事業性を評価するときに見ているポイント
地方中小企業の経営者と面談し、
事業性を評価させてもらうことがあります。
その際にどのような点を注視しているかを書いてみます。
事業の実質・実態
私が最も重要視しているのが
事業に実態が伴っているかという点。
多くの地方中小企業の経営者とお話ししていると
・何をしているのかわからない
・誰が実質的なオーナーなのかわからない
といったことが結構な割合で発生します。
その都度、説明を求めるのですが、
もちろんわかりやすく教えてもらえることはありません。
「事業の実質・実態が明らかではない」
としてレポートを作成することになります。
こうした企業(らしき法人)が何を目的に維持されているのかわかりませんが、
不適切な資金の流れに関与しているなどが考えられますので
関わらないことが一番。
経営者の押しが強いからといって流してしまうと、
思わぬトラブルに巻き込まれることになりかねません。
ウォーレン・バフェット氏は投資を判断する際に
「自分が理解できるビジネスを展開している企業を買う」
と決めているといいます。
中小企業が取引の可否を決定する際にも同じようなことが言えると思っていて、
事業の実態が定かでない、
何をしているかわからないような会社・経営者とは付き合ってはいけません。
ある時お話しした経営者は
広告関連の仕事をしていて補助金を受給したいとのこと。
補助金の申請には事業相談の実績が必要で、私のところへいらしたそう。
事業内容を説明するように求めると
いかにもそれらしい口ぶりで話してくれるのですが、
率直に言ってどんな商売なのかさっぱりわかりません。
補助金を受給することはできないだろうとお伝えし、
お引き取りいただきました。
経営者の人格
業績が堅調であったとしても、
経営者に問題があるとしたら事業の持続可能性は担保できません。
私に偉そうな話し方をするなどはどうでもいいのですが、
・話していることと提出された資料の内容が矛盾している
・前回話した内容と今回話している内容が矛盾している
・過大あるいは過小な数字を伝えようとする
といった言動をしてしまう経営者は信用することができません。
ある経営者が資金繰りに問題が生じているというのでいらっしゃいました。
取引銀行に支援してもらったらどうかと提案すると
「以前の面談時に虚勢を張ってしまい、融資を断られたことがある」
と言います。
どういうことかさらにお尋ねすると
融資を受けようと相談に出向いたものの、
会社の窮状を伝えることを躊躇してしまい、
資金に問題がないような発言をしてしまったとのこと。
資金が潤沢にあるのであれば融資をする理由は有りません。
銀行からは融資を断られてしまい、
それ以来、関係性を構築できていないと言うのです。
おそらく担当者にはその虚勢は見破られていたことでしょう。
ある公的機関の方に教えてもらったのですが
業績を良く見せようと、
ウソの説明や数字を語る経営者がとても多いそうです。
私にはとても信じられません。
家業の代表取締役に在任中、
一つのウソでもついてしまうと事業の存続にかかわると考えていた私です。
事実は事実として動かすことはできません。
率直に状況を伝えてしまった方が、
周囲からの支援も得やすくなると思うのですが。
ウソや背伸びをしてしまうと、
その場はやり過ごせたように感じるのかもしれませんが、
結果、自分の首を絞めてしまうことになるのです。
勝てる勝負をしているか
商売が成功するかどうかを見定めることは困難です。
国税庁が2022年に公表した「国税庁統計法人税表」によると、2020年度の赤字法人(欠損法人)は186万4,249社だった。コロナ禍初年度の赤字法人は、全国の普通法人281万8,077社の66.1%に相当し、前年度の65.4%から0.7ポイント上昇した。赤字法人率が前年度を上回るのは、2010年以来、10年ぶり。
東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20230227_01.html
SNSや雑誌を眺めていると、
世の中は成功している会社や経営者ばかりのように感じますが、
実態はこの記事のように多くの法人が経営に苦労しています。
必ずしも成功が約束されているわけではないわけで、
地方中小企業の経営者は
少しでも利益を得ようと日々、奮闘しているわけです。
私が注目するのは結果としての利益の有無、多寡ではなく、
そもそも、勝てる勝負をしようとしているかという点。
例えば、
地方の経済的に疲弊した地域で商売している事業者が、
地域の顧客だけでなく、
県外あるいは全国、海外に向けて商売をしているか
といった具合です。
反対に
人口過疎地域で情報発信もせずに、
「昔はこのあたりの人通りは多かった」
と言っているだけの商店街事業者に将来はありません。
商売はギャンブルではありません。
一か八かの取り組みをする経営者は失敗するもの。
負ける要素を一つずつ潰していき、
失敗する確率を極限まで減らせば成功に近づくのです。
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