地方中小企業が従業員を雇用しようとする前にすべきこと
人手不足という言葉をよく耳にしますが、
安直に採用に走る前にするべきことがあります。
事業を成長させるための手段としての採用
関与先から、
初めての従業員を雇用したと報告をもらいました。
その前から相談を受けていましたが、
経営者にアドバイスしていたのは以下のようなことです。
・給与の額面以上に発生するコストがある
・従業員の家族に対しても責任が発生する
・雇用してすぐに給与以上の貢献は期待できない
経営者にありがちなのが、
「年収いくらを渡している」
というざっくりしたコスト意識です。
実際には会社負担の社会保険料や研修費用など、
給与明細に表れないコストが発生します。
また、思い描くような戦力に育てることを考えると
育成にかかる時間もコストとして考えなければいけません。
雇用をコストだけで考えるな、
という意見もありますが、
経営者であるからには
費用対効果で投資を判断する必要があります。
そうです、雇用は事業に対する投資の1つです。
「手が足りないから従業員を増やす」
「退職者が発生したから補充する」
「新規事業を始めるから採用する」
といった考え方は
従業員を単なる頭数としか捉えられていません。
従業員を雇用するということは
事業を成長させるための手段です。
そもそもどの事業に注力するのか、
将来、どの事業に成長を託すのか、
そのためにいつから何にどれだけ投資する必要があるのか。
そこまで検討した上での採用であれば
事業を成長させるエンジンになり得るでしょうし、
経営者のビジョンを実現する可能性は高まるでしょう。
従業員が労働する理由
残酷な現実ですが、
採用した従業員と長くご縁をいただけるとは限りません。
理由は様々。
従業員の立場からすると
・会社や経営者と合わないと気付いた
・業務内容と処遇のバランスが悪い
・自分を取り巻く環境が変わった、変えたい
といった理由が生まれれば退職を検討することになります。
ここで重要なのが、
経営者が抱く、従業員に対する思い入れほどに
従業員は会社に対して感傷的ではないということ。
従業員が働く理由の
最も大きなものは生活を成り立たせるためです。
個人のキャリア形成がどうとか、
経営理念に共感したとかは、
残念ながら働く理由にはなるものの、
必ずしも強いものではありません。
「給料をもらって生活する」、
これが最大の働く理由なのです。
経営者の独りよがりな思いで「雇ってやって」も
お互いの幸せな関係を築くことには繋がりません。
従業員を雇用するのであれば、
従業員の思いを想像してやる必要があります。
まず着手すべきは生産性の向上
ある関与先での出来事です。
以前からハローワークに求人を出していたそう。
今となってはなぜ求人を出しているのか、
経営者もきちんと把握出来ていないご様子。
どうやら現場での人手不足感があり、
管理職が求人票を更新し続けていたようです。
ある時、
求職者から履歴書が送られてきました。
職務経歴書だけを見ると、
これまでの従業員にはいなかったような
高学歴かつ、大企業での勤務経験の持ち主。
社内はすっかり舞い上がってしまい、
経営者も採用する方向になりかけていました。
そこで私が投げかけたのは
「そもそも、なぜ採用するのか?」
「従業員を増やすと、
一人当たりの賞与が減るがそれでも採用するのか」
という2点。
特に後者は採用に前のめりだった管理職に宛てたものです。
結論は、採用を見送り、
ハローワークの求人票も取り下げることになりました。
安直に人を増やそうとしても、
生産性が改善されなければ利益を圧迫するだけです。
そのことに気付いてくれた経営者と管理職は
事務作業の省力化と、
人員配置の最適化(多能工化)を目指すことにしました。
人手不足という言葉をよく耳にしますが、
地方中小企業が採用しようとする前に検討すべきは
生産性の向上です。
つまり、利益をより絞り出すための改善。
採用しようとしたところで、
思うような人材を
思うようなタイミングで採れるわけではありません。
また残念ながら必ずしも、
会社が思い描いたように
活躍してくれる人材ばかりではありません。
安直に採用ばかりしようとするのではなく、
まずは、今いる従業員と経営者で利益の最大化を目指すこと。
地方中小企業に必要な視点です。
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