スペックよりも「意味」を強調して売る
サイズや価格ばかりを訴求しても
消費者の「買う気」をそそることはできません。
では何を強調すれば消費者に刺さるのでしょうか。
モノが足りなかった時代
昭和の時代は
まだモノが足りていなかったので、
価格とスペックだけを訴求していれば
売上を伸ばし続けることができました。
※ざっくりしたイメージの話です
その後、
平成・令和と時代が遷っていくと
モノは家庭に有り余るようになり、
価格とスペックだけを伝えても
消費者は容易に
購入ボタンを押してくれなくなりました。
例えば私の家業であった茶わんやの話をすると、
かつては食器棚にスペースが余っていたので
食器を贈答品に使うと喜ばれていました。
結婚式の引き出物、中元・歳暮など
旺盛なギフト需要を取り込んで
家業は1990年頃まで業績を伸ばし続けたのです。
ところがそのうちに食器棚に器が溢れるようになると、
「タダでももらいたくない」ものになってしまい
ギフト需要に依存していた食器業界は
売上を下げ続けることになってしまいました。
価格やスペックだけを訴求し
消費者に選んでもらおうとするのは、
モノだけを見て選んでもらおうとするのと同じ。
モノが溢れかえっているのであれば、
当然、売りづらい状況に陥ってしまいます。
コト消費
その後、
この10年くらいで叫ばれるようになったのが
「モノではなくコトを売ろう」といった考え方。
有り余っているモノを
消費者に無理に押しつけようとするのではなく、
体験型の商品・サービスを新たに提供しようと
多くの事業者が取り組んできています。
ふるさと納税で「体験」と検索すると
・○○(地名)でシルバーリング作り体験
・和菓子作り体験キット
・元全日本ドライバーから教わるカート体験走行
・本物の漁師体験
・自宅で真珠取り出しアコヤ貝
といった返礼品が出てきます。
いずれも単なるモノではなく、
体験という価値を掛け合わせて、
コトに昇華させているものです。
自社の強みを生かして、
上手に商品やサービスを設計している事例です。
「意味」を売る
私が関与する地方中小企業へは
コト消費からさらに進めて、
商品・サービスを買う意味・動機を
消費者に積極的に提示する取り組みを提案しています。
・なぜこの商品を購入するべきなのか
・この商品が生み出す価値は誰の何に役立つのか
・この商品を購入すると誰と誰にメリットをもたらすのか
といったことを商品の見た目をデザインするように
丁寧に設計し、価格やスペックだけでなく
「意味」も明示するようにします。
色やサイズのデザインも重要なのですが、
それ以上に「購入する意味」もデザインするのです。
ある食品を製造している事業者の事例です。
コロナ禍が始まってしばらくして、
非常に状況が苦しいと相談にいらっしゃいました。
私が提案したのは
ある食品の手作りキットを学生に寄贈することでした。
当時の学校への通学もままならない学生、
その学生を見守る保護者のために
少しでもおうち時間を豊かに過ごしてもらいたいと
無理のない範囲で食品の手作りキットを提供したのです。
表面上は単なるボランティアのように見えますが、
すぐに商売上の効果が現れます。
ある通販会社が顧客向けの粗品に
その手作りキットを大量に採用してくれたのです。
同じような食品の手作りキットは
市場に容易に探し出すことができます。
しかし、多くの人が苦しむ状況下で、
学生や保護者のために活動した様子は
強力な付加価値となり、
通販会社による大量発注に繋がりました。
人は何かを押しつけられることを嫌います。
自分の身に置き換えると当たり前のことですが
商売をする側に立つと、
売上や利益を作ろうと気が焦り、
平気で商品を押しつけようとしてしまいます。
「買ってください」と言わずとも
消費者に自然と選ばれる仕組み作りが必要です。
そのためには、
見た目のデザイン以上に、
商品を買う意味をデザインすることが求められます。
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