顧問と社外取締役の違い
関与先とは何らかの形で契約させてもらっています。いずれも共通するのは定期的に訪問することに対する対価ではなく、「岡田と繋がる」ことに対して対価をいただいているということ。基本的に月1回訪問していますが、訪問しないことがあっても報酬は発生します。何かあった時に(何にも無くても)岡田と繋がることができるということに価値を認めてもらっているのです。
顧問
顧問契約は私の場合、比較的緩やかな内容です。月1回の訪問を基本に、決められた時間で経営者と対話します。短くて1時間、長いと丸1日。経営者とお話しするだけでなく、時には営業会議などに出席することも。といっても、財務の資料をベースに顔をつきあわせることなんて(ほとんど)なくて、事業の状況を伺いながら持続可能な経営を実現するための方策を探ります。
ある顧問先では後継経営者と新規事業の開発を続けています。30年以上続く主力事業は今でも底堅く稼いでくれていますが、この先数十年を見据えた時にいつまでもしがみついていられないのは明らか。そのことを指摘した上で、新規事業に取り組み始めました。後継経営者も現在の事業にどのように関わるべきか悩んでいたようで、新規事業にかなりのエネルギーを注ぎ込んでいます。
現在の主力事業も最初は新規事業であったはずで、事業を存続させようと考えるのであれば事業の成長のバトンを繫ぎ続ける必要があります。ただし、その当たり前も社内で日々の業務に追われていると見過ごしてしまいがち。いつまでも一つの事業が稼ぎ続けてくれるように錯覚してしまうのです。
既存事業の寿命が尽きる前に、新しい事業の種を蒔いておくのは経営の役割。特に後継経営者にとっては将来を左右しかねない重要事です。
社外取締役
社外取締役は顧問と違って、取締役会メンバーとして経営に関与します。客観的な立場から業務執行を監督するのが役割。時には経営者へ耳に痛いであろう話をすることもありますし、プロパー取締役との意見の相違を恐れずに見解を述べることもあります。
ある取締役会では月次決算の遅れが問題になりつつありました。現在の会計事務所を何とか継続利用しようとするプロパー取締役に対し、私は「過去からの付き合いも大事だが、何より大事な時間を無駄にしている現会計事務所からできるだけ早期に変更すべき」と強く意見しました。経営にスピードが求められるのであれば、月次決算はそのベースとなるもの。時間の浪費を見逃すわけにはいかなかったのです。
また別の会社では代表権の取り扱いが議論になりました。先代と後継経営者の間でどのように役割分担をするかについて、元後継経営者としてアドバイスさせてもらいました。事業承継を成功させるには後継経営者を社長にしただけで終わることはなく、その後の経営体制を整えることも必要なのです。プロパー取締役が議論に入りにくいテーマも、社外取締役であれば率直な意見を述べやすいもの。その会社の事業承継は今のところ問題なく進んでいるようです。
スポット業務は手がけていない理由
単発の相談対応は基本的にお受けしていません。刹那的な関与をしたくないので、継続して対話できる会社にのみ関与させてもらっています。「用がある時だけお話ししたい」というお申し出は、一律、丁寧にお断りしているのです。
最も長い会社では6年以上、関与しています。その間、数ヶ月やり取りが発生しないこともあれば、毎日のようにやり取りをすることもありました。経営は定型的なものではなく、その時々によって変化するものです。継続して関与する約束ができているからこそ、中長期的な目線でアドバイスをすることが可能になります。
もちろん契約前の相談は無料で対応しています。まずお互いにミスマッチが生じないかを見極めなければいけないので、最初から顧問契約してくださいなどと乱暴なことは言いません。何回か会ってお互いを見極める必要があると考えています。
今日これから伺うのも同じく6年以上関わっている会社。社長と定期的に対話を続けています。対話と言っても私が何かをレクチャーするような関係ではなくて、どちらかというと経営者や幹部の話すことについて聞き役に回っているイメージ。社外の人間を介在させることで自分たちの思考を整えようとしているのでしょう。私を有意義に使ってくれている会社の一つです。
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