人の気持ちを上手にすくいとる力
先日ある人から
「よく気がついてくれたね」
と言ってもらえました。
喫煙室をご案内した話
先日、ある人とお話ししていた際、
そういえばタバコを吸う方だったなと思い、
「あちらに喫煙室がありますよ」
とご案内しました。
おそらくしばらく喫煙している時間がなかっただろうし、
今のうちにご案内しようと思ってお知らせしただけ。
それに対して、
「よく気がついてくれたね」
とうれしそうに言ってもらうことができました。
私の社会人としての第一歩は
百貨店での販売員でした。
お客様や他者に対する心遣いというのは
売場で接客をしながら自然と身についたものです。
少し話は逸れますが、
鳴っている電話は真っ先に取らないと気持ち悪いですし、
電話を取ったからには名前を名乗るのも当たり前。
社会人としての基礎を勉強させてもらいました。
中小企業支援家として心掛けていること
日々、地方中小企業の経営者とお話しする際、
心掛けているのは
事業の主役はあくまで事業者であるということ。
支援する側は黒子であって、
その黒子を使うか使わないか決めるのは、
経営者が自由に判断するべき事です。
私の中小企業支援の考え方を一言で表すと
「自主・自立」です。
中小企業支援家は経営の当事者にはなりえず、
何をどうするか決めるのは経営者。
その経営者に必要とされるのであれば
便利に使ってもらうのが私の務めです。
提案が採用されないことも多々ありますし、
どう考えても不合理な経営判断を目の当たりにすることもあります。
しかし、それも「自主・自立」。
経営者が自由に決めれば良いことです。
例えば私は経営者とお話しする際、
「この事業者はこういう取り組みをすべきだ」
「この局面ではこういう経営判断をすべきだ」
といった考え方は(できるだけ)しないようにしています。
対話の過程では
・経営者が何をしたいのか
・どうしてそう思うに至ったのか
・どうすればその思いを実現できるのか
を掘り下げようと努力します。
その時に必要なのは対話力やコミュニケーション能力であって、
さらに言うと、人の気持ちを上手にすくいとる力です。
経営経験や専門知識なども必要といえば必要ですが、
最も重要なのは経営者の気持ちを汲み取る能力なのです。
ここが欠けていると
・補助金情報だけを提供し続ける
・手続き業務だけを代行する
・教科書に書いてあるような経営論だけを語る
といった中身のない専門家になってしまいます。
中小企業支援家にまず初めに求められる資質は
人の気持ちを上手にすくいとる力です。
経営者の涙
ある経営者とお話しした時のことです。
経営の状況をゆっくりとお伺いし、
まずは資金繰り表を作ることを提案しました。
それだけ会社の状況が悪いということで、
通常は初回から財務の話をすることはほとんどありません。
帰り際に
「お体を大事になさってください」と
お話しすると目を赤くしてうなずいてくれました。
経営に孤独に取り組み、
それでも状況が良くならず、
勇気を振り絞って相談にいらしたはず。
従業員からも突き上げられ、
おそらく社長の体調を心配する人が
減っているのではないかと心配になったのです。
私自身も家業の代表取締役を務めていた際、
銀行に厳しく指導されたあとに
支店長から「社長、体は大事にしてくださいよ」と言われ、
とてもうれしかったことがありました。
中小企業支援家は
支援制度を紹介することだけが仕事ではありません。
まずは経営者の気持ちに寄り添い、
その上で具体的な成果を生み出すことを目指すべきです。
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