ

先日のこと。それほど親しくないけれど、でもFacebookで繋がっている経営者から2年ぶりに連絡をもらいました。内容は営業。

「ご無沙汰しております! 実は数日前より新たな事業を立ち上げました。(URL)よろしければご覧ください!」といったことが書かれていました。

せっかく個別にメッセージを送っているのに、この文面ではほとんど反応がないことでしょう。理由は大きく2つあると思います。

まず、宛名が書かれていないこと。明らかにコピペして多数に送っているとわかってしまうので、受け手に好印象を与えることはできません。一人ずつ名前を入力する手間を省きたかったのでしょうが、その代償は大きなものとなります。私もセミナーなどの案内をすることがありますが、必ず名前は冒頭に掲げるように心がけています。

二つ目が一方通行の案内だけなので、双方向のやり取りを望んでいないような印象を与えることです。受け手の近況を聞こうともせず、新事業を立ち上げたという発信側の情報を伝えているだけ。これでは不特定多数に発信しているただのDMと同じで、何かを強要しようとする押し付けがましさばかりを感じてしまいます。

私が何か案内を個別に発信する場合は必ず一言添えるようにしています。「○○社長が先日話していた○○に関連するセミナーです」だとか「先日は○○でお会いできて嬉しかったです」といった感じ。個別のメッセージを加えることで、セールス色を抑えることが可能になります。もちろん心の底からその人にメッセージを送りたいと考えることが必要。受け手は文面からその心を読み取ってくれると信じています。

反応率40%の個別メッセージ

(北村森のヒットの森) 3600万円の裏に千人メッセージ
日本経済新聞 電子版 2023/11/24
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO76339240S3A121C2HF0A00/

ウェブマーケティング会社がある商品を発売しようとした際に徹底したドブ板営業を行ったそう。

記事では

「私がSNSでつながっている人たちに、個別メッセージをつづって送ったんです」。あえて一斉送信の形を取らないメッセージの数は、のべ千件以上。わざわざ1通ずつ文面を変えてですよ。すると、約40%の人から「ひさしぶり!」といった返信が届いたそう。

と紹介されています。

郵送DMを不特定多数に送った場合の反応率は0.1%程度でしょう。この記事の事例では反応率が40%というので驚異的な数字です。それだけ真摯に手間を掛けていることが受け手に伝わったからこそ、平均の400倍もの何らかの返信が届いたのに違いありません。

手間を掛けずに選んでもらおうという浅い考えを、情報の受け手は敏感に察知します。自分の身に置き換えれば誰もが共感してくれることなのですが、いざ自分が何かを提供しようとする側に立つと、不思議なことにセールス色満載の一方通行のDMを発信してしまうのです。

スマホを操作する女性の手元

コピペDMにもそれなりの手間を掛けましょう

商売に奇策なし

中小企業支援に携わっていると、補助金ばかりに目が眩んでしまう経営者や、既存事業の売り上げ減少を呆然と見守っている経営者と出会うことがあります。いずれの場合も必要なのはシンプルに「営業」。

商品とサービスを磨き上げた上で(これがすべての大前提)、見込み客と向き合う必要があります。ウェブサイトを用意したからといってそれだけで売り上げが増えることはありませんし、商品のパッケージやロゴをおしゃれにしただけで消費者に選ばれることはないのです。SNSを駆使したからといってそれだけで客が殺到することもありません。

また営業と一口に言っても魔法の杖や勝利の方程式のようなものは存在しません。「これだけをすれば良い」だとか、掛けるべき手間を掛けなくて済むような方法はないのです。商売に奇策無しとは良く言ったもので、地に足がついていない事業者には噛みしめてもらいたい言葉だと思っています。

LINEやメッセンジャーなどで顧客と繋がることが容易になったのは間違いありません。ただしそれらはあくまでコミュニケーションの手段。相手に選んでもらおうとするのであれば、受け手の気持ちを想像して発信しましょう。


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