年度初めに地方中小企業の経営者がすべきこと
新しい事業年度が始まったら経営者は何をすれば良いでしょうか?
ただ漫然と業務を始めてしまうと、
昨日と同じ仕事を繰り返すだけになってしまいます。
経営者個人と会社の目標設定
まずは目標設定が必要です。
経営者個人と会社の目指すところをそれぞれ明らかにしましょう。
地方中小企業に関わっていると、
適切な目標設定をできていないところがほとんどだと感じます。
目標がなければ組織は昨日と同じことをするだけで、成長することはありません。
ゴールがどこにあるのかを可視化するのは経営者の責任です。
たまに経営者と会社の目標設定をせずに、
従業員個人の目標設定あるいは評価項目を設定しようとする人がいます。
全社の向かうべき方向が定まっていないのに、
従業員個人の目標設定はできないはずです。
目標設定は自由にすれば良いのですが、
気をつけなければいけないのが経営理念との整合を図ること。
数字ばかりに目が行ってしまったり、事業計画の進捗に囚われたりすると、
自社の存在意義を見失いかねません。
立ち戻るべきの大元は経営理念です。
従業員との対話により目標を設定する
次に必要なのが従業員への目標設定。
会社が定めたゴールに辿り着くために、
一人一人の従業員は何ができるのか。
まずは従業員に考えてもらい、
経営者がそれぞれと対話を重ねる必要があります。
従業員との面談を実施するのは管理職か経営者となるでしょう。
目標設定のための面談は、
うまく利用できれば労使共に貴重な機会になり得ます。
業務に前向きに取り組めているのか、
何か問題を抱えていないか、
転職を検討している様子はないか、
家庭に問題は発生していないか、
声や顔色は健康そうか、
などなど対話の中から情報を得ることが可能です。
日頃から十分な対話ができている企業ばかりではないので、
きちんと記録を残し、
後から振り返ることができるようにしておきましょう。
従業員に目標設定しようとする時には
複雑な評価用紙などを使う必要はなく、
シンプルにA4の1枚程度にまとめることを勧めています。
理由は「継続」することを重視しているから。
地方中小企業で複雑な制度をきっちりと運用するのは困難。
中途半端に取り組んで挫折するくらいであれば、
身の丈にあったシンプルな制度を運用すべきです。
以前に関わっていた企業では、
人事評価制度の中で目標設定が行われていましたが、
期初の面談が行われるのが2ヶ月過ぎてからでした。
あまりにも遅すぎます。
精緻な制度を導入していたとしても
事業の実態に合わないのであれば本末転倒です。
身の丈にあった仕組みにし、着実に実行することが重要です。
情報を共有する
経営者と会社の目標設定をし、
従業員個人の目標を定めたら終わりではありません。
今期をどう進めていくかを利害関係者で共有しましょう。
銀行には今期の経営指針として説明すれば良いでしょう。
株式会社であれば株主に対し、株主総会の場で約束するのもあり。
対外的に宣言することで実行せざるを得ない立場に自ら追い込むのです。
またこちらから情報提供すると利害関係者は喜んでくれるもの。
銀行や株主との関係性構築の良いきっかけにもしてしまいましょう。
もう一つ、従業員にも共有する必要があります。
カタカナ語で言えば
インナーブランディングというやつです。
従業員に対して企業理念や、価値観、目指すべき方向を共有し、
理解を深めて業務に取り組んでもらうことを目指します。
従業員それぞれの目標も差し障りない範囲で共有できればなお良し。
誰がどのようなゴールを思い描いているのかを知ることができれば、
全員で協力し合いながら行動することができるはず。
私が家業の代表取締役を務めていた際には
従業員に再生計画の進捗状況を説明する機会を設けていました。
説明するのはもちろん私。
説明会では事業が窮境に陥っている中で何がどうなっていて、
どこを目指しているのかを語りました。
率直に言って、売上が下がり続ける局面では気の進まない仕事の一つでした。
ただ、(ほぼ)すべてを隠さずに伝えることで
無駄な雑音の発生を抑止して業務に集中することが可能になったように思います。
事業譲渡を終えるまで人事上の大きな混乱が起きなかったのも
極力、情報を出し惜しみしなかったからかもしれません。
年度初めは何かとバタバタするものです。
社内は変わらなくても取引先に異動が発生したり、
もちろん前期の決算業務などにも追われたりすることもあるでしょう。
しかし、新しい期の初めだからこそゴールを設定することを忘れてはいけません。
何をどこまでやれば成功なのかを定義し、
経営者自らが把握しておくのはもちろん、
従業員とも共有しておくようにしましょう。
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