地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

050-3557-7157

コラム

地方中小企業の経営者に求められる「数字で語る」能力

地方中小企業の経営者とお話ししていると
数字をまったく理解できていない人というのはあっという間にわかります。
知識が無いというのではなく、自社の数字を把握していないという意味です。

まずは簿記3級の知識を身につけよう

(仕事に効くスキル) リスキリングで簿記を学ぶ 企業財務の理解深まる、AI利用も人の判断必要
   日本経済新聞 電子版 2023/6/7
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71665110W3A600C2XXA000/

先日の日本経済新聞にこのような記事が掲載されていました。

筆者によると
「簿記の学習経験がなくても、財務諸表はある程度理解できるが、
簿記を学習すれば財務諸表がより深く理解できるようになる」
とのことです。まったく同感です。

地方中小企業の経営者とお話ししていると、
ぞっとするほど自社の財務について疎い人がいることに気付きます。

何も深い分析を求めているわけではなくて、
「先月の売上は?」
「主要な商品の利益率は?」
などと尋ねてもあやふやな返答で誤魔化そうとするのです。
機密であるので答えられないといった様子ではなく、
どうやら自社の状況を把握していないよう。

私が中小企業支援家として関与する場合に
過去三期分の財務諸表の精査から入ることなどはありません。
ただし、もちろん事業の概況を把握する必要はあります。
そのためにもざっくりとした数字を教えてもらいたいのですが、
まったくのゼロ回答だと私も言葉を失ってしまいます。

もし、数字に苦手意識を持っているのであれば、
まずは簿記3級レベルの勉強をすることをお勧めしています。
必ずしも資格を取ることにこだわらなくても
テキストと問題集をやり切れば十分。

高校生でも合格するレベルの内容ですから、
集中して勉強すれば経営者なら理解できるはず。
最初は資格予備校などがアップロードしている無料動画を併用すれば
入り口で挫折してしまう可能性は減らせるでしょう。

商売の結果は数字で示されます。
経営者であるならば財務についての基礎的な知識は必須。
その数字を理解するためにも最低限の知識は身につけましょう。

経営者が銀行と対話するために必要な能力の程度

私が事業承継した当時の家業の規模は
売上50億円、店舗100店舗、従業員300名くらい。
※ざっくりの数字です

この規模の地方中小企業の経営者が銀行と対話するためには
簿記3級レベルで何とかなりました。

財務を見ていた番頭格の専務や
経理財務の管理職はもちろんいました。
日々の業務は彼ら彼女たちが行ってくれていたのです。

ただ、局面によっては私が直接、銀行の担当者や役職者と話す必要があります。
当初想定していたよりも環境が悪化した場合や
事前に調整したよりも多くの支援を必要とする場合などです。

そうした時に私が銀行に出向くのですが、
手元には簡単なメモを用意しておくのみ。
精緻な数値を記入しているわけではなく、
箇条書きでその日話すであろう内容に関連した数字をまとめていました。

銀行の応接室に通されても、
試すように数字を聞かれることはありません。
ただ、私が事業の概況を説明し、
さらに支援をお願いする言葉の中には
ざっくりとした数字は適度に混ぜ込むように心掛けていました。
「がんばるので支援してください」
では銀行も応援しようがないのです。

銀行との対話を恐れる経営者は多いです。
しかし取って食われるわけではないですし、
銀行も融資をしなければ利益を生み出すことはできません。
地方中小企業と銀行は利益創出という共通のゴールを見据えているパートナーのはず。

であるならば、
十分な準備をした上で、自分の言葉で支援を求めることが必要です。

決算報告書と電卓

簿記3級レベルの知識は身につけておきましょう

数字の噓はあっという間に見抜かれてしまう

財務に限らず、
噓の数字を言葉にしてしまう経営者がいます。

先日、ある経営者とお話ししていた時のこと。
昨年お聞きした事柄について、数字が異なっていました。
まさか私が覚えていないと思ったのでしょう。

また別の経営者は
財務諸表の数字について丁寧に説明してくれたのですが、
後日、書類を見せてもらうと数字が大きく異なっています。
よく見せようとその場しのぎの噓をついたのでしょうか。

「数字の噓はいつか絶対にバレる」
これは私が肝に銘じていることです。

窮境に陥っている家業を率いていると、
ちょっとした数字をほんの少し盛りたくなることがありました。
しかし、矛盾が矛盾を呼んで収拾がつかなくなることは明らか。
どんなに悪い数字であっても
背伸びせずにまっすぐに伝えることを心掛けていました。

当たり前のことだと思うのですが、
銀行業界の人に聞くと数字の噓をついてしまう経営者は多いとのこと。
そしてその噓は直感的にわかります、と言っていました。

商売は数字だけではありませんが、
数字が必ず伴う世界でもあります。
経営者が「財務は詳しくなくて」などと言ってしまうと信用に関わります。
最低限の素養を身につけるのは意志の問題。
「数字で語る」ように心掛けて利害関係者と関係性を構築していきましょう。


ポッドキャスト「茶わん屋の十四代目 商いラジオ」

Spotify
https://open.spotify.com/show/5k9yFfpwzesl5h7VWcdklq

Amazon Music
https://music.amazon.co.jp/podcasts/cadc0ad2-fe89-4cbf-ab60-b94526f7bbf1/茶わん屋の十四代目-商いラジオ

Apple
https://podcasts.apple.com/us/podcast/茶わん屋の十四代目-商いラジオ/id1686517286

関連記事

TOP