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コラム

在庫の山を作る前に必要な「先回り営業」

先日、あるプロジェクトについて相談に乗って欲しいと声を掛けられました。事業化を検討しているテーマについて、今後どのように行動すべきかわからなくなっているそう。よくある相談内容です。この先どのような案件になるかはわかりませんが、何をすべきかと問われれば「先回り営業をしましょう」とお答えすることが多いです。

先回り営業で在庫リスクを減らす

新しい事業を思いついた人にありがちなのが、大したリサーチをせずに自分の思いだけで突っ走ってしまうこと。在庫の山を築いてから売ろうとした時にはすでに手遅れで、思い描いていたように販売することができず途方に暮れることになります。

「新しい事業を思いついた!」「この後、何をすればよいでしょうか?」と相談に来る人には「先に売り先を見つけてから生産に着手しましょう」とアドバイスすることが多いです。つまり商品・サービスを用意する前に先回り営業してくださいと提案しているのです。

売れるかどうかわからないものを抱え込んでから営業するのではなく、先に売り先を確保しておけば在庫リスクを避けることができます。何より顧客の声を商品化に反映できるので、事業者の思い込みだけで作ってしまったピントのずれた商品を山積みにしなくて済みます。

ドブ板営業が何よりも手堅い

ある事業者はクラウドファンディングで衣料品のプロジェクトを手掛けました。といってもギャンブルのような立ち上げ方はせずに、プロジェクト開始前にドブ板営業を徹底。生産に着手する前に初期ロット数を売りさばいてしまっていました。大成功です。

ただ残念だったのは、2回目のプロジェクトでは1回目の成功に味を占めて先に商品を生産してしまい、在庫の山を抱えることになってしまったこと。1回目で実施した先回り営業を怠ったがために、大失敗してしまったのです。

クラウドファンディング業者の説明を聞いたことがあるのですが、プロジェクトを成功させることに必要なのはまさにドブ板営業だそう。顔も見たこともない人からの資金を当てにするのではなく、まずは自分の周りの人々にどれだけ先回り営業するかが成否を左右するとのこと。さらっと説明していましたが、ほとんどの人がこの重要性を理解できていないようでした。

「クラウドファンディングをすれば多くの人に共感してもらえる」「クラウドファンディングの説明文を詳しく書けば会ったこともない人が支援をしてくれる」というのは幻想でしかないのです。

ドブ板営業が何よりも手堅いというのはクラウドファンディングに限った話ではありません。新商品を販売しようとするのであれば、在庫の山を築いてから販売するのではなく、先に注文を取ってから生産に取りかかれば良いのです。受注生産方式にするのも、顧客名簿を元に一人一人の意向を確認してから生産するのも同じこと。失敗の確率を少しでも減らすために、どれだけ汗を流せるかが問われます。

積み重ねられた段ボール箱

不良在庫に苦しんだ経験があるので先回り営業を強く勧めています

営業をしようとしない事業者に付ける薬はない

中小企業支援家をしていると不思議な事業者に出会うことがあります。私と話しさえすれば売上を増やすための「魔法の杖」を得られると思っているような人です。そんなものが存在するわけもなく、私が提供しているのは「知恵とアイデア」だけです。

知恵とアイデアを元に具体的な行動をするかどうかは事業者次第。できない理由ばかり並べ立てる人や誰かに行動してもらうことばかりを考えている人は、いつまで経っても成果という果実を得られることはありません。反対に、さっさと行動して次から次へと打ち手を繰り出し続ける人は確実に成果を生み出しています。

この場合、行動とはすなわち営業のこと。自ら見込客リストを作り、見込客との距離感を詰めるような仕掛けを用意し、自然と商品やサービスを選んでもらえるように立ち回るのが営業。営業なくして売上が発生することはあり得ません。完成した商品やサービスを広げて見せるだけでは、見込客の心をそそることはないのです。

商売を成功させるには、事業計画をこねくり回す前に営業してしまうに限ります。結果を出す経営者はさっさと行動するメリットを何よりも理解しています。先回り営業をして先に受注しておけば、少なくとも大外れになることはありません。ドブ板営業を果敢に実行し、失敗の可能性を減らすことで成長への第一歩を踏み出すことが可能になります。


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