士業マーケティング 資格取得(リスキリング)後のことを考えないといけない
リスキリングという言葉をよく見かけます。「新たな知識の習得による付加価値の向上」が本質だそう。資格を取得して社会人としての価値を高めようと考えている人もいることでしょう。先日の日本経済新聞にも資格に関する記事がありました。
資格・学び直し調査(中) 新資格はAI関連が人気
日本経済新聞 電子版 2023/9/7
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74213830W3A900C2XS9000/
ただ、リスキリングが流行っている中で見落とされている論点があると思っていて、それはリスキリングした後のこと。向上した付加価値をどう市場に売っていくかという視点を誰もが見落としているようです。
資格を取得するのがゴールではない
社会保険労務士の資格を持っているので士業界隈のことはなんとなく気になっています。「士業 廃業」などと検索すると、3年以内の廃業率がいくらだといった情報が目につきます。総じて、士業になったからといって全員が成功しているわけではなく、開業前の想定よりも事務所経営に苦労している人が多い印象です。
私も受験経験があるから想像できるのですが、試験に合格して資格を取得できさえすればすべてがうまくいくように妄想しがちです。実際には試験に合格した瞬間に士業事務所経営がスタートするわけで、経営者として第一歩を踏み出さなければいけません。それまでの試験勉強モードから経営モードに頭を切り替えなければいけないわけです。
この頭の切り替えがうまくできないと、つまり、いつまでも試験勉強モードのままでいてしまうと、他の資格試験に手を出して勉強し続けたり、実務で使うあてもないのにマニアックな知識を得ようとしたり、同じくセミナーを渡り歩いたりするような行動をしてしまいます。士業事務所の経営者になったからには営業活動に取り組まなければならないのに、誤った行動に資金と時間を浪費してしまうのです。
資格試験はあくまで経営のスタート位置に立てるかどうかをテストされるだけ。経営者として歩み出す資格を得たのであれば、事業の持続可能性を高めるための行動をし続ける必要があります。
資格取得(リスキリング)後に取り組むべきは知ってもらうための情報発信
試験に合格した後は「知ってもらうため」の情報発信が必要です。特に士業は無形の商品・サービスを取り扱うことになるので、士業自身の個性を見込客に理解してもらうことが不可欠。自分の真の強みを可視化し、情報発信して見込客に届ける必要があるのです。
士業のウェブサイトを眺めていると、この情報発信をできていない人がほとんど。さすがにウェブサイトは用意している人が多いですが、業者の用意したテンプレートにそれっぽい画像を背景にし、事務所情報だけを記載しているという人がなんと多いことか。ブログ機能があったとしても法改正や補助金情報のみで、士業であればだれでも発信できる内容です。
士業が見込客に選ばれるために必要な材料を提供しないと、距離の近さと料金の安さで選ばれることになります。特に、料金の安さだけを気にしている客は、競合が1円でも安いと簡単に乗り換えてしまいます。事務所経営の持続可能性を高めるためにも、距離と料金で選ばれなくとも、士業自身の個性に共感して選ばれるようにするのが独自の立ち位置を築くことに繋がります。
情報発信の媒体はさまざま
情報発信の媒体はいろいろあります。ウェブサイト、ブログ、ポッドキャスト、動画、SNS。スマホさえあればどれもまずは簡単に始めることが可能。最初から多額の費用を掛ける必要などありません。
注意しなければならないのは、情報発信のベースを他社のプラットフォームに依存してしまうと後々困ることが多いです。無料のブログサービスを利用していたがサービス自体が終了してしまった、ウェブサイトの保守をリース契約していて好きなように手を入れられない、SNSに注力していたがアクティブユーザーが減ってきているなどといったことは実際に見聞きしたことがあります。
私の場合は情報発信のベースはこのブログ。レンタルサーバーを借り、ドメインを取得して運用しています。他社の動向によって振り回されることが少なくなるようにと選んだ形態です。
冒頭に紹介した記事などを読んでいると、資格さえ取得すればリスキリングは完了してしまうように思いがち。実際はリスキリング後に独立開業して事務所経営をおこなうところまでがセットのはず。資格取得はゴールではなくスタートです。
ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています
関連記事