地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

地方中小企業が新規事業に取り組まねばならない理由

地方中小企業が新規事業を始めようとする時に
どのような事業を選べば良いかと質問されることがあります。
私なりの視点を書いてみます。

夢中になって取り組むことのできる事業であるか

ある経営者が新規事業を始めると報告に来てくれました。
本業は建設関係で、資材の在庫管理システムを開発し、
まずは自社で使いつつ、外販も目指していくとのこと。

以前から倉庫の5Sについて意識の高い経営者で、
試行錯誤しながら効率化を目指している様子は私もよく知っていました。
倉庫に伺うと在庫管理システムについて嬉々とした様子で説明してくれます。
自身のこだわりを反映しようと、
開発会社と何度となくやり取りを行ったそう。
結果、資材の無駄を大きく削減することが可能になる、
収益改善に貢献する在庫管理システムを開発できたということです。

この経営者とお話ししていて感じたのは
経営者自らが夢中になって取り組むことができるのは強いということ。
日常業務に流されてしまうと、
目先の売上に一喜一憂してしまいがち。
かつての私もそうでした。

ところがこれと決めた新規事業に没頭する経営者の姿は輝いていて、
何より、既存事業だけに依存せずに会社を成長させようという
強い意志を感じることができました。

カネから考えるのではなく楽しいかどうか

新規事業を検討する際に陥りがちな罠は
カネから逆算して何を始めようかと検討することです。
「事業再構築補助金を○○○万円もらうためには何をすればいいだろうか」
「売り上げの落ち込み分○○○万円を補うためには何をすればいいだろうか」
といった感じです。

利益を生み出せるかどうかは当然重要ですが
楽しく取り組めるかどうかも同じくらい重要でしょう。

私が家業の代表取締役を務めていた際に取り組んだ新事業で楽しかったのは
オリジナルブレンド米を企画・販売するという施策でした。
「京都の茶わん屋」という意識の殻を自ら破り、
食器の上に載せる食事を商品にしてしまうという発想は
当時の社内では画期的なものでした。
初期的に提案した百貨店バイヤーの反応もよく、
何より従業員が競うようにオリジナルブレンド米を購入していたことが印象に残っています。

売ろう売ろうとするとどうしても苦行のような仕事になってしまいがち。
ところが自分が楽しいと思えることであれば
不思議と苦労も苦労とは感じなくなるものです。

新規事業を始める際にもし選択肢があるのであれば、
迷わず「楽しい方」を選びましょう

トマトの苗2つ

既存事業が息切れする前に新規事業を育てておきましょう

事業の成長のバトンを繫ぐために新規事業は必須

会社の成長のエンジンは1つ1つの事業です。
ところが1つの事業が永遠に利益を生み出し続けてくれることはありません。

祖業や、過去に大きな利益を生み出した事業であったとしても
いつかは必ず手放すべき時がやってきます。
その時は次の成長のエンジンとなる事業に
バトンを繋いでいかなくてはならず、
その判断を行うのは経営者の重要な役割の一つです。

私が顧問先に関わる場合、
次の成長のエンジンとなる事業への種まきを早め早めに行うように促しています。
従業員は日々の業務に追われ、
新規事業に挑戦しなくてはいけないと考える余裕がないことがほとんど。
しかし経営者は5年後、10年後の成長のエンジンを生み出す責任を負っています。

ある老舗企業の役員とお話ししたときの言葉が印象に残っています。
業績が非常に好調で、主要製品の生産ラインがフル稼働状態にも関わらず、
「次の世代の従業員のために今から新規事業を始めておきたい」
とおっしゃるのです。
経営を預かる立場だからこそ、
目先の業績にも目を配りつつ、次代の成長のエンジンを生み出そうと考えていたのです。

またある地方中小企業では
「今のまま現状維持で事業承継できればそれでいい」というお父様に対し、
後継者が新規事業に挑戦し始め、徐々に商売の輪を広げ始めています。
長く旧来の事業に囚われ、
業績が悪化し続けている過程で事業承継し、
次の成長のエンジンを生み出さないことには
会社を存続させることはできないと取り組み始めたのです。
今ではお父様も「新規事業に挑戦し続けなければ現状維持すら覚束ない」
とおっしゃってくれるようになっています。

新規事業は道楽でも金食い虫でもなく、
会社であれば当然取り組まなくてはいけないこと。
すべての新規事業が成功するわけではありませんが、
次代の成長のエンジンを生み出さないことには
既存事業はいつか息切れしてしまいます。
創業時のように新しい事業を生み出す気概はいつまでも必要なのです。

関連記事

TOP