地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

地方中小企業の経営者が「保守的」に対応すべきこと

地方中小企業の経営を担っていると
保守的な経営判断がふさわしい場面にしばしば出くわします。
どのような場面で保守的に行動すれば良いのかを書いてみます。

「最悪」に備えるのが保守的な不祥事対応

人は目の前に重大な障害が発生したときに、
「大したことはない」「そのうちに収まる」などと
根拠もなく楽観視してしまうことがあります。
これを正常性バイアスと言い、
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、
過小評価したりしてしまう人の特性を指します。

私が家業で代表取締役を務めていた際にも
正常性バイアスに陥り、経営判断を誤りそうになったことがあります。
ある商品が食品衛生法に基づく鉛毒検査で引っ掛かり、
保健所から当該ロットの回収を命じられた時のことです。
担当者は「大したことがないから私が対応しておきます」と言います。
大ベテランだったので一瞬、そのまま任せてしまうことも頭をよぎりましたが、
品質保証に関わる重大事案です。
ただちに全社を挙げて対応に臨むことにしました。

もし一報を受けた時に
「業界ではたまに起きる事案だから現場に任せておけば大丈夫」
「黙っていれば外部に伝わることは無いから」
などと考えてしまっていたら事業の存続に関わる事態に発展するところでした。

不祥事対応に求められるのは最悪の事態を想定して、
その一歩手前でいかに収束させるかに思いを巡らすこと。
「最悪」を頭の片隅に置いておくことで、
正常性バイアスに囚われずに判断を重ねる事が可能になります。

先ほどの私の経験で言えば、
「最悪」は不祥事を隠そうとしたにも関わらず、
それが外部に発覚して信用を損なうことでした。
であるならば、
先手を打って事案の概要を外部に公表することが
最悪を回避するための第一歩になります。

実際に商品回収のお知らせを外部に発信し、
信用を損なうどころか、
不祥事対応を褒められたのは懐かしい思い出です。

収入は少なく、支出は多く想定する

経営者が精査しなくてはいけない経営指標はいくつもありますが、
最も重要なものが資金繰りです。
つまり、口座の残高がどのように推移するかを把握すること。
口座の資金が尽きて、支払いが滞れば実質的に破綻です。

資金繰り予測の基本は
収入は少なめに見積り、支出は多めに見積もるというもの。
資金の出と入りを管理するのが資金繰り予測の目的であるならば、
保守的な見積もりが求められるのです。

例えば、月末に入金予定があるのであれば、
何らかの理由で翌月にずれ込むことも見込んでおくといった感じ。
この時、
「月末の入金予定が遅れたら資金ショートするけれど、
そんなことは起こり得ないから気にしなくて良し」
などと考えずに、
「月末の入金予定が遅れたら資金ショートしてしまう。
ついては○○宛の支払いをギリギリまで待とう」
と判断するのが保守的な対応です。

窮境に陥っている地方中小企業の経営者でも、
資金繰り表など見たこともないという人がいます。
そうした経営者とは一緒に資金繰り表を作ることも私の役割。
その際に伝えるのが、
数字を保守的に織り込むということ。

ありもしない売り上げの数字を入れようとしたり、
費用を過小に記載したりする人が多いのです。

資金がショートしたとたんに経営は行き詰まります。
資金繰り予測表は保守的に作ることが求められます。

銀行の通帳の残高

お金さえ残っていれば何とかなります

保守的な行動をしてはいけない場面

反対に保守的な行動をしてはいけない場面があります。

例えば、情報発信。
必要性は感じていてもなかなか一歩を踏み出せない企業が多く、
また一歩を踏み出せても継続できない企業がなんと多いことか。

私は情報発信に関しては、
「まずさっさとやってみてください、そして続けてください」
とお伝えしています。
一回、二回の発信をしたところで誰も気にもしていません。
あれこれと思い悩んでいるくらいなら、
さっさと行動し、失敗しながらもノウハウを身に付ければ良いのです。

ある顧問先の経営者は情報発信を躊躇していました。
「毎回、画像を用意するのが大変だ」
「ネタが無いから発信することなんかない」
「自分が前面に出るような発信はしたくない」
といったことを考えていたようです。

ところが意を決してSNSでの情報発信を始めると
確実に商売のご縁が広がってきているのを実感している様子。
今では私が突かなくても当たり前のように発信を続けています。

不祥事対応や資金繰りに関しては保守的な判断を、
一方で情報発信や新規事業、業務改革などについては思い切った判断を。
地方中小企業の経営者は日々、判断の連続です。
今、自分が求められているのはどのような判断なのかを考えながら、
決断を下していくことが求められます。

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