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コラム

地方中小企業の経営者に求められる「大きな数字」を掴んでおくセンス

地方中小企業の経営者で
銀行担当者と話すことに苦手意識を持っている人が多いようです。
本来であらば対等な立場のビジネスパートナーであるはず。
貸し借りが介在しているために、
根拠のない苦手意識を持ってしまっているのではないでしょうか。

借りている額を把握し、伝える

今日の日本経済新聞に以下のような記事がありました。

途上国債務のデータ集約、G7がG20に要請
日本経済新聞 電子版 2023/7/11
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72644060R10C23A7MM8000/

国同士の貸し借りに金額のズレが生じているという記事。
「借り手側が債務を把握しきれていない要因が大きい」と書かれています。
朝からびっくりしたのですが、
借り手は途上国とはいえ立派な国家です。
どこからいくら借りているかを把握出来ていないことなんて起こるのですね。

家業の代表取締役を務めていた時、
紙の手帳を持ち歩いていました。
毎年9月頃に発売と同時に購入していた、
ほぼ日手帳Weeksです。

この手帳の後ろの方には方眼メモ用紙があり重宝していました。
社長として把握しておかなければいけない、
基礎的な数字のデータを自分で加工し、貼り付けていたのです。

そのデータの1つに、
取引金融機関からの借り入れ残高がありました。
7行庫に応援してもらっていた家業でしたので、
それぞれの金融機関からの借入金の残高が
いくらであるのかを簡単にまとめていました。

例えば2013年の手帳を開いてみると、
「主要な借入先及び借入額(単位:千円)」とあり、

M銀行   375,268
K銀行   490,947
R銀行   214,756
U銀行   103,000
S金庫   205,375
S銀行   157,675
K金庫    64,619
合計   1,611,640
※2013/3/31時点

と印刷された表が貼り付けられています。

こうしてデータを持ち歩いていて、
さらに手帳を開いて自分で作った資料を眺めていると
それなりに数字が頭に入るもの。
いざ銀行に出向いて担当者と話す時には、
自然と基礎的な数字が頭に入った状態で会話できるようになります。

取引金融機関から応援してもらっているのであれば、
いくら借り入れ残高があるのかを把握しておくのは当たり前の話です。
銀行担当者と話す際の最低限のマナーといっても良いかもしれません。
もし自分が債権を持つ立場であったとしたら、
相手方が債務額を把握していなければ不快に思うことでしょう。
我が身に置き換えれば誰しも納得してもらえると思います。

国同士でさえ把握できない難しい数字、なのではなく、
ちょっとした努力で基礎的な数字を把握することは可能です。

またその努力は銀行との関係性構築に役立つはず。
私はそう信じて小さな手間を掛け続け、
そればかりが要因ではないですが、
家業を投資ファンドに事業譲渡するその日まで、
1行庫も脱落することなく応援し続けてもらうことができました。

事業の概況を数字と共に伝える

中小企業支援家の仕事をしていると
「最近、どんな状況ですか?」
と質問する機会が多いです。
何がうまくいっていて、何が想定より悪いのか。
経営者なりの視点で教えてもらいたいという趣旨の質問です。

この質問に対する回答は様々。
事業の概況を生き生きとお話ししてくれる人もいれば、
何か口ごもるようにブツブツと話し始める人も。

共通しているのは
具体的な数字を織り交ぜて話せる経営者が少ないということ。
かつての私も同じでしたが、
地方中小企業の経営者は
自社の数字をすべて頭に入れられているわけではありません。
到底、無理な話です、たぶん。

銀行の担当者と話す機会にも、
数字を暗記しているかどうかが問われることなどなく、
コミュニケーションの手段として、
「大きな数字」を適切に用いることができるかが重要だと思います。

従業員数が何人なのか
店舗数がいくつなのか
昨年の売上がいくらなのか
今年の売上予算がいくらなのか
先月の予算達成率がどれくらいなのか

こうした基礎的な数字を把握しておき、
会話の中で自然に用いることができれば、
銀行からの信頼は増すことでしょう。

これらの数字はもちろん頭に入れておく必要があります。
メモを作っておいて持ち歩くのも有効ですし、
私のように手帳に書いておいても良いでしょう。

ポイントは資料を自分で作ること。
従業員任せの資料は頭に入りづらいものです。
経営者が自分の手を動かして作った資料だからこそ、
自然と頭に入りやすくなるのは私も体感したところです。
数字で話すことに苦手意識を持っているのであれば、
ぜひ自分で「大きな数字」を取りまとめて、
簡単な資料を作ってみることをお勧めします。

銀行の看板

緑色の銀行の担当者には心温かい人が多かった印象があります

わからないことはわからないと言える勇気

銀行の信用を失うのは簡単です。
彼ら彼女たちは約束を破られることを何より嫌います。
「必達すると言った予算の未達」
「返すと言っていたのに急にリスケの要請をする」
こうしたことをとても嫌うのが銀行です。

またもう一つ、嫌われるのが、
数字に関して噓をつくことです。
悪意があってもなくても
数字に関して噓をつくのは厳禁。
その場しのぎの噓というのはあっという間にバレます。

中小企業支援に携わっている私ですら、
経営者が業績に関して話を盛ったりすると簡単に察知できるもの。
ましてや銀行員は数字の噓を見逃しません。
もし問われた数字でわからないことがあれば、
堂々と「わかりません」と返事をすればいいのです。

「わからないと言ったら評価を下げるかも」
「正直な数字では低すぎるから多めに言っておこう」
というのはあっという間に信用を失う行為です。
わからないことはわからないと正直に言う勇気を持ちましょう。

その場で即答できなかったとしても、
会社に戻ってから調べて、電話で伝えれば良いのです。

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