地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

会社を成長させ続けるのが経営者の役目

中小企業支援に携わっていると、関与先ではなくても様々な経営者とお話しする機会があります。経営者の役割の一つが会社を存続させること。どのような思考の落とし穴に気をつければ良いのかを書いてみます。

経営者が現状維持バイアスに陥ると手に負えない

現状維持バイアスとは「知らないことや経験したことがないことを受け入れたくない」という心理的傾向のことだそう。

私が経験した現状維持バイアスをいくつか紹介しましょう。

まず一つ目は家業に関するもの。

京都の四条通りに本社ビルを保有していましたが、業績が悪化し始めても特に手を付けずに保有していました。さっさと売却していればその後の展開も変わり得たのでしょうが、「創業の地を売るなんてとんでもない」「最後の一人になっても本店を守る」などと経営も古参従業員も現状維持バイアスに陥ってしまい、ようやく私が代表取締役の時に売却をした際には時すでに遅し。不本意な条件での売却を余儀なくされてしまいました。

もう一つはある経営者の行動に関するもの。

創業当初はメディアに取り上げられるなどしたようですが、いつまで経っても営業活動に注力することはなく、気づいたら資本金と追加された資金をほぼすべて失ってしまいました。私からすれば廃業して再起を図るのが望ましいように思えるのですが、経営者は「廃業するなんてあり得ない」「補助金をもらえば何とかなる」「行政の担当者に会いに行けばなんとかなる」と事業の実態が失われ、ほぼ資金の尽きた会社の実態を受け入れようとしません。

最後に紹介するのはまた別の経営者の思考について。

年々、資金が減少していくのに「大口の受注が実現できれば一発逆転できる」と地に足をつけた営業をしようとしません。徐々に稼ぐ力を失っていく会社の実態を見つめようとせず、現場から離れた社長室に籠り続けています。

この2社はどちらも関与先ではありませんが、経営者が現状維持バイアスに陥っている典型的な事例でしょう。素直な視線で自社を見ることができなくなると、もはや経営の選択肢は存在しなくなります。

経営者が現状維持バイアスに陥ると、事業は緩やかに衰退するのは確実。現状維持というのは経営上あり得ず、成長か衰退の二択です。つまり成長し続けることでしか会社は存続できないのです。

成長し続ける覚悟を持っているか

かつての家業をサラリーマンの頃から見続けていた私は、成長への渇望を失った会社の弱さを痛いほど知っています。事業を営むのであれば、成長させ続けることでしか会社の存続は実現しません。走り続ける覚悟が必要なのです。

宮崎駿さんのエピソードが興味深いです。東日本大震災発生時に、休業しようとしたスタジオジブリに「絶対やんなきゃダメですよ、仕事は」と怒りを露わにしていたそう。震災直後であっても活動し続けようとするのは創業者の持つ危機感の発露でしょう。

創業しようとする人にお伝えしていることの一つが、「覚悟」が必要だということ。やりたいことがあるのは幸せですが、事業として実現させたいのであれば成長への覚悟が求められます。そこまでの覚悟はないというのであれば、趣味や地域活動の範囲で取り組みましょうと提案しています。

社会に価値を提供して、そこから得た利益を再投資して提供できる価値をさらに大きくしていくのが商売の本質。成長への覚悟が事業の成長を実現します。

2体の甲冑

人間は本能的に変化を嫌い身を守ろうとします

事業の成長のバトンを繋ぐ

どんな事業であっても寿命はあるもの。祖業であっても、かつての稼ぎ頭であっても、いつか必ず新しい事業に成長のバトンを繋ぐ必要があります。

ところが、経営者や従業員が現状維持バイアスに陥ると、いつまでも祖業やかつての稼ぎ頭の事業にしがみついてしまい、会社が衰退することになります。

私のかつての家業は中元や歳暮、ブライダルのギフト需要に応えて会社を大きくしましたが、いつまでもギフトにしがみつき、古い事業から卒業し、新しい事業に資源を集中させる勇気を持ちませんでした。もちろん経営の責任です。

会社を存続させ、新しい成長のエンジンである事業を営むためには、現状維持バイアスは必ず除かねばならないもの。できない理由ばかりを並べ立てるようになっていないか、昨日と同じ仕事をして満足するようになっていないか。地方中小企業の経営者はいつも自分に問いかけてもらいたいです。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」を毎週金曜日10:00に配信しています

amazon musicのバナー

Listen on Apple Podcasts

関連記事

TOP