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コラム

相談者に媚びない中小企業支援

    中小企業支援家に転身して7年目。
    私の支援スタイルについて書いてみます。

    相談者の言葉に惑わされずに最善手を選ぶ

    相談者は勇気を振り絞って
    私の元にいらしてくれています。

    しかし、その相談者が話す望みが
    必ずしもベストのものとは限りません。

    例えば小売業の経営者からの相談で多いのが
    「ネット販売を始めて、売上を増やしたい」
    というもの。

    店舗の売り上げが下がり続けているので、
    ネット販売を始めてみたいというお考えでしょう。
    何か新しいことに挑戦しようという考えには敬意を表しますが、
    その手段が必ずしも最適なものとは限りません。

    ある経営者が同じような内容で相談にいらしたとき、
    私がまず聞いたのは顧客名簿の有無でした。
    長年、地域に根ざして商売をしているのならば
    顧客名簿を整備できているはず。
    どのような状態の名簿なのか、
    どのように利用しているのかをお伺いしました。

    ところがその経営者が言うには、
    顧客名簿はあるといえばあるが、
    積極的に整備しているわけでもなく、
    年に一度、年賀状を出すのに使っている程度であるとのこと。

    そこで私が提案したのは
    ネット販売を始めるのではなく、
    顧客にニュースレターを発信することでした。

    セールス色の薄い情報発信を始めることで顧客との関係性を深め、
    取りこぼしていたであろう売り上げを得ようと考えたのです。

    ネット販売を始めることが悪いとは思いません。
    しかし、
    多くの地方中小企業が想像するような、
    ネット販売さえ始めれば、
    日本中、世界中から注文が殺到するなどということは起こりません。
    なぜなら顧客名簿を整備できていないからです。

    ネット販売といえども安定した商売には顧客名簿が必要で、
    顧客名簿がないのであれば広告を出稿しなくてはいけない、
    などというのは実店舗と同じことです。

    であるならば、
    これまでの実店舗でやり切れていないことを
    まずは徹底して行うことが先です。

    先ほどの相談者がさっそくニュースレターを発信したところ、
    ひさびさの便りに喜んだ常連客からの注文が舞い込み、
    経営者は顧客名簿を基にした商売の重要性を改めて認識してくれました。

    楽して稼ごうと相談に来る人への対処法

    もう一つ多いのが、私と話しさえすれば、
    何か魔法の杖をふるってもらうことができ、
    楽して稼ぐことができると考えている経営者です。

    はっきり言葉にして言うわけではありませんが、
    私を前にして具体的な話があるわけでもない様子から
    なんとなく想像がついてしまうわけです。

    こうした相談者にどのように接するかというと、
    「商売に楽して稼げる方法はありません」
    と説教をするのではなく、
    徹底してその会社の強みを探しにかかります。

    いつから商売しているのか?

    なぜ今まで事業が存続できているのか?

    どのような顧客がいるのか?

    なぜそれらの顧客との取引が可能になったのか?

    どのような商品・サービスを取り扱っているのか?

    顧客に選ばれている理由は何か?

    といったことを聞き出していくのです。

    こうして聞き出していくと
    それまで自分では見逃していたり忘れていたりした、
    自社の「真の強み」に気づくことに繋がります。

    ここまでくると後は簡単で、
    「真の強み」を生かした売上アップの方法を考えるだけです。

    ファイルを取り出そうとしている手

    顧客名簿は重要な資産です

    補助金に目が眩んでしまった事業者への対応

    補助金とは、
    事業者の取り組みを支援するために
    行政などが資金の一部を給付するというもの。
    自社の力だけでは実行できない事業を
    補助金を足すことにより実現できるようになります。

    正しく使うのであれば、
    これほど頼りになる支援制度はありません。

    しかし、補助金というものには二面性があります。
    事業者本来の経営力を奪ってしまうこともあるのです。

    補助金はあくまで事業者の取り組みたいことが先にあり、
    その実現を目指すための支援として提供されるもの。
    ところが補助金をただの資金源と考えるようになった経営者は

    「補助金をもらうためには何をすればよいか」

    と思考するようになってしまいます。
    本末転倒です。

    私は必要な補助金であれば
    制度を案内しますし、申請を手伝うこともあります。
    しかし、やみくもに補助金の利用を勧めることはありません。

    まずは補助金に頼らない経営を考えるのが先で、
    自分で資本を用意してから投資をするべき。
    商売をする上でごく当たり前のことです。

    補助金に目がくらんで商売の本質を見失うことのないように
    相談者と対話することを心掛けています。

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