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コラム

そもそもの事業性を見抜くためにどこに着目するか

中小企業支援に携わっていると様々な事業者との出会いがあります。売上アップを実現するには勝利の方程式や魔法の杖は存在しないわけで、そもそもの事業性を見極めるところからすべてが始まります。事業性を見抜くために私がどんなことに着目しているかを書いてみます。

ひと言で事業内容を説明できるか?

事業内容をひと言で説明できない事業はその時点で怪しいです。「事業内容をひと言で説明してください」とお願いしたときに、過去の事業ばかりを説明しようとしたり、カタカナ語を多用して誤魔化したりするような事業者がなんと多いことか。優れた可能性を持つ事業は端的な言葉で表現できるもの。

私がかつての家業を表現するのに使っているのは「京都の茶わん屋」という言葉。業績が窮境に陥って外部の資本を入れようと動き始めたころから使い始めていました。自社の事業をシンプルな言葉で伝えなければいけないと考えたからです。「陶磁器卸小売業で全国の百貨店と取引があり、自社の法人外商部門ではノベルティ商品を取り扱っています。仕入先は全国に約60社あり、メーカー機能を持たない代わりに企画・デザインした商品を仕入先に作ってもらっています」などとくどくどと説明しても事業の魅力は理解してもらえません。短く、かつ鋭い言葉で事業内容を説明しなければならないのです。

ある創業希望者がやってきたときのこと。なぜか背伸びをしたがる人でカタカナ語ばかりを使っています。壮大な夢らしきものは語ってくれるのですが、具体的な事業について触れることはありません。そもそも、私に何を相談にしに来たかも自分の口からは話せない様子。シンプルな言葉で思いを伝えられないのであれば、その時点で創業は失敗したも同然です。もちろん丁寧にお相手し、やんわりとお引き取りいただきました。

競合優位性を端的に示せるか

独自の立ち位置を築けていない事業は競争にさらされてしまいます。事業性を評価するためには競合優位性を示してもらわなければいけません。競合と何が違うのか、どう優れているのか、なぜ真似することができないのか。事業内容を説明するのと同じく、競合優位性を説明するのにも難しい言葉は必要ではないはずで、優れた競合優位性を築けているのであれば端的な言葉で説明できるはずです。

ある経営者とお話ししたときのこと。最近、新聞などでよく目にする新しい機器の開発・製造を目指している企業です。私が「競合と比べて強みはどこにあるのですか?」と質問しても明確な返答はありませんでした。残念なことです。自分だけで事業を営んでいる分にはまったく問題ありませんが、社外から支援を得ようとするのであれば競合優位性の有無は重要なことです。明確に答えられない時点で、多くの競合に埋もれてしまう未来が見えるようでした。

またある別の会社についてお話ししましょう。海外企業がすべての主導権を握っているような業界で、日本発の独自技術によって革新をもたらそうと奮闘されています。私はこの独自技術の説明を受けたうえで、外部に紹介する際には「〇〇業界で世界を変え得る技術を保有しています」と伝えるようにしています。技術の詳細を私が理解できるはずもなく、競合優位性を示すには「世界を変え得る」という言葉がぴったりだと思ったのです。

事業性とはいいかえれば、事業の強みとも表現できます。自社の強みをわかりやすい言葉で説明できないようでは、誰からも応援されることはありません。競合になぜ打ち勝つことができるのか、見込客はなぜ競合でなく自社を選ぶことになるのか、自社はなぜ存続することができるのか。自社の真の強みを明確に示すことができるのであれば、事業性が評価されることでしょう。

展望台にある双眼鏡

事業性を見抜くために何を見ているか

経営者の人間性

数字やスペックなどから事業性を評価する以前に、経営者の人間性が問われます。応援してもらおうと考えるのであれば、それにふさわしい人物でなければならないのです。

人はまず外見で判断されるという言葉は重いものです。誰かと会うときに不快感を抱かせない装いを選ぶことは最低限のマナー。ましてや事業性を評価されるような立場なのであれば、相手を意識した見せ方をすることはプレゼンのテクニック以前に意識すべきことでしょう。

私は家業の代表取締役を務めていた当時に金融機関を訪問する際は、紺無地のスーツにネクタイを着けていました。ワイシャツは無地の白。相手に合わせて服装を選んでいたのです。普段はオフィスカジュアルで過ごしていましたが、業績が窮境に陥っている家業を支援してくれている金融機関を訪問するのですから、相手から見て好ましいと思われるであろう服装を選んでいたのです。

また見た目ばかりでなく発する言葉も重要。よく見せようと背伸びしていたり、大げさな表現を多用したりするのはうさん臭さを際立たせるだけ。自分の言葉で自分の事業を説明できるかどうか。関係性を築くことができるような素直な心を持っているかどうか。事業性を評価するためには経営者の人間性も問われるのです。


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