採用ができないとボヤいている地方中小企業に伝えていること
地方中小企業の経営者と話していて多いのが人手不足の問題。特に採用が困難であると訴える人が多いです。ところが採用の実態を聞き出すと、企業側に工夫の余地があることがほとんど。安直に人手不足だから採用できないなどと思考を放棄することなく、打つべき手を打った上で採用活動に取り組んでもらいたいと思います。
そもそもの賃金が適切か
ある会社の経営者は事務職が採用できないと困っていました。ハローワークに求人を出してもまったく無反応。通常業務も満足に行えない状況になりつつあると言います。
その経営者に求人票に記載している賃金を尋ねてみたところ「最低賃金プラス100円」で設定しているとのこと。これでは応募に結びつくわけがありません。その経営者からしたら最低賃金に100円をプラスしてやっているという発想のようですが、地方中小企業の事務にわざわざ手を上げたくなる賃金ではありません。そのことを冷静に指摘したところ、経営者は押し黙ってしまいました。
従業員を採用したいのであれば、適切な賃金を提示することが最初の一歩となります。賃金規定に定めているから、他の従業員とのバランスがあるからといった事情があるのはわかりますが、求職者の立場に立ってみれば内部事情は関係ないことがわかるはず。直近の社会状況を踏まえた、適切な賃金を提示できているか冷静に検討してみましょう。
私がアドバイスした3つのこと
ある会社はウェブサイトから求人をしようと考えていて、事細かに業務内容や求める人物像を提示しています。ところがこの会社もまったく反応がないとのこと。
私がアドバイスしたのは3点。
一つ目は「賃金は弊社規定により支給します」という文言を改めてもらうこと。具体的な賃金がわからないのでは応募しようがありません。応募が殺到しているような状況であればこのように記載しても問題ないのでしょうが、今時はありえません。従事する業務に対していくらの賃金が支払われるのかを明示するのは最低限、必要なことです。何らかの事情でずばり提示できなかったとしても、モデル賃金を提示するなど工夫はできるはずです。
二つ目は「求める人物像」を削除してもらうこと。「素直で正直な人」「言われたことだけで満足せずに、自分から率先して仕事に取り組める人」といった内容です。経営者なりの考えがあって従業員の人物像をイメージしているのでしょうが、応募すらない状況で人物像もなにもありません。ましてや今時は人物と業務の結果生まれる成果に関係があるかどうかも怪しいところ。表面上、いくらでも「求める人物像」を装うことは可能なわけで、求人ページにわざわざ記載したところで実効性があるとは思えません。本気でミスマッチを防ぎたいのであれば、当初は有期雇用で採用し、1年間じっくりと時間をかけて見極めればよいでしょう。1年間で見極められるかどうかも怪しいですが。
三つ目は視覚で伝える努力をすること。箇条書きの求人情報を書くだけでは求職者の気をそそることは困難。職場や従業員が働く様子をインタビュー記事のような形式で画像と共に掲載する手間を掛けましょう。我が身に置き換えればわかると思いますが、まったく縁のない会社に応募しようとする時、その会社の様子を画像や動画で確かめたくなりませんか?という話です。画像1枚を用意する手間すら惜しむ会社に、履歴書を送る人など現れません。
会社の都合を押し付けていてはいつまで経っても選ばれない
人手不足と言われる現在の状況で採用活動を成功させたいと考えるのであれば、求職者の思考を想像して取り組むことが求められます。「賃金が明示されていないような会社」「経営者の言うことを聞くロボットを求めているような会社」「どんな会社なのかがわかる画像や動画を用意していない会社」というのは、そもそも検討すらしてもらえないという現実を理解しましょう。
さらに「賃金は安ければ安いほどいい」という発想もいい加減捨て去りましょう。労働に対して適切な賃金を支払うのは当然として、どれだけ上積みできるかが問われる時代です。となれば賃金を上積みするための原資を生み出す必要があり、昨日と同じ業務をしているだけでは不可能。変化を恐れずにイノベーションに取り組む覚悟が必要です。
会社の都合に合わせて働かせる時代から、従業員の夢を実現する会社が選ばれる時代に移り変わっています。雇用はリスクではありませんが、リスクにもなり得るもの。時代の変化を受け入れて、発生し得るリスクも認識した上で採用活動に取り組みましょう。
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