地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

地方中小企業の経営者とは「折り合いを付けない」生き方をする人である

今日は日曜日なので最近考えていることをつらつらと書いてみます。

社長信仰を未だに感じる

家業の代表取締役を退任したのはもう8年以上前のこと。
その後、中小企業支援家に転身している今でも、
社長経験者というだけで変わった目で見られることがあります。
不愉快な思いをしているだとかといったことではまったくなくて、
「あぁまた社長経験者というだけで距離を取られているな」といったもの。
元従業員でもなかった人から妙な距離感というか空気を感じるのです。

言葉で表現するのは難しくて、
あえて言うなら「社長信仰」みたいなものを抱かれているよう。
社長は万能でもなんでもなくて、
ましてや私は家業を投資ファンドに事業譲渡して畳んでいます。
それなのに、かつて社長であったというだけで「すごかったですね」とか言われるのです。
率直に言って意味がわかりません。

資格や能力がある人ばかりが就くのが社長ではなくて、
私のように行きがかり上、やむを得ず代表取締役になった人も多いはず。
そんな私からしたら社長はただの役職であって、
それだけで何かがすごいわけではまったくないのです。

安易に折り合いを付けられないのが経営者

でも確かに現役の経営者や経営経験者は
一般的な人からすると「変わり者」が多いとは思います。私も含めて。

なぜ変わり者なのかというと生き方の問題なのでしょう。
つまり、事業を成長させるため、あるいは存続させるためには、
安易に物事に対して折り合いをつけることができないので、
その不器用さが雇われる立場の人たちからすると変わっているように見えるのかも。

ヒリヒリとした経営の舵取りを経験してしまうと、
筋の通らないことに対して
安直な折り合いをつけることに抵抗を感じるようになるのです。

事業者と関わっているとメールなどで連絡することがしばしばあります。
地方中小企業の経営者に多いのが、
事業に関することであれば即座に返信をくれるのに、
事務的な事柄であるといつまでたっても反応してくれないこと。

かつての私も身に覚えがあるのですが、
事業の成長に直接関係しないことはどうでも良くて、
事務的なことなど、適当に処理しておいてもらえばよく、
そんなことでいちいち連絡をもらいたくありません。

また、時間を少しでも無駄にするのも許せません。
遅刻されて時間を奪われるなんてもってのほかですし、
反対に意味も無く、時間を拘束されるのも腹立たしいこと。
仕事が片付いたならさっさと帰ればいいし、
逆にすべきことがあるならば誰に縛られることなく働き続けたいのです。

しょうもない事務的な事柄であっても直ちに丁寧に返信するのが社会人の良識だとか、
9:00-17:00という世の中のビジネスアワーに行動を合わせるのが常識だとか、
そうした世間一般の常識らしきことに折り合いをつけることが苦手なのが経営者。
人間的に優れているわけでも、
すべての経営者が成功しているわけでもありませんが、
確かに変わり者が多いとは思います。

社長の椅子のイメージ

確かにこんな椅子を使わせてもらっていました

創業を志す人に必要な資質

創業を志す人ともお話しする機会があります。
彼ら彼女たちと話していて感じるのは、
「強いこだわり」を持っている人は初期的に失敗しないようです。

例えば
「補助金は時間がもったいないので使いません」だとか、
「行政の事業へは関わらないことに決めています」だとか、
「最初は売れなくても構わないのでこの事業を進めます」
といった具合に(是非はともかく)自分の意志を持っている人は強いです。

反対に
「開業するためにはどんな手続きが必要ですか?」
「まずは何をすれば良いか教えてください」
「○○をしたいので人を紹介してください」
と思考や行動に責任を取ろうとしない人は
創業しようとしても空中分解したり、
生業までにも至らない「地域活動」で終わることが多いように思います。

創業はそれ自体が目的ではなくて、
持続可能な事業を営むことが目指すところであるはず。
キラキラとした「創業している自分」に酔っている人は
たいてい、泥臭い経営の現実に向き合う覚悟がありません。

自分の中に持っている軸を何より大切にし、夢を実現しようとする経営者のみが、
創業時期を通過して価値が利益を生む段階に進むことができます。
当然、かつては創業を志していた人でその後の事業化を実現する経営者も、
安易に物事に折り合いを付けない人が多いように感じます。

創業を志す人に必要な資質があるとすれば、
その一つは間違いなく、世の中の大きな流れに惑わされずに我が道を行く、
「安易に折り合いを付けない力」なのではないでしょうか。


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