地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

従業員に過度に期待せずに経営者の役割を果たさなくてはいけない

地方中小企業の経営者とお話ししていると
従業員に過度に期待してしまったために
かえって経営者が疲弊しているケースを見聞きすることがあります。
従業員を信用してはならないなどということではなくて、
雇われる立場である従業員に
経営者と同じレベルの発想や行動を求めるのは難があるということです。

昨日と同じことをすれば給料が振り込まれるのが従業員

関与先で経営者とお話ししていると
現状に危機意識を持っている人がほとんど。
だからこそ私のような第三者との対話を求めるのでしょう。
一方で従業員に同じだけの危機意識があるかというと
日常業務に追われていて事業を成長させることへの執着が無い人がほとんど。

当たり前の話です。
経営者と従業員では目線が違います。
どちらかが高い、低いという違いではありません。
5年後、10年後、次の世代をも考えて行動するのが経営者。
目先の業務を着実に実施し、
当月の利益を生み出そうとするのが従業員。
抱えている時間の物差しが異なるのです。

株式会社の取締役であれば、
任期満了で退任せざるを得なくなることもありますし、
任期中でも株主総会で解任される可能性があります。
業務執行に関する広範な裁量を持たされている一方で、
株主の意向次第でいつでも退任を迫られるのが取締役。

一方で従業員は会社に労務を提供して賃金をもらいます。
先月と同じことをしていれば、ほぼ確実に今月も同じ額の給料が振り込まれますし、
よほどのことが無い限り、解雇されるようなことは起こりません。

従業員から叩き上げの経営者であっても
いざ自分が経営側に立つと従業員の持っている目線を忘れてしまいがち。
お互いの目線の違いを理解せずに
何かを動かそうとしても軋轢が生じてしまうことがあります。

経営者と同じだけの意識と行動力を持っている従業員は、
なかなかいるものではありません。
お互いの目線の違いを意識して、
経営者は従業員に働きかけましょう。

法律で手厚く保護されているのが従業員

日本では労働基準法という法律で、雇われる立場の人が保護されています。
その前身ともいえるものが、1916(大正5)年に施行された工場法。
当時の過酷な環境で働いていた職工を保護しようというのが制定された趣旨です。

工場法がルーツの労働基準法だからこそ、
現在も雇われる立場の人は強力に守られています。
法律で守られているから安心して働こうとする人と、
逆に仕事への出力をセーブしてしまう人がいるのも事実。
最近では「静かな退職」というキーワードを目にすることが増えてきました。

Z世代に広がる「静かな退職」 米国発 社員だけど仕事に熱意なし(令和なコトバ) – 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD216D10R21C22A0000000/

「静かな退職」日本15% 熱意なき社員増、会社の対策は – 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0220X0S3A600C2000000/

雇用はリスクではありませんが、
一定のリスクをはらんでいることは事実です。
必ずしもすべての従業員が
経営者の思い描いているような熱意を持っているわけではないのは、
冷静に受け止めておいた方が良さそうです。

工場の夜景

「静かな退職」は静かに拡がっている気がします

最後の一人になっても事業を継続させるのが経営者の役割

地方中小企業の取締役会の構成を眺めていると
従業員から叩き上げの取締役を多く見かけます。
私も家業を事業承継した際、
従業員から3人を抜擢して取締役に就任してもらいました。

従業員から取締役に抜擢した際に気を付けなければいけないのは
果たすべき責任が異なるのを理解してもらうことです。
功績のあった従業員を安直に取締役に抜擢してしまうと
従業員当時と同じ発想で仕事をしてしまうことがあります。
これでは取締役という地位が
単なる論功行賞のポストに過ぎなくなってしまいます。

代表取締役であれば、
事業運営上のすべての責任を負うことになります。
文字通り、「すべて」の責任であって、
会社の前の信号が赤に変わるのも代表取締役の責任です。
※あくまで例え話です

また取締役は
会社と雇用契約を結ぶのではなく委任契約を締結します。
一般的な義務として、善管注意義務と忠実義務の2つがあり、
雇われる立場の人にはない義務を負います。

極論すれば、
最後の一人になっても業務執行するのが取締役であり、代表取締役です。
ここまでの覚悟を持っていないのであれば、
会社と委任契約を結ぶべきではありません。

「最後の一人になっても事業を預かる覚悟があるか」
経営者に問われるのは突き詰めればこの一点です。

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