地方中小企業が持続可能性を高めるための踏み台になります

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コラム

不祥事にどのように向き合うか

地方中小企業が不祥事を引き起こしてしまった時、
どのように向き合い、解決させていけばよいのでしょうか。

顧客を欺く不祥事は企業の存続に関わる

(日経xTECH 日経BP専門誌から) 故障装う「島津タイマー」なぜ不正 – 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70517190W3A420C2XV7000/

自社の商品に電力を切断する「タイマー」をひそかに設置。故障を偽装して8300万円以上の修理費用を売り上げていたということです。親会社である株式会社島津製作所が製造販売する医療機器の据付、メンテナンス業務を手掛けているとのことで、大げさな話でなく、会社の存続に関わるような不正事案です。

仮にこの会社が今後も存続したとして、顧客の担当者はどのように思考するでしょうか?

「今後、同じような不正行為を手掛けることはないだろうか」

「自社との過去の取引で何らかの不正行為をしていないだろうか」

「こうした不祥事を起こした以上、取引を継続する理由はあるのだろうか」

などと考えることでしょう。

特に重要なのは、顧客を欺くような不祥事を起こしてしまった会社とは、取引を継続する理由がなくなるということ。世界に一つしかない技術や製品を生産しているのであれば、やむなく取引を続ける選択肢もあるでしょうが、類似の商品を他社から入手することができるのであれば、もはや積極的に商売を続ける必要はなくなります。

隠さずさらけ出し、自らの言葉で説明する

仮に顧客を欺くような性質の事案でなかったとしても、何らかの不祥事を起こしてしまった場合にはできるだけ早く開示し、説明することが重要です。

ある会社のECサイトから顧客情報が流出してしまった事案では、会社が事実を把握してから公表するまでに相当な時間が経過していました。その間にECサイトは一時閉鎖され、関係者は何らかのトラブルが発生したのだと異変を察知しています。社運を賭けたECサイトの立ち上げ間もない時期に発生したこともあり、関係者の間では満足な説明をしようとしない会社の対応に疑問を感じる声が続出。会社が直接的に引き起こしたトラブルではなかったのに、信用を大きく損なうことになってしまいました。

今時、速やかに情報開示できないと、「不祥事を隠そうとしているのではないか」と疑われてしまいます。事案の大小に関わらず、不祥事(かもしれない事案)は経営者に速やかに報告する体制を整え、経営者が事後の対応に取り掛かれるようにすべきです。

不祥事が発生したときに最悪の手は「隠そうとすること」「謝らないこと」です。さっさと開示し謝ってしまえば、たいていの不祥事は経営に大きなダメージを与えることなく収束させることが可能です。

記者会見の会場に並んだマイク

記者に聞かれる前に自分から情報提供してしまいましょう

対応を小出しにしないで、経営が主導して一気に解決を目指す

私が家業の代表取締役を務めていた際、食品衛生法に抵触する商品を出荷してしまい、保健所から当該ロットの回収を命じられたことがあります。幸い、人体に健康上のダメージを発生させるものではなく、原材料管理が行き届いていなかったために発生してしまった事案でした。

保健所からは営業を停止するよう命じられたわけでもなければ、同品番の販売を休止するように命令されたわけでもありません。命令だけに従おうとするのであれば、対外的に公表する必要がなかったかもしれない事案でした。そう考えたのは商品担当の幹部も同じで、第一報と同時に私には「大したことではないのでこちらで処理しておきます」と連絡がありました。

しかし、業績が窮境に陥っている状況で不祥事への対応を誤るのは経営上、致命傷となりかねません。私の判断は①当該商品の全数回収(の努力)と、②店頭での告知と全国紙への社告の出稿、でした。最初に最大限の対応を打ち出すことで、経営上のダメージを最小限に抑えようと考えました。

仮に過去に出荷した商品も含めてすべてを回収し、商品代金をお返しすることになると、資金繰り上大きなダメージどころか、資金がショートすることもあり得ました。しかし、ここで対応に腰が引けているような印象を与えてしまうと、事業の存続自体が危ぶまれることになります。利害関係者の声におびえながら対応を小出しにするのではなく、経営が主導して一気に解決させることを目指したのです。

結果は経営上のダメージをほぼ発生させずに収束させることができました。店頭や全国紙で回収を告知したものの、当該商品の回収数は驚くほど少なく、逆に、不祥事へのお叱りを受けつつも、対応についてはお褒めの言葉をいただくこともありました。

不祥事を起こしてしまった時にこそ、経営者や従業員の業務に対する姿勢が問われます。目先の不都合を回避しようとするのは、不祥事対応では最も避けねばいけないこと。事案が発生したら事実を隠さず公表し、できるだけ早く謝るべきことを謝ることが重要です。

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