凡事徹底、商売に奇策なし
以前にも紹介している西日本新聞に連載していた記事。タイトルはデスクにお任せしていて、私が納品した原稿を読んでそれらしいタイトルを付けてくれていました。この回のタイトルは「凡事徹底、商売に奇策なし」。私が気に入っているタイトルの一つです。
西日本新聞に寄稿した中小企業支援に関するコラムです。 【商いのヒント エヌビズの支援事例から23】 「直鞍ビジネス支援センター」(エヌビズ)の壁一面に貼られた新聞や雑誌の記事。これらは何らかの形で当センターが支援した案件が取りあげられたものです。広告宣伝費のほとんど無い地方の中小…
商売に必要な凡事徹底について考えてみます。
補助金よりも営業
ある経営者とお話ししたときのこと。補助金をもらうことに頭がいっぱいになってしまっていて、その後の事業をどう進めるかはまったくイメージできていない様子。私が「補助金をもらって〇〇しただけでは売上は増えませんよ。地に足を付けた営業活動をして初めて売上が発生するのですよ」とお伝えしてもピンと来ていません。この会社には地域企業とのネットワーク作りと、過去に一定の実績を生み出しているポスティングをするように促しているのですが、なかなか具体的な行動に結びつきません。
補助金に目が眩んでしまう事業者に多いのが、募集要領をきちんと読み込めていないこと。受給額や補助率ばかりに目が行っていて、肝心の諸条件を把握できていないことがほとんど。募集要領にはっきりと書いてあるようなことを第三者の私に尋ねてくる事業者もいて、そうした事業者にはまずは自分でリサーチするように突き放しています。意地悪なようですが調べればわかることを自分で調べられないようでは、そもそも補助金を受給する資格はないのです。
補助金が受給できたところで効果は一時的なもので、その後に事業が続いていく限り、営業活動は不可避です。補助金が悪いとはまったく思っていなくて、補助金に我を失ってしまう経営者が悪いのです。補助金はあくまで補助。それなのに受給できさえすればすべてが解決すると勘違いしてしまうのが不思議です。
情報発信をして知ってもらう
売上を増やそうとするならば、見込客に知ってもらうための努力は不可欠。認知されることなくして、見込客の選択肢となることはあり得ません。幸い、知ってもらうための情報発信をするためにはスマホ1台あればOK。動画、音声、テキストによる情報発信はスマホから行うことが可能です。
ただし、ほとんどの事業者は満足な情報発信を実施できていません。そもそも最初の一歩を踏み出せていない、つまり始められていない事業者ばかりですし、せっかく手を付けても継続できないことがほとんど。これでは見込客に知ってもらうことは実現せず、既存顧客と細々とジリ貧の商売を続けるしかありません。
ほとんどの事業者が満足な情報発信をできていないからこそ、着手できればそれだけで競合に差をつけることが可能です。準備にやたらと時間を掛けたり、始めてもいないのに失敗を恐れたり。躊躇をしている余裕があるくらいなら、さっさと実行すれば良いのです。一歩を踏み出さない限りは成果を手にすることはできないのですから。上手に情報発信しているような事業者も必ず最初の一歩を踏み出したからこそ今があるのです。
ある関与先はDMからの受注率が1%であるとのこと。私からしたらかなりの高い数字に思われるのですが、社内でその強みを認識できておらず、これまで情報発信は散発的なものに留まっていました。改めて受注率の高さを共有し、今後は情報発信を強化していくことになっています。
知ってもらわないことには商売のご縁は広がりません。社内の情報を整理整頓してコンテンツ化すれば、スマホからすぐにでも発信可能。まずは始めて、そして継続したいものです。
商売をギャンブルにしない
商売とギャンブルがまったくの別物であるとは、私が改めて説明するまでもないことです。ただ、事業の当事者になるとなぜか商売をギャンブルにしてしまう人が続出します。見込客がいないのに新商品の在庫を山のように抱えてしまったり、地域と関係性を築けていないのに集客が必要なイベントを企画してしまったり。私から見ればこうした事例は商売ではなくてギャンブルです。
一か八かの無謀な賭けをして損失を負うのは経営者です。少しでも失敗の確率を減らすようにするのは当たり前のこと。予約販売など先回り営業をすれば無駄な在庫をしなくて済みますし、顧客名簿を作ってからイベントを企画すれば集客に苦労することもありません。地に足を付けた営業をすっ飛ばして、成果ばかりを手に入れようとするのはなぜでしょうか。
成功している事業者は地に足を付けた営業に必ず取り組んでいます。商売に魔法の杖や勝利の方程式は存在しません。まさに凡事徹底、なのです。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事