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コラム

人間国宝の陶磁器をどう売るか

私の家業は和食器卸小売業でした。
同じ業界でしたので、
人間国宝の方の動向も耳に入ります。

人間国宝の陶磁器が売れなくなった

陶磁器の売り上げが下がっています。

今に始まったことではなく、
ピークは1990年。
その後、下がり続けています。

人間国宝の作家が作る陶磁器も同様です。
かつてのように売れなくなり、
職人さんなどを維持するのに苦労していると聞きます。

2000年頃までは中元・歳暮などのギフト需要や
法人の記念品・進物の需要が一定程度ありました。
私の家業のような大量生産品を扱う会社はもちろん、
いわゆる作家物といわれる作品を製作する人々も
同じように「ギフト」で売上のほとんどを作っていました。

ところがギフト需要はバブル崩壊を経て、大きく減少します。
中元・歳暮を上司や顧客に贈る習慣は無くなり、
法人が高価な記念品を関係者に贈ることも無くなりました。

従来の売り方では
人間国宝の作る陶磁器作品は売れなくなったのです。

新しい「価値」を付け加える

では、現在の消費者に、
高額な工芸品をどのようにして買ってもらうのか。

切り口は時流にあった「価値」の見せ方です。

例えば

・原画をNFTアートにし、作品と共に販売する

・作品購入者に「箱書き」をNFTアートで提供する

・売上の一部を社会貢献事業に利用する

といった取り組みが考えられます。

作品に絵付けがされているなら、
その原画をNFTアートにしてセット販売することができます。
一点物だからこそ原画にも価値が生まれるわけで、
作品とNFTアート両方の所有欲を満たす仕掛けができそう。
さらにNFT保持者限定のオフラインミーティングなどを開催し、
その後も作品に興味のある方と
関係性を構築することができそうです。

また陶磁器の作品には木箱が利用されています。
その木箱には、
作家が作品名などを記し、書名・押印しています。
その「箱書き」をNFTで提供するのも
ウォレットの中身を充実させたいコレクターに刺さるかもしれません。
作品現物にもナノ粒子などを吹き付けて、
真贋判定可能な仕掛けができたら面白いですね。

アナログな手法では、
売上の一部で学生向けの寄付講座を開催するなど、
社会貢献事業を実施することも考えられます。
作品を手元に置くという即物的な理由以外の、
「わざわざ購入する理由」を消費者に提案できます。
「私の買い物は私のためだけでなく、
美術を学ぶ学生のためにもなる」というのであれば、
財布の紐も緩むことでしょう。

高額な工芸品を売るために、
思いついたアイデアを書きましたが、
いずれも根本は、消費者が購入する理由を
新たに作ってやることを意識しています。

単に
「良い物です」「作家物です」「人間国宝の作品です」
と言っても、
同じような商品が溢れている現代では
購入の決め手になることはほとんどありません。

商品がもたらす価値を新たに増やせば増やすほど
消費者の購買意欲は高まります。

ろくろを回す人の手

新しい価値を付加すると売れやすくなります

旧い考え方を疑い、商売をゼロから考え直す

新しいことに挑戦しようとすると
必ず言われるのが
「そういうのはまだちょっと早い」
「伝統的な在り方から逸脱する」
「うちが最初にやるのはちょっと、、、」
といった否定的なコメント。

こうしたコメントが出るということは
それだけ人の手垢がついていない施策である証です。
まずは試してみて、
最初の小さな市場を取りに行くべきです。

進取の気性が失われてしまったことで
現在の窮境に陥っているはず。
「伝統」「老舗」というのは、
旧いというだけで呼ばれているのではありません。
新しいことに挑戦し続けてきたからこそ
伝統と老舗が今に残っているのです。

現状を維持しようと考えたその時から
現状の維持すらできずに衰退し始めます。

今の商売は10年後も存続しているか?
旧い考え方を疑い、商売をゼロから考え直しましょう。

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