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コラム

仕入先・取引先とどう向き合うか

仕入先・取引先と関係性を構築するには
どのようにすれば良いでしょうか。

百貨店での勤務経験

私が大学卒業後に配属されたのは、百貨店内の自社ショップでした。5階の家庭用品売場に和食器コーナーがあり、その一角に商品を並べて販売していました。

昔は商品を納めるだけで、販売は百貨店の社員が担ってくれていたそうです。ところが私が入社した2000年初めには、百貨店の社員はどんどん減少を始めていて、テナント各社が販売員を派遣し、自社商品を販売していました。私もその販売員の一人だったわけです。

広い和食器コーナーですので、他社商品の販売を手伝うこともあります。お客様からしたら、テナントから派遣されている販売員も百貨店の社員も見分けがつかないからです。

テナント各社から派遣されている販売員はライバルでもあり、協力し合わなければいけない関係でもあります。例えば、他社商品を欲しているお客様の接客に手を抜いたり、自社の商品しか売ろうとしなかったりする人がいたとしましょう。そういった販売員はもちろん、会社の商品も周囲から敬遠されるようになり、不在時に商品を積極的に売ってもらえなくなったりと不利益を被ることに繋がります。

百貨店とテナント各社の関係性

そんな百貨店内の環境でしたが、百貨店の社員はどんどん減る一方。私が配属されていた3年間に複数回の早期退職制度が運用され、売場のマネージャーやバイヤーが突然に退職することもありました。我々テナントからしたら、「商品を納入しているのに、なぜ百貨店は販売員を満足に配置しないのか」と不満が溜まります。

ある時、「売場内である病気が流行っているらしい」と噂になりました。伝染病です。もし本当ならば自分の健康も気になりますし、お客様にも影響が及びかねません。

しばらく経って流れてきた次の噂は「百貨店の社員だけが検査を受けているらしい」というもの。テナント各社には何も知らせず、百貨店は自社社員にだけ、伝染病に感染していないかを調べていたというのです。

次第に騒ぎが大きくなり、百貨店の役職者がテナント各社に向けて説明会を開催することになりました。「そのうちテナント各社には説明をするつもりだった」「自社社員の安全だけを確保するつもりはなかった」などと苦しい説明がなされ、百貨店とテナント各社の信頼関係を大きく損なう出来事になってしまいました。

その後、その百貨店は別の百貨店に実質的に吸収されます。かつては日本を代表する産業であった百貨店ですが、私が勤務していた頃にはすでに凋落が始まっていました。私は特に百貨店とテナント各社の関係を間近で見ていたので、法人格が異なったとしても、同じ目的を達成するために目線を合わせることの重要性を学ぶことができました。

日本橋周辺のビル

百貨店の自社ショップで社会人人生をスタートしました

仕入先・取引先は運命共同体

「取引関係」にあるというだけで、買う側が売る側を下に見てしまうことがあります。購買担当者個人の資質だけとも言えないようで、会社の文化なのでしょう。

私が家業の代表取締役を務めていた当時は、業績が悪化し続ける中でも、仕入先に安定して商品を納めてもらう必要がありました。全国各地の窯元に商品を生産してもらい、その商品を産地商社が箱詰めなどし当社に納品してくれるという商流だったからです。

私は仕入先各社の社長に対し、家業の状況を言葉を尽くして説明し、将来のビジョンを語り、「がんばって売りますので、引き続き、良い商品をたくさん納めてください」という姿勢で接していました。

過去からの商慣習が下請法の理念に沿わないと、公取から勧告を受けてしまうというアクシデントもありましたが、おかげさまで投資ファンドへ事業譲渡するまで、仕入先各社とは良い関係を築けていたと自負しています。

仕入先・取引先は地方中小企業にとっては運命共同体です。自社だけで完結して事業を営めるならともかく、商売を持続可能な状態にするには各社の協力が欠かせません。

顧客との関係性構築は当然誰しもが気にすることですが、仕入先・取引先との関係性構築も利益を増やすための重要な要素です。

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