最近、立て続けに銀行との付き合い方をアドバイスする機会がありました。
地方中小企業にとって銀行は頼もしいパートナー。
一方で銀行とどのように接すればよいかわからず、
過剰に身構えてしまう経営者もいます。
どんな点に留意して向き合えば良いのかを書いてみます。

事業を取り巻く状況をさらけ出す

ある創業まもない企業の経営者が
銀行から融資を受けたいと私のところへやってきました。

何を相談したかったかというと
本来の目的を隠して融資を受けられるかどうか。
融資を受けやすくするための「作文」を添削して欲しいと言うのです。
自社の良いところばかりを見せないと応援してもらえないと誤解しているようです。

事業計画書を読ませてもらうと
案の定、「こねくり回して」いるのが一目瞭然。
売上高の割にごちゃごちゃと難しそうなことを説明しようとしていて、
分かるようで分からない内容でした。
この事業計画書では融資を受けられないだろうと率直にお伝えしました。
私ですら納得できないのですから、
銀行担当者を騙せるわけがありません。

私がお勧めしたのは、事業を取り巻く状況をすべてさらけだすこと。
創業からうまく行っていること、想定外だったことを隠さずにさらけだすのです。
事業を営んでいれば様々なことが起こるもの。
良いところばかりを見せようとする必要はありません。
ありのままを伝えることが応援してもらうための第一歩です。

銀行が嫌うことの一つは取引先に嘘をつかれること。
銀行に限らず、事業を営んでいる会社であれば取引先に騙されるのは何より避けたいことでしょう。
特に銀行は信用を推し量って、
取引先を応援するかしないかを決定します。
提出された資料や経営者の言葉に嘘があれば、
当然、信用するに値する会社だとはみなされません。

冒頭の経営者はその後、事業の現況をそのまま伝えるシンプルな事業計画書に作り直しました。
その後、銀行からは無事に融資を受けられたそうで
「ストレートに状況を伝えることが不安だったが、現況を認めてもらえて良かった」
と報告がありました。

銀行の立場を考える

また別のお話です。

すでに銀行の融資を受けている経営者から
「借入金を繰り上げ返済したい」と相談を受けました。
手元の資金に余裕があるので、
借入金を早く減らしてしまいたいと言うのです。

私が説明したのは
「銀行はお金を売って商売しています」
「繰り上げ返済すると銀行の収益を奪うことになります」
「長く応援してもらいたいのなら、目先のことだけ考えて繰り上げ返済するのはお勧めしない」
といったこと。

銀行の立場を想像してみるとわかるかと思うのですが、
貸付金を予定より早く返済されてしまうと、
その分の利息を受け取れなくなってしまうのです。
当初の約束より収益が少なくなってしまうわけで
銀行にとってはおもしろくない話です。

借入金があると早く返してしまいたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、融資を受けられるのは信用がある証でもあります。
そして、取引がある間は銀行にとっては文字通り「取引先」でいることができます。

事業を存続させていく過程で資金需要はいつ発生してもおかしくないもの。
つまり、いつまた銀行に助けてもらう必要が生まれるかわからないのですから、
目先のことだけ考えて銀行との約束を破るのは考えものです。

担当者が報告書に書く材料を提供する

銀行の担当者は取引先の様子を知りたがります。
いろいろ聞かれた際にどこまで答えれば良いのか困る経営者がいますが、
私は「上司に報告する材料を欲しがっているので素直に情報提供すべき」と考えています。

報告書に書く材料を提供できれば良いので、
くどくどと専門用語を駆使して説明したり、膨大な資料を提出する必要はありません。
要点を押さえて端的に情報提供すればOKです。
言葉で説明しづらいのであれば参考資料を渡せば良いのです。

ある会社では、参画することになったプロジェクトについて、
わかりやすくまとめられた新聞記事を担当者に渡していました。
また別の会社では、売上予測の根拠となる見積書などを開示していました。
どちらも事業の状況を資料で説明できていたので、
銀行担当者はとても喜んでいたように感じます。

口頭だけでゴニョゴニョと説明しても理解を得られることはありませんし、
逆に不信感を持たれてしまうこともあります。
誤魔化そうとする意図は必ず見抜かれると思っておきましょう。

銀行へ事業の状況を説明する機会が発生したら、
可能であれば参考資料を用意して、
端的に状況を把握してもらえるように努めましょう。

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