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コラム

士業マーケティング 顧客リストを澄んだ状態に保つ

顧客を無闇に増やしてしまうと、
本当に来て欲しい見込客が近寄ってくれなくなります。
私はこの状態を「顧客リストが濁る」と表現しています。

「顧客リストが濁る」とはどういう状態か

顧客を増やすことだけを考えていると、
想定していなかった顧客を呼び寄せることになりかねません。

例えば、
本来は高単価の商品・サービスを売りたかったのに、
目先の売上を増やしたいがために安直な値引きやセールをしてしまうと
1円でも安いものを探している人を招き寄せることになります。

安さだけを求めている人は
競合が1円でも安い価格を提示すると
あっという間に競合に乗り換えてしまう人です。
価格感度が高い、という状態。
そのような人を対象にすることを否定はしませんが、
士業が持続可能な商売をしたいのであれば、
注力すべき対象ではないと考えています。

また私のように本来は補助金の申請支援を手掛けていないのに、
目先の仕事を増やそうと、
「事業再構築補助金の申請支援を行っています」
などと心にもないPRしてしまうと、
補助金をもらうことにしか興味の無い人をおびき寄せることになります。

補助金の申請支援を生業にしている士業事務所であれば良いのですが、
私にとっては本来、増やしたい顧客ではありません。
望まない業務を手掛けることほど疲弊することはないでしょう。

自分が得意とする属性とは異なる顧客を増やしてしまうと、
「顧客リストが濁る」のです。
表面上の顧客数は増えていたとしても、
それは数字だけのことで、
長く関係性を築きたいと思うような人がリストに存在しなくなってしまうのです。

感性の合う顧客とだけ付き合う

行政が設置した事業相談窓口でセンター長を務めていた時のこと。
行政のプロジェクトとはいえ、サービス業の経営者のつもりで運営していました。

真っ先に取り組んだのは自分と感性の合う顧客を増やし、関係性を構築することです。
具体的には私が提供する知恵とアイデアを用いて行動をできる人を増やし、
ありもしない「経営のショートカット」やいつまでたっても行動しようとしない人は
やんわりと距離を置くように振る舞い続けました。

こうした行動を続けていると何が起こるか。
私と感性の合う顧客だけが名を連ねた顧客リストが出来上がるのです。
そしてその顧客リストを元に支援を重ねていくと、
面白いように中小企業支援事例を積み上げていくことが実現しました。

士業事務所にも同じことが言えるはずです。
感性の合わない人とは付き合わず、
経営方針と合致する顧客を増やし育てていく。
望むような属性の顧客を増やすことで、売上アップが加速します。

注意が必要なのは
感性の合わない人との距離の置き方です。
くれぐれも本人に不快感を抱かせてはいけません。
クレームになってしまい、余計な手間を増やしてしまいます。

私の場合は
「何か良い補助金はありませんか?」
と尋ねてくる経営者がいたとしたら、
「補助金をもらうより先にすべきことはありませんか?」
と質問返しをするようにしています。

この時点でぐっと身を乗り出してくれば私と感性が合いそうですし、
あくまで補助金にばかり関心があるのであれば、
「支援制度については○○○○○(支援機関名)の方が詳しいですよ」
「このウェブサイトに支援情報がまとめられていますよ」
とお伝えして対応を終えてしまいます。

古びた井戸

井戸に顧客台帳を投げ込むのには勇気が要りますね

顧客リストは持続可能な事務所経営を担保する重要な資産

士業事務所にとって、
顧客リストは持続可能な事務所経営を担保する重要な資産です。

ノートパソコンさえあれば、
ほとんどの業務を完結させることができるのが士業の商売。
表面上はノートパソコンが資産のように見えますが違います。
こつこつと関係性を構築し、
感性の合わない人にはお引き取りをいただき、
手を入れ続けてきた顧客リストこそが最重要の資産です。

先日、社会保険労務士が多く使っているクラウド業務システムで
大規模な障害が1週間以上に渡って発生するという事案がありました。
ログインすらままならない時もあったそうで、
Twitterからは多くの社会保険労務士が困り果てている様子が伝わってきました。

クラウド業務システムを利用するのは当たり前の時代ですが、
顧客リストについては何重ものバックアップを取っておきたいもの。
障害はいつか必ず起きるものなのです。
また場合によっては従業員にも管理を任せずに、
全体像は経営者である士業のみが把握出来るようにするのも1つのリスク管理。

江戸時代の商家は顧客台帳を大事にしていました。
火事が起こると真っ先に井戸に放り込んで焼失を防いでいたそう。
お金や商品は後からいくらでも取り返すことができますが、
顧客台帳を完全な状態で復元することは困難だからです。

士業事務所にとって顧客リストは重要。
中身が濁らないように目を配り、
バックアップを取って万一の事態に備えましょう。
持続可能な事務所経営に良質な顧客リストは必須です。

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