地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

誰でもできるけど、誰もやらないことをどこまでやれるか

今日は連休の中日。最近考えていることを着地を考えずにつらつらと書いてみます。

情報発信を継続するということ

中小企業支援に携わっていると、情報発信の必要性は理解しつつもほとんどの事業者が手を着けられていないことに気付きます。理由はさまざまで、「パソコンが苦手だから」「特に必要性を感じないから」「以前に始めたことがあるがなんとなく継続できなかった」といった声をよく聞きます。

ただ、見込客に知ってもらわないことには新しい売上を作ることは不可能。既存顧客はいつか必ず離れて行ってしまうわけで、その日が訪れる前に見込客を顧客に育て上げておく必要があります。

以前にある企業の市場調査を行ったことがあります。調査会社に委託して顧客層を分析してもらったところ、最も層の厚い顧客は「50歳台後半の女性」ということがわかりました。

ここで重要になるのが取得したデータを踏まえて次の手を考えること。50歳台後半の女性に向けて新商品を開発するのは誰もが思いつくことで、私はつまらない取り組みだと思います。経営者であるならば、あえてストライクゾーンから外れた40歳台後半の女性に向けて、自社の認知度を高めるような取り組みをしたいところ。将来の顧客とするために今から見込客との関係性を構築しようと試みて欲しいのです。言い換えれば、次の10年に向けた種まきを実施するのです。

マーケティングの手段は様々ですが、中でも情報発信は典型的な「誰でもできるけど、誰もやらないこと」です。地に足を着けた情報発信すらできていないのに、その他の取り組みを行ったところで効果など期待できません。できることを着実にやりきっていくことが活路を拓くことに繋がります。

アトツギという言葉に違和感を覚える

行政などが中小企業の「アトツギ」を支援するのが流行っているようです。中には「アトツギが新商品・サービスを開発し、クラウドファンディングでどれだけ資金を集められるかを競う」というのを支援と称している活動もあるよう。ずいぶんと刹那的な取り組みを行っているのだなというのが私の印象で、果たしてどれだけ経営者の血となり肉となる経験となるのかは率直に言って疑問を抱いています。

アトツギとカタカナで表記するとそれだけでそれっぽい響きになりますが、実態は地方中小企業の後継経営者のこと。その彼ら彼女たちに何よりも必要なのは経営に逃げずに取り組む覚悟でしょう。人気投票のようなクラウドファンディングに取り組むことが悪いとは思いませんが、優先順位はかなり低いはず。国内にある法人の2/3が赤字であるのが実態で、SNSなどで伝わってくるようなきらびやかな状況とは無縁であるのが中小企業経営です。アトツギなどと持ち上げてちやほやする前に、事業承継と経営への覚悟を固められるような体験を提供するのが真のアトツギ支援でしょう。

私がかつての家業を事業承継したタイミングは、すでに創業家の信用が失われつつある状況でした。父が代表取締役社長でしたが銀行からは交代を求められる始末。それまで部下を1人も持ったことのない私が、管理職の経験も経ずに経営の最終責任者となったのです。その時考えていたのは「自分以外に決着を付けられる者はいない」ということ。この先どうなるにせよ、現在の状況下で逃げずに立ち向かえる(立ち向かわざる得ない)経営者は私しかいないと腹を括ったのです。

その5年後に家業を投資ファンドに事業譲渡したのはこれまでにもお伝えした通り。結末に対する批判は甘んじて受け入れていますが、貧乏くじを逃げずに引いて、最後まで多くの人に支えられながら取り組めたことを少し誇りに思っています。

地方中小企業の経営なんて誰でもできることです。

草むしりしたあとのゴミ

タバコの吸い殻が多くて呆れました

ゴミ拾いをして考えた

先日、地域のゴミ拾い活動に参加しました。生まれて初めてのゴミ拾いは想像以上に刺激的でした。普通に生活していれば多少のゴミは目にするものの、自分がわざわざ拾うほどのものではないと考えてしまいがちです。しかし実際に1時間のゴミ拾い活動に参加すると、大小さまざまなゴミに直面することに。まさにゴミ拾いは「誰でもできるけど、誰もやらないこと」だったのだと気付きました。

ピリカというアプリがあります。世界最大級のごみ拾い&社会貢献アプリだそうで、ゴミを拾って画像を共有するだけ。このシンプルなアプリはすごいなと思っていて、極限まで無駄を削ぎ落とした事業のアイデアは、地方中小企業が新規事業を検討する際の参考になると多くの人にお伝えしています。

特に深く考えることもなく参加したゴミ拾い活動でも、何かを考えるきっかけになります。地方中小企業の経営者であるならば社内のことだけに意識を囚われるのでなく、積極的に外の世界にアンテナを張りたいもの。名のある元経営者が毎日ゴミ拾いをしていたという記事を読んだことがありますが、5S活動のためだけにゴミ拾いをしていたのではないと今ならわかります。「誰でもできるけど、誰もやらないこと」に従事し、経営者としての勘がにぶらないようにしていたのではないかと思うのです。


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