事業を説明する能力を磨く
地方中小企業の経営者になると
自社の事業を説明する機会が多々あります。
株式会社であれば株主総会、取引銀行との面談、採用予定者への説明など。
こうした機会でどのように振る舞えば、
事業の実態を正確に伝えることができ、
さらには応援してくれる人を増やせるのでしょうか?
話し方や身振り手振りを過度に気にしない
いわゆるプレゼンを指南する本などを眺めていると
話し方や身振り手振りに気を払うように書かれていることがありますが、
私はこの手のノウハウらしきものは大して重要でないと思っています。
経営者が自分の言葉で説明することに意義があるのであって、
普段と違う自分を装ったとしてもその底の浅さは見抜かれてしまうものです。
話し方がどんなにたどたどしくても構わないのです、
人前で話す時に手や膝が震えてしまっても構わないのです。
経営者が自分をさらけ出して、相手に向き合うことが大事です。
創業を志している人や経営者から事業概要の説明を受ける時、
過度にプレゼンを意識している人はたいてい、演技過剰。
パワポが洗練されていても、白いTシャツにジャケットを着ていても、
そして身振り手振りを豊富に交えていたとしても、
地に足のついていない説明ばかりは補いようがありません。
私がビジネスプランコンテストなどに応募した人を支援するとき、
もちろんプレゼンで評価されるように改善を促すことがあります。
しかし、そのアドバイスは話し方や身振り手振りに関するものではなく、
伝えたいメッセージをまっすぐに受け止めてもらうためのもの。
例えば
「あらすじ」が首尾一貫しているか
何を応援して欲しいのかを明示しているか
定められた時間内にすべてを伝えることができるか
といったことを一緒に検討します。
清潔な身だしなみで、きちんとした言葉を用いるのは最低限のこと。
無駄なテクニックらしきものに惑わされずに、
まずは真っ直ぐなメッセージを伝えることに注力しましょう。
説明するのでなく、応援してくれる人を増やすのが目的
先日、ある会社の従業員から説明を受ける機会がありました。
まだ人前で話すことに慣れていないのが痛々しいほど伝わってきました、
でもそれでまったく問題ありません。
自分の言葉でプロジェクトの率直な進捗を説明してくれ、
聞いていた私は、彼を今後も応援したいと心の底から思いました。
人前で話す目的は、
突き詰めれば応援してくれる人を増やすことです。
株主総会で株主の賛同を得る。
銀行担当者に事業の可能性を理解してもらう。
採用予定者に夢を語り将来を託してもらう。
これらはいずれも説明することが目的ではなく、
ファンを増やすことが目的のはず。
であるならば、背伸びをする必要はないどころか逆効果になりかねず、
ありのままの自分をさらけ出して話せばいいのです。
演技過剰に向き合ってしまうとミスマッチを生じさせるだけ。
その場は格好がついたように思えても
真のファンを増やすことはできません。
自分自身も、そして事業内容もありのままを素直に伝えることが
応援者を増やすことに繋がります。
家業の代表取締役を務めていた当時の我が身を振り返った時に、
事業の魅力を伝えることができていたかというとまったく心許ないです。
失速寸前の飛行機を操縦するような感じで経営するのに精一杯で、
(実際に飛行機を操縦したことはありません)
多くの利害関係者とお話しする日々でしたが何をどう話していたことやら。
それでも心掛けていたのは応援の余地を必ず提示することでした。
「アウトレットの売り上げは伸びています」
だとか
「○○の商品の売れ行きが昨年を上回っています」
といった具合です。
魅力を感じてもらえなければ応援してもらうことはできません。
つまり積極的に商売に関わってもらうことはできなくなります。
投資ファンドに事業譲渡した家業ですが、
最後の最後まで裏切られたり梯子を外されることがなかったのは
多くの応援者の存在があったからだと自覚しています。
「殺し文句」を用意できたら強い
先日、ある経営者が事業の概況を説明する機会に同席することができました。
率直に言って、前半は冗長な説明が続いたのですが、
最後に事業の可能性を一言で伝える説明が付け加えられていました。
あえて表現するならば「殺し文句」です。
何十枚かのスライドも、この言葉にすべてが凝縮されているように私は受け取りました。
ご本人はこの言葉の本当の力には気付いていないよう。
私であれば冒頭にバンッと提示して、聞き手を一気に引き込むのに使います。
事業について説明しようとするのであれば、
ダラダラとしたスライドよりも「殺し文句」を提示するのが有効。
自分自身で生み出した言葉でも良いですし、
利害関係者からの感想などのコメントもあり。
生きた言葉をポンと提示することが何より聞き手の心に響くのです。
そういう私も来月、講演の機会があります。
いつも話しているテーマだからといって慢心せずに
聞き手をぐっと引き込めるような説明を心掛けます。
まずは「殺し文句」を用意しないといけないですね。
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