某補助金の締め切りが今回も迫ってきています。
補助金に目がくらんでしまい、
本来すべきことを見失わないようにしましょう。
今取り組むべきことを見極めるのです。

補助金ばかりを探す経営者

ある経営者とお話しした時のことです。
「何か良い補助金はないか？」が口癖で、
その日も締め切りが迫っているある補助金の申請書を見てほしいと言います。
私は手続き業務や補助金の申請支援は（ほぼ）手掛けません。
理由は他にいくらでも専門家がいるから。
その旨をお伝えした上で、
私なりに文章の書きぶりについてアドバイスさせてもらいました。

この経営者の課題は本業の集客、つまり売上アップ。
取り組めることはいくらもあるのに、
営業に苦手意識を持っているのか後回しにし続けています。

この日も補助金の話ばかりをしようとするので、
やんわりと営業活動についてアドバイス。
といっても促したのはドブ板営業で
汗をかいて顧客を増やすのが最もてっとり早いと説明しておきました。
根性論を説いたわけではなく、
手を付けていない施策の中で
最も確度が高いと思われる具体的な方法も合わせて提案しています。

実行するかどうかは経営者次第ですが、
果たして行動に移すことができるかどうか。
一度、補助金に目がくらんでしまうと
地道に利益を集めることの重要性を忘れてしまいがちなのです。

補助金を受給することを否定するつもりはありません。
使える制度ならば使えばいいのです。
ただし、いつしか補助金を受給することが目的にすり替わってしまう人が多く、
「補助金をもらうためには何をすればいいか」
と本末転倒に陥ってしまっては何のための補助金だかわかりません。
本業の成長を加速させるために利用するのが本来の補助金のはずです。

従業員を不安にさせてまで取り組むべきものではない

別の会社でのこと。
例によって経営者は補助金が好きなタイプなのですが、
番頭さんは地に足をつけた商売の重要性を理解しています。
経営者が席を外したタイミングで私に話してくれたのは
「今は補助金よりも重要なことがあるのですが、、、」
という内容でした。

経営者が補助金に振り回されてしまうと悲劇です。
「タダでもらえるお金」と勘違いしてしまうと、
「補助金をもらうために何をすればよいか」ばかりを考えるようになります。
実際には事業計画等を作成する事務作業が発生しますし、
採択後には補助事業を実施するための出費が先行します。
もちろん事業終了後には報告書を作成する必要もあります。
こうした実務のみならず財務にも及ぼす負担感を顧みることなく、
補助金ばかりを追い求めるようになってしまうと、
当然、本業での地に足を付けるべき活動がどこかでおろそかになってしまうのです。

補助金はあくまで補助です。
1/2なり、1/3の補助を得て、事業を実施し、
企業のさらなる成長を期するもの。
本業をおろそかにし、
従業員を不安にさせてまで取り組むべきものではありません。

補助金などの支援制度に関心を持つことは悪いことではありません。
ピタッとはまる制度があれば堂々と使えば良いのです。
でも同時に本業で優先すべきことがないかに思いを巡らしましょう。

経営者は何をするもしないも自由、だからこそ優先順位が重要

経営者は何をするもしないも自由。
責任はすべて自分に降りかかるので、
上場企業でもなければ、
どのような選択をしようと後ろ指をさされるいわれはないはず。

この時、経営者に求められるのは優先順位をつけて取り組むことです。
時間と資本は有限なのでメリハリをつけてそれぞれを投資しないと
何事も中途半端になってしまいます。

補助金に目が眩んでしまうと、
この優先順位の付け方を間違ってしまいがち。
支援機関の専門家たちのほとんどは
補助金を使うことばかりを勧める一方で、
事業の実態を把握し、優先順位を一緒に考えてくれることはありません。

最後の一人になっても事業を推し進めるか、
あるいは事業を畳むかを決断するのが経営者です。
適切なタイミングで適切な内容であれば補助金を使うのもあり。
でも闇雲に補助金ばかりを追い求めるようになると、
経営者の本来の役割と責任を見失ってしまいます。

ある経営者は補助金を申請しようと息巻いていましたが、
私のアドバイスで申請を見送る決断をしました。
その時、補助金に頼ってしまうと、
従業員に間違ったサインを送ることになると気付いたからです。
事業の成長に必要な原資は自分で稼ぐのが原則。
商売を営んでいるのであれば、
自分で稼いだ金で成長への再投資を繰り返しましょう。
補助金はあくまで補助なのです。