商売をギャンブルにしない
商品・サービスを用意してから、
売るための行動を始めるのでは遅すぎます。
「いつかは売れるだろう」という幻想
家業の代表取締役を務めていた時のこと。
過去から溜まりに溜まった商品在庫を持て余していました。
物流倉庫は一つでは足りず、専用の倉庫を借りるくらい。
「いつかは売れるだろう」と考え続け、
お金に換えられないままの商品を抱えていました。
流れが変わったのは
銀行に紹介された経営コンサルタントが関与してからです。
帳簿上、「商品」として計上し続けていた不動在庫を
「棚卸資産評価損」として計上します。
新たな帳簿上の価格は備忘価格の1円と設定。
あとはこれまで以上に売価を下げて叩き売ってしまいます。
棚卸資産評価損として計上するには
事前に銀行との調整が必要でしたが、
財務が健全化するならと
各行から了解を取り付けることができました。
その後は
「廃棄するくらいなら売り切ろう」
と店頭でのバーゲンを実施し、
思い切って値下げしたことにより
多くを売り切りました。
思いを込めて作った大事な商品がすぐに売れなかったとしても
いつかは売れるだろうと抱え続けた結果、
倉庫代や管理の手間などが膨大に発生し続けていました。
自分たちだけではいつまでも抱え続けていたであろう不動在庫。
外部の知見を得て、一気に処理を進めることができました。
クラウドファンディングを利用し先回り営業を徹底
事業が成長し続けている過程では
「作れば売れる」という状態が続いていました。
しかし1990年頃を境に、
大量生産・大量消費の流れは(少なくとも和食器業界では)
みるみるうちに廃れていきました。
それまでと同じ思考方法でいると、
顧客に使ってもらう商品を生み出しているつもりが、
不動在庫が膨れ上がっていくことになります。
不動在庫を抱えてしまうと、
商品がお金を生み出してくれるどころか
管理費用が増加しキャッシュフローを圧迫するという
本末転倒の結果を導くことになってしまいます。
現在、私が関与先の企業に勧めるのは
先に売り先を見つけてから
商品の生産に着手することです。
やみくもに生産してしまってから、
売れるか売れないかわからないものを販売するのではなく、
受注販売の形を取り、リスクを管理するのです。
アパレルの新商品に挑戦したある事業者は
クラウドファンディングを利用し、
徹底して先回り営業を行いました。
ドブ板営業をし、
ミニマムロット分の受注を確保してから生産に着手。
一か八かのギャンブルのような生産をしなくて済み、
在庫リスクに悩まされることなく収益を手にすることができました。
ポイントは「クラウドファンディングを使うこと」ではなく、
ドブ板営業を徹底しておこなったことです。
知人や縁のある会社に先回り営業をし、
クラウドファンディング立ち上げ前には
かなりの割合の受注を得てしまっていました。
新商品のテスト販売も事前予約で完売
「作れば売れる」
「作ってから売る」という思考は
ギャンブルと同じようなものです。
経営が目指すべきは
負ける確率を極限まで減らしていくこと。
つまり、商品を作る前に売り切ってしまう仕組み作りです。
今の売り方が最善の方法なのか、
今の商品開発の過程が最善のものなのか、
常に考え続けることが必要です。
ちょうど今日、
ある社会福祉法人が新たに食品の販売を始めるというので
展示即売会の様子を見てきました。
会場に持ち込んだ商品はすでに完売していて、
事前に予約しておいた商品を引き取ってきました。
そうです、ここでも受注販売に取り組んでもらいました。
会場に商品を持ち込んでから、
売れるか売れないかを心配するのではなく、
事前に関係者などに連絡し、
限定数の販売であることを伝え、
予約してもらうことにしていたのです。
商品を資産として抱える必要はありません。
作る前から売ってしまえばいいのです。
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