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コラム

士業マーケティング これまで売ってこなかったけど売れるもの

顧問先の経営者と議論するとき、切り口の一つとして「これまで売ってこなかったけど売れるもの」を探すことがあります。

家業での経験

家業の代表取締役を務めていた時、茶わんを売ろう売ろうとばかり考えているのに結果が伴わない日が続いていました。新規出店をしたり、百貨店でバーゲンをしたり。しかし根本的な解決になるような浮上策は掴めず、資金繰りは徐々に悪化していく一方でした。

ある時、取り組んだのがオリジナルブレンド米を販売すること。茶わんを売る前に、茶わんによそうご飯、つまり食べ物で独自の世界観を消費者に伝えようと考えたのです。ヒントになったのが商工会議所でもらった資料。ある米穀店が飲食店向けにオリジナルブレンド米を販売していると書いてあったのを読み、自分の会社でも試してみようと思いつきました。

結果は好調で、さらに発展させてこだわりの台所用品などと組み合わせた企画に挑戦することに。百貨店バイヤーの反応もよく、業績を回復させる方向性を見つけたように感じたのですが、時すでに遅く、まもなく投資ファンドへ事業譲渡せざるを得なくなってしまいました。今でも方向性は間違っていなかったと悔しい思いをしています。その後、ファンドが設立した新会社では私のアイデアは取り上げられることはなかったようです。せっかくヒントを残すことができたのに残念です。

少し話はそれましたが、この時の経験から「これまで売ってこなかったけど売れるもの」を探す視点を大事にするようになりました。自分たちの「当たり前」に捉われずに思考することで、商売の幅を広げることができると考えています。

士業が売れるもの

士業が独立開業して売上を作るには何らかの商品・サービスを用意しなくてはなりません。闇雲に事業を始めてしまうと時間を切り売りするような仕事をしてしまいがち。

例えば社会保険労務士であれば給与計算業務などがその典型ではないでしょうか。給与計算業務を否定するつもりはありませんが、締め切りが決まっていて間違いも許されない複雑な業務の割には低単価。果たして積極的に取り組むべき業務なのかと考えると私は疑問を感じています。

士業が売れるものを真っさらな頭で考えると、私は「コンテンツ」には可能性があると思います。顧問先とのコミュニティを作るだけでなく、そこにコンテンツを掛け合わせれば独自の立ち位置を築くことが可能になります。

例えば顧問先の経営者を集めて茶道体験をして経営のヒントを探るとか。知識や手続き業務だけを売り物にするのではなく独自のコンテンツを用意できれば時間を切り売りせずとも売上を作ることは可能です。

「失敗したらみっともない」とか「変わったことをしたら同業者に笑われるかも」といったことを考えてはいけません。何も考えずに工夫を怠ることのほうが恥ずべきことで、士業事務所の経営も商売である以上、しなやかに変わり続ける必要があります。変化を恐れない者だけが生き残るのです。

海外のマーケットの様子

何を売るのか売らないのかは自分で考えて決めましょう

売らないものを決める

私はいわゆる定型業務は提供していません。競合と簡単に単価を比較されてしまうような業務に経営の力点を置きたくないのです。また定型業務を抱えてしまうと毎月の締め切りに追われることになります。そうした働き方を目指すのであれば問題ないのでしょうが、私には窮屈に感じられます。

また補助金申請の支援も積極的に行っていません。事業者の足腰を強くするためであれば補助金を使うのも選択肢の一つでしょうが、補助金をボーナスか何かと勘違いしている経営者があまりに多いと感じるからです。安直に補助金をもらおうと考える経営者とは感性が合わないのです。

こうしてやらないことを決めると、感性の合わない顧客に振り回されなくなり、時間に追われる仕事を避けられるようになります。独立開業の目的の一つである、自分らしく働くことが実現します。

提供しないサービス、つまり売らないものを決めるのは勇気がいることです。ただ、「何でもやります」は何にもできないのと同じ。全国に数万人の競合がいる士業だからこそ独自の立ち位置作りにはこだわっていきたいものです。みんなが売っていないものを売る、みんなが売っているものをあえて売らない。士業が独自の立ち位置を築こうとするために必要な視点です。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

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